俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

しがない町

何年かぶりに生まれ故郷に戻って来て思うことは、つくづく「しがない町だなぁ」ということ。僕が10代、20代だったらこんな町はとっとと捨てて二度と戻るまいと思ったろう。でも50歳の僕にとってこのしがない町がなんとも居心地がいい。

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先日、僕は近所の病院へ健康診断に出かけた。この病院は我が家の両親、兄弟皆が昔から通っていた病院で、昔は入院患者も受け付けるようなちゃんとした病院だった。が、ここ数年、両親でさえ「あそこは院長も頼りなくなっちゃって、もう近所のジジババしかいかない。あんたは他の病院に行きな」なんていう始末だ。それでも「健康診断だから問題ないだろう」と思って四半世紀ぶりに行ってみたら、そこは僕が子供の頃に通っていたままの、昭和にタイムスリップしたかのようなみすぼらしさだった。昭和の病院の受付は便所の小窓みたいなところから診察券を出し、薬も処方してくれた。で、僕も小窓の奥にいる人に健康診断をしたい旨を伝え、薄暗い待合室に座るとそこは本当のジジババだらけで、50歳の僕が超若手という感じだった。昔の院長はボケて(?)病院内をウロウロしているだけなので、今は東京の病院に勤めていた院長の弟さんと甥っ子さんが交代で診察に来ているとのことだった。視力検査も聴覚検査も昔ながらで懐かしく、身長を測る道具は木製だった。60代か70代の看護師さんに採血される時はスリル満点。採決されながら診察室を見渡すも昔僕が来た時のまんまなのが笑えた。「しがない病院になっちまったなぁ」と思いつつも昔のままというのはなんとなく嬉しく、古びた病院での健康診断はなかなか貴重な経験だった。

医者vs患者 - ニコニコ動画

話は変わって先週のこと。僕は息子の授業参観に来ていた。息子は僕が卒業した小学校に今年編入したのだが、長く地元を離れていた僕にとってこんな嬉しいことはない。息子が自分と同じ学校で学ぶなんてよほど地元に根差してないとできないことだ。が、確かこの学校は僕が在籍していた時にすでに創立100年を超えていて、調べてみたら昨年創立150年だったそうだ。すげぇな。で、僕も38年ぶりの母校を楽しみにしていたのだが、これがもう僕が在籍していた時のまんまなのである。汚い廊下、壁、手洗い所、教室の棚も昔のまんまなのだ。まじか?建て替えは無理としてもペンキの塗り直しもしてないのか?本当に僕が子供の頃に在籍したまんまのボロボロの姿で小学校の教室・廊下・下駄箱が残っているのだ。しみったれてんなぁ~。これ、絶対耐震補強もしてないよなぁ。でも最近の暴風雨の時も避難所に使われてんだよなぁ。

 授業中も息子の様子より学校が気になって仕方がない。教室に貼ってある校歌の歌詞を観ながら「ああ、あれはこういう意味だったのか。当時はわからず歌ってたなぁ。というか、替え歌のほうで覚えてたなぁ。」なんてことを考えていた。勉強の内容も・・・なんかここではまだ”ゆとり教育”が続いているようでかなり緩めだった。おかしいな。千葉の学校にいる知り合いの子どもはもう割り算を習っているというのに、同じ学年の我が子はまだ足し算やっとるがな。田舎の学校はやっぱり緩いのかな。なんともしがない・・・

ドリフの学校コント 国語・算数・理科・社会(2) - ニコニコ動画

で、今日。母から「イトーヨーカドーでお中元を注文してきてくれ」と言われて駅前のヨーカドーに来たのだが、ここでもしがない町を実感した。そもそも「お中元を贈る」という習慣が残っているのが田舎特有。地元のイトーヨーカドーはこの時期「お中元」を商戦としており、1階に広々としたお中元コーナーを設置し、注文・受け取りの窓口を増設していた。で、これまた地元のおばあちゃんで大賑わいなのである。50歳の超若手の僕が順番を待っていると10番窓口の店員さんに呼ばれたのだが、この方がどう見ても60代以上(もしかしたら70代いってるかも)というくらいの妙齢な店員さんだったのである。他の窓口は40代~50代のピチピチのおばさん店員が70代~80代のお客さんを丁寧に担当していたのに対し、僕のところは”おばあちゃん”店員が50歳の若造の担当するという構図だったのである。隣の窓口ではおばあちゃんが「あたしねぇ、耳が悪いのよぉ。だから大きい声で言って下さらない?」なんて言いながら店員さんに同じ説明を何度も受けていたのに対し、僕の窓口では妙齢の店員さんが「ちょっと待ってくださいねぇ。えっと、花王の洗剤詰め合わせセットの注文番号はぁ、えっと、ちょっと待ってくださいねぇ。」「2650円のセットが4つで、これに割引が20%つきますよね。で、配送ではなくて取りに来て下さるので割引がまたつきまして・・・」などと一つ一つ確認をしながら必死に対応してくれている。まあ、口に出して言ってくれたほうがこちらもミスに気付けるので助かるのだが、いやぁ~、すごいね。東京でこれやったら客にキレられるよ。僕は現在無職のしがない男なので店員さんの会計をのんびり待つ。しがない町で良かったね。この妙齢な店員さんがいつまでも働けるしがない町で良かった。

https://www.news-postseven.com/archives/20141102_284732.html?DETAIL

用事を済ませ家に帰ると、体調不良で病院に行っていた妻が「軽い熱中症だろうって。若いから大丈夫って、薬も処方されなかった」と報告してきた。ま、しがない町に住むと40歳、50歳は若手扱いされるのが嬉しくもアリ、しがなくもある。

繰り返すが、僕が10代、20代だったらこんな町はとっとと捨てて都会で勝負したるわい!と思ったろうが、50歳の僕にとってはなんとも心地いい。それが地元。