記者「すみません、田中さん!桜欄高校新聞部のものです!取材をさせてください!」
田中「あ?なんですか?」
記者「今回、4度の留年の末、やっと卒業証書を手に入れたわけですが、お話を聞かせてください」
田中「・・・ま、昔、芥川賞をとったおっさんが”自分が賞を取って当然”みたいなことを言ってたけど、そんな感じですかね」
記者「つまり、田中さんが卒業して当然と?」
田中「ま、あえて言うとね」
記者「あ、そうですか。やはり嬉しいですか?」
田中「ま、4度も留年させられたんだから、ここらで逆に卒業を断るのが礼儀といったら礼儀なんでしょうけど・・・私は常識がない人間ですし、卒業を断ったと聞いて気の小さい教員が倒れると桜蘭高校が混乱するでしょうから、校長閣下と、桜蘭校生のために・・・卒業してやる」
記者「あ、そうですか。なんか、来年の新任教師が田中さんと同じ年なので追い出されるという話もありますが」
田中「・・・・・」
記者「あ、それと校長先生は田中さんの試験の成績について『バカみたいな点数ばかりだよ』とおっしゃってましたが、それについては?」
田中「・・・・別に」
記者「こういうインタビューは苦手ですか?」
田中「好きな人いないでしょうよ。辞めましょうよ。終わり終わり!」
記者「あ、あとちょっとお願いします。田中さんは高校1年の時に最初の留年をされて・・・」
田中「それはもう学級新聞でしゃべったから!面倒くさいんだけど」
記者「あ、すみません。あの、田中さんは携帯電話も持ってらっしゃらないということなんですけど、卒業の知らせはどうやって知ったんですか?」
田中「・・・・担任の先生に聞きました」
記者「卒業の知らせを聞いたとき、なんて答えたんですか?」
田中「・・・ええ、お受けします、って・・・」
記者「卒業の報告はどなたかにしましたか?」
田中「ま、母に」
記者「田中さんはこれまで就職もアルバイトもしたことがないとのことですが」
田中「ま、高校生ですからね。就職は、ね・・・」
記者「普段はなにをされてるんですか?」
田中「ま、普段は・・・・・・・・ベルマーク係ですね。」
記者「・・・ところで、なんで留年したんですか?」
田中「・・・ま、成績ですね。一度で卒業できれば一番よかったんですけど、4度落ちたのはまぬけです。」
記者「そうでしょうね。あの、得意科目は?」
田中「歴史ですね。”1192(いいくに)作ろう、鎌倉幕府”」
記者「あれ?田中さん、古い教科書使ってますね。今、鎌倉幕府は1185年説で教わってますよ」
田中「ん?・・・ま、そういう考えもあるね」
記者「・・・・あの、過去2度クラス担任をした依兼先生も喜んでいらっしゃいましたが?」
田中「それはうそですね。私は先生たちに嫌われていましたから」
記者「なんで嫌われていたんですか?」
田中「ま、今の学校教育の常識の枠に収まらないからじゃないですか?」
記者「(メモをしながら)えっと、今の学校教育の知識が頭に収まらないから、と」
田中「おいおい、ちゃんと聞けよ!」
記者「えっと、3年前に卒業したお友達も、田中さんの卒業を喜んでらっしゃるそうですが」
田中「それもうそだね。本当にうそです。私には友達なんかいませんでしたから」
記者「あの、『昔、田中はよくパンを買いに行ってくれた』とおっしゃってましたが」
田中「・・・・だれ?それ?」
記者「えっと、清原さんという方ですが」
田中「・・・・・・・・・・・・・あ・・・・・そう」
記者「あ、あと2年前に卒業した方からも『田中は泣くと強くなった』『田中は学校でウンコをしてウンコマンというあだ名をつけられていた』『田中は休み時間、一人で組み紐をしていた』という情報もありましたが?」
田中「・・・・・・・う、うそですね。私は友達いませんでしたから」
記者「そうですか。あの、恋などもしたことはないんですか?」
田中「ま、二次元はね」
記者「・・・・・」
田中「もうやめましょうよ」
記者「あの、最後に、卒業後はどうなさるんですか?」
田中「ま、これまでと一緒ですね」
記者「友達作ったりは?」
田中「そんなのできるなら前からやってる」
記者「あ・・・・・・・・・・、そうですね。」
田中「・・・・・・・・・」
記者「・・・・あの・・・・・・・・・進学とかは・・・・・・・・・」
田中「・・・・・・・・・」
記者「・・・・・・・・・以上、4回の留年を乗り越え、今年学校を追い出されることになった田中先輩でした。」
田中「・・・・・・・・・」