その時、私の股間は女性のでん部に密着していた。
そして戦いのゴングが鳴る。
上野駅までの7分弱、一本勝負。
見事、冷静さを保てたらオレの勝ち。
勃起したらオレの負け
普通に考えたら完全な負け試合
レスリングで言ったら既に足をとられた状態で試合がスタートするようなもの
これで興奮するなというのは、男を辞めろというようなもの
でもわたしはね、客観的に物事を考えることができるんですよ!
あなたとはちがうんです!!
さて、なんでこんな状態になったのか。
すべてはオレのミスだった。
この日の朝、オレはいつものように朝の通勤電車に乗り込んだ。
電車は意外にもすいていた。
そして何よりも、ドアのすぐ横のスペースが空いていた。
こんなことはめったにない。
この位置は、どんなに客が乗り込んでいても体が押し流されない
オレは迷わずそこに立った。
これが一つ目のミスだった。
このスペースは非常に狭く、ドアと座席の間の20センチの壁、そして座席の手摺とを結んだ△のスペースに体を収めなければ降りる人の迷惑になってしまう。
そこでオレはかばんを網棚に載せることにした。
これが二つ目のミス
そうと気づかずに電車はまず次の駅に着く。
すると一気に人がなだれ込んできた。
目の前には若い女性(A子)が立っていた。
シャンプーの匂いにくらくらしつつ、それでもまだA子との間にはスペースがあり、何事もなく一駅やりすごす。
しかし次の駅に着き、ドアが開いた瞬間、A子はものすごい勢いで外に押し出された。
オレは、その勢いに押し出されまいと、手すりにつかまった。
すると今度はものすごい勢いで人が入ってきた。
もうこの時点で乗車率100%
しかし先ほど押し出されたA子が乗り遅れてはならじと、左肩から体を押し込んだ。
さらにその後ろからも乗客が体を押し込んできたため、A子の体は濁流に飲み込まれた葉っぱのようにくるりと回転
そしてオレのまん前でピタリと止まり、ドアが閉まった。
A子の背中は、オレの体の前面にピタリとついている。
A子のお尻がオレの股間の真ん前に来て
凸凹がピタリと収まった。
普段、オレは電車に乗るとき、かばんをたすきがけにし、かばん本体を体の前にして立つ。
これなら前の人と密着しないので、チカンに間違われることもない。
しかし、この時、オレはかばんを網棚に上げてしまっていた。
まずい、まずいぞ。
ズボンの布を通してA子のお尻の柔らかさが伝わってくる。
いかん!意識を逸らせ!
何か別のことを考えろ!
怖いこと、怖いこと・・・
えっと、えっと、ヤクザに絡まれたシーン、暴力団に絡まれたシーン、岩下志麻にすごまれたシーン
岩下志麻が「あんたら、覚悟しいや!」と着物をはだけて・・・
着物をはだけて??いかん、いかん!そんなシーンないない!
えっと、えっと、悲惨なシーン、残虐なシーン
死んじゃうヤツ・・死んじゃう・・・
そういえば、アレの時、「死んじゃう!死んじゃう!」って叫ぶ女って・・・何かいいよな~
征服感がなんとも・・・
!!???
やばいやばい!ちがうちがう!
こんなこと考えたら血液が逆流しちゃう!!
ダメダメダメダメ。
えっと、えっと、・・・ブス、ブス
この目の前の女すっごいブサイクで、振り返ったらにきび面で鼻の穴が上向いていて
研ナオコみたいで、それでそれで・・・うん、それで行こう!
頭の中に「振り返る研ナオコのイメージ画像」作成!!そして再生!
振り返ると・・・あ~!!!なんで菅野美穂ぉ!!しかも「チオビタドリンク」のドアップ顔!!!
「チオ!」「ビタ!」
俺の股間も君に「ビタ!」なんつって
あ~~~ちがうの、ちがうの!そうじゃないの!
昇れ血液!
えっと、えっと、あ~!!コラ!テメー、A子!今、お尻の位置をずらそうと左右に尻振ったろ!!
あかんやん!そんなことしたら!
くそ、A子め・・・A子め・・・A子・・・小池栄子?
あ~、ダメ!小池栄子ダメ!想像しちゃダメ!
うお~!ムクムクいってる!
噛め!噛むんだ!
下唇を目一杯噛み締めろ!
つねれ!つねるんだ。
オレの腿なんてちぎりとってしまえ!!
そして精一杯腰を引け!
胸を前に突き出せ!
「次は○○~、○○です。お出口右側です」
よし!アナウンス入った!
いける!逃げ切れる!
A子がなんぼのもんじゃい!
「ううん」
A子が軽く喉を鳴らす
ほぉ~う・・・ベッドの上でもそんな声だすんかなあ~・・・
あ、違う!違うんだMY SUN!
今のはジョーダン!もうすぐ駅だからそれまで大人しく寝てろ!
というか、どこまで果てしなく妄想するんだこの俺!
ズボンの中の「埋蔵金」すらコントロールできない俺は、まさに「名ばかり管理職」
止まれ!早く止まるんだぁ~!!
「上野~、上野~。お出口は右側です」プシュ~
はぁ、はぁ、はぁ
戦いは終わった・・・
とてつもなく長い7分弱だった
しかし俺は最後まで戦い抜いた・・・
そして最後に勝利と感動を勝ち取った。
人はこの7分弱を後世に語り継ぐであろう
「上野の413秒」と・・・