俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

マイ・ペース

3年ぶりに日本に帰って来て、久しぶりに実家でのんびりできるかと思いきや、日々両親から家の仕事を頼まれ、結構こき使われている。ま、現在無職なので構わないのだが、両親の生活のペースに合わせなければいけないのはそれなりに辛い。

今日は庭の植木の剪定をし、高圧洗浄機で家の外壁掃除を頼まれ、さらに明日の朝出す不燃ごみをまとめる作業を頼まれた。ま、いいんですけどね。

庭師・植木職人のイラスト

ある日、妻と近くのドラッグストアに買い物に行っている時、妻がポロリとこぼした言葉がある。

「お義父さんとお義母さんの世話をするのは構わないんだけど、実家で面倒なのは自分のペースで生活ができないこと。あと家政婦みたいになっていること」

うん、いや、まあ、そうだよね・・・。ごめんね。

僕はそう言うしかなかった。妻はとにかく”自分のペースでやりたい人”。掃除も洗濯も皿洗いも、食事でさえ、自分がやりたい時にやる、人に言われてやるのが嫌い、という人だ。それでも僕と結婚してからはお互いにちょっとずつ妥協しながら二人の生活を作ってきたように思う。例えば妻は皿洗いが嫌いで使った食器はキッチンのシンクに浸けておき、次の食事を作る直前に洗う人だった。ただ夏の夜はさすがに翌朝まで食器を洗わずにおくのは衛生上の問題もあるので妻に話したことがある。そして「そんなに言うなら自分で洗え」と言われるのを見越して自分で洗い、しばらくプレッシャーを与えてみたところ、夜は皿を洗ってから寝てくれるようになった。

その後、子供が生まれ、我が家は子どものペースで生活が回るようになった。妻は子どものペースで家事をすることには文句は言わなかったが、家事が終わってスマホをいじっている時に頼みごとをするとあからさまに不貞腐れた。そしてたまに有休を取って平日昼間に僕が家にいると「あんたがいると昼に昼飯を作らなければならないから面倒」と愚痴をこぼした。妻にとって「飯は腹が減ったら食べるもの」であり、”時間が来たら食べるもの”ではないのだ。あくまで自分のペースで生活することが大事なので、飯を抜いたり、インスタントラーメンで適当に済ましても問題ない。そこが割ときっちり時間通り食事を摂る僕と違っていた。

で、今年3月に妻子は先に日本に帰国。僕の実家で僕の両親と同居することになった。両親もきっちりきっちりの人なので、決まった時間に起き、決まった曜日・時間にゴミを出し、決まった時間にしっかり食事をする人だ。お風呂掃除も毎日するし、食事が済んだらすぐ食器を洗う。家の中も外も整理整頓・きれいに保つ人なので、毎日どこかしらを掃除・整理する人だった。

居候の妻子は両親の生活を邪魔しないように両親のペースで生活をすることになったのだが、やはり元々違う生活ペースで過ごしていた二家族が一緒に暮らすというのは大変なようだった。

嫁姑問題のイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや

ちなみに僕は妻子が先に帰国した2か月、単身赴任状態だったのだけれどこれがまた快適だった。何が快適かって、”時間が自由に使える事”、これに尽きる。

朝、ちょっと早く起きて近所を散歩し、外で朝ご飯。これがすこぶる楽しい!朝から元気いっぱいだ。

仕事から帰ると寝るまでの6時間くらいは誰にも邪魔されることなく自由に使える。子供の宿題を見ることもなく、散らかった部屋を片付ける必要もない。子供のお風呂や寝る時間に合わせる必要もない。これが実に贅沢。時間を自由に使えるって・・・すごい!王様だ!

「夕食は炭水化物を抜くため春雨スープのみ」と勝手に決められたので15分で終わる。すると僕はなぜか家を出て、夜のウォーキングに向かっていた。それまでの僕は食後1時間をソファーでテレビを観ながらまったりするのが常だったのに、単身赴任になった途端、食後に1時間以上ウォーキングする人間になった。が、汗をびっしょりかいてシャワーを浴びて寝る生活は快適だった。夜中にこっそり見ていたアダルトビデオも好きな時間に好きなだけ観られる。これも最高だった。結婚生活・家族との生活に不満はないつもりだったが、久しぶりの一人の生活は・・・禁断の果実だった。

痩せようと運動をする人のイラスト(男性) | かわいいフリー素材集 いらすとや

そして今、僕は両親、妻子とともに実家で暮らしている。本当は次の仕事に向け、勉強したり調べ物をしたりしなければならないのだが、毎日何かしら家の仕事を頼まれている。父は今年84歳で体も弱くなったので、力仕事や高所の仕事は僕の担当。

「悪いけんどよぉ~、庭の木の枝が道路にはみ出て危ないから切ってくれんかのぉ~」「朝ご飯食べてからでいいんだけどよぉ~、壁掃除してくんねぇかなぁ~」

「悪ぃけどよぉ、ヨーカドー行って明日のパンとヨーグルト買ってきてくんねぇかなぁ。車使っていいからよぉ~」

「明日は不燃ごみだから、8時までに出しておいて。植木鉢だから重いよ。」(母)

 

日本を離れ、親孝行できていなかった分、今は両親のために僕の時間を割いている。苦労をかけた両親になかなか感謝の気持ちを表せない分、とにかく両親からの頼まれ事は断らず、両親のペースを優先させている。

今日は高圧洗浄機で家の外壁掃除をしたのだが、これはこれで意外に楽しい。テレビのCMで見て前から一度やってみたかったのだが、まさかあれが実家にあるなんて!CMほどはきれいにならないのだが、それでも青かび・泥汚れは結構落ちる。ホースの先をちょっとずつ動かしながらの外壁掃除は時間がかかるが、ま、ここは自分のペースでやるかぁ。