俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

2008 新語・流行語大賞 その2

その時、私の股間は女性のでん部に密着していた。

そして戦いのゴングが鳴る。

上野駅までの7分弱、一本勝負。

見事、冷静さを保てたらオレの勝ち。

勃起したらオレの負け



普通に考えたら完全な負け試合

レスリングで言ったら既に足をとられた状態で試合がスタートするようなもの

これで興奮するなというのは、男を辞めろというようなもの



でもわたしはね、客観的に物事を考えることができるんですよ!

あなたとはちがうんです!!




さて、なんでこんな状態になったのか。

すべてはオレのミスだった。


この日の朝、オレはいつものように朝の通勤電車に乗り込んだ。

電車は意外にもすいていた。

そして何よりも、ドアのすぐ横のスペースが空いていた。

こんなことはめったにない。

この位置は、どんなに客が乗り込んでいても体が押し流されない

オレは迷わずそこに立った。

これが一つ目のミスだった。

このスペースは非常に狭く、ドアと座席の間の20センチの壁、そして座席の手摺とを結んだ△のスペースに体を収めなければ降りる人の迷惑になってしまう。

そこでオレはかばんを網棚に載せることにした。

これが二つ目のミス


そうと気づかずに電車はまず次の駅に着く。

すると一気に人がなだれ込んできた。

目の前には若い女性(A子)が立っていた。


シャンプーの匂いにくらくらしつつ、それでもまだA子との間にはスペースがあり、何事もなく一駅やりすごす。

しかし次の駅に着き、ドアが開いた瞬間、A子はものすごい勢いで外に押し出された。


オレは、その勢いに押し出されまいと、手すりにつかまった。


すると今度はものすごい勢いで人が入ってきた。

もうこの時点で乗車率100%

しかし先ほど押し出されたA子が乗り遅れてはならじと、左肩から体を押し込んだ。

さらにその後ろからも乗客が体を押し込んできたため、A子の体は濁流に飲み込まれた葉っぱのようにくるりと回転

そしてオレのまん前でピタリと止まり、ドアが閉まった。


A子の背中は、オレの体の前面にピタリとついている。

A子のお尻がオレの股間の真ん前に来て

凸凹がピタリと収まった。


普段、オレは電車に乗るとき、かばんをたすきがけにし、かばん本体を体の前にして立つ。

これなら前の人と密着しないので、チカンに間違われることもない。


しかし、この時、オレはかばんを網棚に上げてしまっていた。



まずい、まずいぞ。

ズボンの布を通してA子のお尻の柔らかさが伝わってくる。


いかん!意識を逸らせ!

何か別のことを考えろ!


怖いこと、怖いこと・・・


えっと、えっと、ヤクザに絡まれたシーン、暴力団に絡まれたシーン、岩下志麻にすごまれたシーン


岩下志麻が「あんたら、覚悟しいや!」と着物をはだけて・・・


着物をはだけて??いかん、いかん!そんなシーンないない!


えっと、えっと、悲惨なシーン、残虐なシーン

死んじゃうヤツ・・死んじゃう・・・


そういえば、アレの時、「死んじゃう!死んじゃう!」って叫ぶ女って・・・何かいいよな~

征服感がなんとも・・・

!!???

やばいやばい!ちがうちがう!

こんなこと考えたら血液が逆流しちゃう!!

ダメダメダメダメ。



えっと、えっと、・・・ブス、ブス

この目の前の女すっごいブサイクで、振り返ったらにきび面で鼻の穴が上向いていて

研ナオコみたいで、それでそれで・・・うん、それで行こう!

頭の中に「振り返る研ナオコのイメージ画像」作成!!そして再生!


振り返ると・・・あ~!!!なんで菅野美穂ぉ!!しかも「チオビタドリンク」のドアップ顔!!!


「チオ!」「ビタ!」


俺の股間も君に「ビタ!」なんつって


あ~~~ちがうの、ちがうの!そうじゃないの!

昇れ血液!

えっと、えっと、あ~!!コラ!テメー、A子!今、お尻の位置をずらそうと左右に尻振ったろ!!

あかんやん!そんなことしたら!


くそ、A子め・・・A子め・・・A子・・・小池栄子


あ~、ダメ!小池栄子ダメ!想像しちゃダメ!

うお~!ムクムクいってる!


噛め!噛むんだ!

下唇を目一杯噛み締めろ!


つねれ!つねるんだ。

オレの腿なんてちぎりとってしまえ!!


そして精一杯腰を引け!

胸を前に突き出せ!


「次は○○~、○○です。お出口右側です」


よし!アナウンス入った!

いける!逃げ切れる!

A子がなんぼのもんじゃい!


「ううん」


A子が軽く喉を鳴らす


ほぉ~う・・・ベッドの上でもそんな声だすんかなあ~・・・


あ、違う!違うんだMY SUN!

今のはジョーダン!もうすぐ駅だからそれまで大人しく寝てろ!


というか、どこまで果てしなく妄想するんだこの俺!

ズボンの中の「埋蔵金」すらコントロールできない俺は、まさに「名ばかり管理職


止まれ!早く止まるんだぁ~!!

「上野~、上野~。お出口は右側です」プシュ~



はぁ、はぁ、はぁ

戦いは終わった・・・

とてつもなく長い7分弱だった

しかし俺は最後まで戦い抜いた・・・

そして最後に勝利と感動を勝ち取った。


人はこの7分弱を後世に語り継ぐであろう



「上野の413秒」と・・・