俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

大切なものは何ですか?

なんでも昨晩の大雪で学校が登校中止になり、小学校三年生の息子は家でオンライン授業を受けていたとのことだった。妻は脇でその様子を見ていたのだが、どうも息子の答えに納得できなかったらしい。で、その夜、その時の息子の答えを聞いて僕は感心してしまった。
「う~む、我が子ながら・・・いいセンスをしている!」

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『大切なものはなんですか』(光村図書)のあらすじ
成虫になったばかりのセミが他の昆虫たちに「一番大切なものは何?」と尋ねた。
コガネムシは「金(カネ)!」、蟻は「食べ物」、カブトムシは「丈夫な体」、カタツムリは「自分の家」、トンボは「勉強も大切」とそれぞれ答える中、アゲハチョウは友達のモンシロチョウの話をしだす。友達のモンシロチョウは池に落ちて母親が見つめる中で沈んでいく。母親蝶は池の上をいつまでも飛んでいたという。
セミは夜、みんなの話を思い出しながらずっと考え込んでいる

 

先生「みなさんにとって、大切なものはなんですか?」
生徒A「家族です!」
生徒B「ゲーム!」
生徒C「家族!」
生徒D「え?あの、あのね、夢とか?」
息子「え~、お金?」(その後Muteにし、母親のほうに『本当はママだけどね』と囁く)

先生「じゃあ、モンシロチョウのお母さんは、どんな気持ちだった?何を考えていたと思う?」
生徒A「悲しい気持ち!」
生徒B「悲しい!泣きそうな」
生徒C「残念な気持ち。すごい悲しい・・・」
生徒D「あ~、死んじゃったという…その、悲しみ?」
すると我が息子は
息子「え~、死んだら天国に行きます
と答えたらしい。横で見ていた妻はMuteを確認すると
妻「そうじゃないでしょ!自分の子供が死んじゃったんだから!先生がほしい答えは悲しいとかそういうことでしょ!」
と反射的に言ってしまったという。クラスでもそんな答えを言うのは我が息子だけだったという。



う~む、さすが我が子。実は僕も20代くらいまでずっと天邪鬼をこじらせていて“人と違うこと”に最大の価値を置いていた。人と同じことはつまらないことだと思い、わざと人と違うことを言ったり大人を困らせるようなことをしたりしていた。蛙の子は蛙。息子は天邪鬼というわけではないが、先生や大人が求める答えを忖度して答えたり、周りの子に合わせたりすることに価値を置いていないようだ。
それにしても死んでいく我が子を観ながら「ああ、あの子は天国へ行くんだな」なんて冷静に思える親がいると思っているのがすごい。少なくともお前の親は普通に悲しんだり泣き叫んだりするよ、今はきっと。
メキシコとかラテン系の人は大切な人の死を“黙とう”ではなく“拍手”で送るということを訊いたことがある。また身内の死に対し「肉体はただの入れ物、魂は天国へ上り転生する」なんて達観できるのはよほどの修行僧くらいだろう。
でもセミからしたらそんな答えも悪くないのかもしれない。もしかしたら息子はセミのためを思ってそんな答えを言ったのでは!と思い、聞いてみた。
僕「セミの成虫って一週間ぐらいで死んじゃうって知ってた?」
息子「知らん。『残念な生き物図鑑』にも載ってなかった。たぶんクラスのみんなも知らないと思う」
とのこと。ちなみに妻も「セミ(成虫)の一生が短いのを知ったのは大人になってから」という。
いやいや、このお話のミソは成虫になって一週間ほどで死んでしまうセミが他の虫に質問するところでしょう?
道徳の授業はこのお話の一番大切な仕掛けを見落としている気がした。

復活するセミのイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや