今朝、コンビニで朝飯を買った時のことだった。
清算を済ませ、うちに帰ろうとしてして何気なく入り口近くのラックに立てられたスポーツ新聞の見出しに目を疑った。
「三沢急死」
プロレスリング・ノアの社長であり、現在もトップレスラー
そして武藤敬司と並び、日本マット界で「天才」と称される稀有な存在
その三沢が逝ってしまった。
僕は言葉を失った。
「あ・・・・まただ・・・」
橋本真也が死んだときも、ホークウォリアーが死んだときも
エディゲレロ、クリスベノイが死んだときも
なんとも言えない虚無感に襲われた。
なんだろう・・・プロレスラーは時に、突然の死によって
僕の中の時間を止める。
橋本真也が死んだとき、僕は橋本の残された家族を思った・・・
エディゲレロがシャワーを浴びている最中に心筋梗塞でなくなって以来、
僕はシャワーを浴びる瞬間に少し警戒をするようになった
そして今回の三沢社長の死・・・
僕は正直、レスラー三沢があまり好きではなかった。
白い肌、ぽっこり出たおなかはあまり格好よくないし、表情も乏しかった。
しゃがれた低い声で、何を言っているかわからないし、
ダサい技をたくさん持っていた。
欽ちゃんジャンプで相手を蹴る”欽ちゃんキック”
相手をお辞儀させた状態で蹴る”超低空かかと落とし”
くるりと回って足の側面で蹴る”なんちゃってローリングソバット”
そして何よりもつまらなかったのが、その試合運びだった。
とにかくエルボーばっかり
相手選手がいかに多彩な技を放とうとも、エルボーだけで簡単に形成を逆転してしまう三沢
攻撃のはじまりも、中盤のつなぎも、最後のフィニッシュもエルボーだったりして、
あまりに単調な試合運びに呆れたことさえあった。
しかし、それでもやはり”天才”と呼ぶにふさわしかった。
タイガードライバーはその見た目の華やかさで群を抜いていたし、
タイガースープレックスや、エメラルドフロウジョンは、そのバリエーションの多さに圧倒された。
「え!?なんでそのタイミングでそんな動きが出来るの!?」という閃きがあった。
さらに、相手選手が鬼の形相で、必死になって追い立てているのに、
ややうつむき加減な無表情で、相手を一蹴してしまう
また、非情とも言える攻撃で相手をのしてしまう強さがあり、
それがまた、憎憎しげでもあった。
特にタイガードライバー91は、「えげつない」という表現がぴったりで
本人ですら奥の手としてめったに使わなかった。
何かの本で読んだのだが、三沢・川田・小橋は片親で父親がおらず、
だからこそジャイアント馬場という父親のもとで、壮絶な愛情争奪戦を繰り広げたのだという
また、高校時代の後輩でもある川田は、三沢の制服をもらうぐらい三沢を慕っており、
だからこそレスラーになって、三沢を必死に追いかけてきた。
必死の表情で三沢を攻める川田は、偉大なる兄を振り向かせようとムキになる弟そのものだった。
三沢はその強さ、その才能、その懐の大きさから
多くのレスラーに慕われ、多くのレスラーの目標となり、多くのレスラーが三沢との対戦を望んだ
相手の攻撃を、受けすぎるぐらい受け止め続けた三沢選手
晩年はそのダメージと古傷が蓄積していたという。
謹んでご冥福をお祈りします。