俺よ、男前たれ

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”さんぽセル”を批判する大人の正体

今、ネット上でちょっとだけ話題になっている「さんぽセル論争」。ワイドショーも「これはなかなか面白いテーマだ」と思ったのか、いくつかの番組で取り上げられている。そして最終的にはコメンテーターが「これを批判する頭の固い大人が悪い」としたり顔で語って終わるのがお決まりのパターン。テレビのワイドショーだけでなく、Twitterなどで著名人も盛んにさんぽセルを批判する大人に対して反論する構図ができあがっているのだが、僕はちょっと疑問に思うのだ。

”本当にそんなこと言う大人がどれだけいるのだろうか?”

「頭の固い大人」というわかりやすい敵・悪を作っているが、イマドキそんな大人どれだけいるんだろうか?

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”さんぽセル”とは、ランドセルにつけて引いて歩けるようにするキャリーのような商品で、もともとは小学生がアイディアを出して作られた商品らしい。脱ゆとり教育後、サイズ・厚さ・量・重さが格段に増えた小学生の教科書。それを長時間・長期間背負い続けると肩こり・腰痛・背骨の歪みに加え、登校すること自体を憂鬱に感じるなど様々な障害が起こるらしい。

ランドセル症候群 | RAKUSACK

そこで小学生のアイディアを大学生が具現化し、それを企業が商品化するというプロジェクトが生まれた。こうして生まれたのが”さんぽセル”なのだが、発売直後、1000件以上の批判の声が集まったという。

さんぽセル批判してる奴ヤバイ。アホ過ぎる」千原せいじが非難に猛抗議 ランドセル文化にも疑問の声も(中日スポーツ) - Yahoo!ニュース

その声を一部拾うと

・考えた子たちバカそう

・これを開発した人、子供のことをよくわかってないですね。

・重たいだろうけど、楽したら筋力低下していかん!体も心も鍛えないと!

・肩の負担は減るなあと思ったけど、これで不審者とかに追いかけられたときに逃げにくくなるのでは?

・ランドセルって危険からも身を守るものでは?これでは背後から襲われたらどうしようもない

・なんでランドセルを背負うかって両手を空けて危険がないようにするためでしょう。

・ランドセルは後ろにこけた時に頭を打たないためにあるってことを知らない人結構多いよね

などなど。ただこれらの意見は大人が考えたとは思えないほど論理性がなく、ジャーナリストの安藤裕子さん、教育評論家の尾木ママはもちろん、芸人の千原せいじさん、河合ゆずるさんらに反論されたばかりか、ネットに書き込まれても当の小学生たちに簡単に論破されてしまう。だれだ?この”大人”って?

重たいランドセルに希望の光?小学生が開発した「さんぽセル」に大人が反論!大人VS小学生の「さんぽセル論争」 (2022年6月7日) -  エキサイトニュース

ちなみに僕はアラフィフのおじさんだが低学年の子どもがいる。昨年小学校に上がった時はせっかくランドセルを”じいじとばあば”に買ってもらったのにオンラインレッスンばかりでほとんど背負わなかった。んで2年生になって毎日ランドセルを担ぐようになったのだが、これがまあとんでもなく重い。算数だけでも教科書・練習帳・ノート2冊も持って行かなければならないし、その日の授業で使う教科書とノートでランドセルはパンパン。それに加えてピアニカやら探検ボード、算数箱なるものを持たされることもあるし、図書館で本をたくさん借りてくることもある。手提げもかなりの重量だし、さらにお弁当や水筒を持たせなければならない。「あれ?俺が子供の時ってこんなに大変だったかな?」と40年前を思い出してみるのだが記憶にない(どうも現在のほうが小学生の荷物の重量は多くなっているらしい)。息子は親がランドセルを背負わせ、腕に手提げかばん、首に水筒をかけてやればかろうじて立つことはできるが、もうこの状態だと靴をはけない。靴のマジックテープを止めようと前傾しようものならランドセルとともに前転するかドアに頭から突っ込むことになるし、かかとを靴に入れようと指を伸ばそうものなら後ろに思い切り倒れてしまう。

「いや5・6年生ならまだしも、1・2年生にこの荷物はないよなぁ。低学年のほうが荷物が多いってどういうこと?」なんていつも思う。

小学生「地獄のフル装備品」が話題 | おたくま経済新聞

だから”さんぽセル”を見た時は「なるほど、うまいこと考えたな」と素直に思ったし、これを批判する大人がいると聞いてびっくりした。きっと子供がいない大人か、頑固なじいさんばあさんだろうな、なんて思っていた。

 でもちょっと引っかかるのである。

じいさん、ばあさん世代がわざわざネットに書き込むだろうか?孫にランドセルを買ってあげるような世代が製造会社にクレームを入れるだろうか?『サンデーモーニング』(TBS)に張本勲さんや金田正一さんらも出なくなったこの時代に「ランドセルで足腰を鍛えねば!」なんていう人いるだろうか?

ゆとり世代(18歳~35歳くらい)とかZ世代なんかは根性論を支持するわけないし、そもそもこんなに簡単に論破されるようなバカな意見を書き込むとは思えない。

30代後半から40代といっても、子供がいれば事情はわかるだろうし、独身の人・・・ランドセル論争に参加するかね?

ネット上では「大人の批判が殺到!」なんて書いてあるが、その大人ってだれなんだろう?

もちろん批判コメントを書いた人がいるのは事実なんだろうけど、”1000件の批判意見”は必ずしも1000人の意見とは限らない。バカな少数が何度もクレームを入れたり書き込んだりしている可能性もある。が、どう考えても負け戦というか、勝ち目がない論争だ。小学生の荷物事情・健康問題から考えれば擁護派に理があるのは明らかだし、安全面・防犯面・根性論は小学生でも論破できるくらい隙が多い。批判コメントはあまりに頭が悪いというか・・・いわゆる”釣り”なのだろうか?

重たいランドセルに希望の光?小学生が開発した「さんぽセル」に大人が反論!大人VS小学生の「さんぽセル論争」(TBS NEWS  DIG)ランドセルの重さを軽減するため小学生たち…|dメニューニュース(NTTドコモ)

僕なんかも最近は頭が固くなってきて、若い人の文化を受け入れにくくなっている自覚はある。だから今回の”さんぽセル論争”も「頑固な大人」側に入れられて自分が叩かれているようでなんか嫌な感じだ。

でもみんな”さんぽセルを批判する大人”に反論して得意になる前に、本当にそんな敵がいるのか、その敵はムキになって相手にするほどなのか、考えてみたほうがいいと思う。

 

ま、教科書を全部データにしたり、タッチペンでノートを取ったり、タブレットをもっと有効に使ってくれれば済む話なんだけどね。

(おわり)