もしかしたら関西では今もやっているのかもしれないが、
(一応関東育ちの僕の記憶では)以前、深夜で『たかじんのバー』という番組がやっていた。
で、この番組、いつも最後にやしきたかじんがお客を相手に、カウンターの中でギターの弾き語りを行なうのだが、ゲストの反応はいつも同じなのだ。
ゲストがタレントであろうと、歌手であろうと
やしきたかじんの歌は”うっとり”した表情で聞き、「いいわ~」と溜息混じりに感激するのが
この番組の決まりである。
関東の人間にとっては、やしきたかじんの歌(「やっぱ好きやねん」など)は、
「ま、うまいんだろうけど・・・流しの人って感じだな~」ぐらいの認識しかなく、
これといってウットリ聞くようなものではないのだが、
この番組に呼ばれたゲスト、および関西圏の視聴者にとって、
やしきたかじんの歌は、「ええわ~」といいながらうっとりするものなのである。
もう、そうなっているのである。
で、関東の人間はどんなものにうっとりしているかというと、
やっぱり関西のこの人のお話にうっとりしているのである。
「学校は勉強しに行く所じゃない!
勉強は家でも塾でも、どこでもできる!
学校は(嫌)なことを(良い)ことに変える訓練をする場所や!
嫌な事っていっぱいあるねんな!
嫌な友達がいたり、先生がいる。
でも、その嫌なことを良いことに変えれる訓練をいっぱいした奴は大人になった時に、その訓練が役立って、
いっぱりある嫌なことを良いことに変えて生きていけるねん。
だから、学校でいっぱい訓練をしてな・・・」
「整形手術は、外科手術ではなく僕は内面的な治療だと思います。
おっぱい小さいからといってコンプレックスの人がいて
おっぱい小さいから夏の服こんなん着れないとか
胸が小さいからこの服似合わないとか
異状に女性へこんでますけど、一切関係ありません。
(豊胸の手術って、じゃ、しなくていいってこと?)
する必要ないけど
する必要もある。
それは、対男性じゃないんですよ。
対自分。
胸があるのは夢でしょ。
お風呂入った時、きれいな体っていいやん。」
この人が語り出す頃には、なんか感動のBGMが流れたりして、
もうゲストも視聴者もうっとりなのである。
もう、最近では若手芸人が繰り出すギャグのように感動話を次々と披露する紳助氏
おちゃらけたかと思うと急に真剣に語りだすから要注意である。
で、BGMが流れ、紳助氏が語りだしたら、ゲストはチャチャを入れてはいけない。
うっとり聞いて、最後に「いい話ですね~」といって
紳助氏を尊敬のまなざしでうっとり眺めなければならない。
これが芸能界のルールである。
たとえ「最近多いな~」と思っても
「またかよ~。感動話の大安売りは興ざめじゃね?」と思っても
そんな表情はおくびにも出してはならない。
”勉強になりました!さすが紳助兄さん!”という表情で惜しみない拍手を送る。
これが芸能界の鉄則である。
すると紳助氏が照れ隠しに「ええ話やろ?」とごまかしにかかって、感動話が終了する。
「普通、17歳いうたら 世の中 見るもの全てが初めてやねん
みなさん思い出してください
高校生の一年間、どんだけ長かった?…
あれ、凄い長かったでしょ?
時間は同じように流れているのに あの一年は長い…
なぜ長いかというと、経験していないからなんです
新しいものをどんどんどんどん知ったり、新しいものを見ると
時間は長く感じるんです。
ほんで、同じ経験したこと 同じ見たことを繰り返していくと
時間は短く感じるんです。
それが、旅行をした時の、行きは長く感じ 帰りの道は早く感じるでしょ?
帰り道は なぜかというと一度見た風景やからなんです
ホンマの16、7歳ってのは長いんやで、
あの頃の16歳の1年間て言うたら 今の4年分はありますな」と語った。
あ~なるほどね~。確かにそうだな~。説明うまいな~。
でも待てよ?これ、感動話か?
と思っているとゲストの久本雅美が
「ええ話やわ~」と感嘆のコメントを漏らす。
ん?そうか?本当にそうか?
実は紳助氏のお話はまだ終わっていなかったのである!
「時間をゆっくり流す方法は 新しいことを始めるんです
今までやっていない趣味や 会ってない人と出会うですわ
そうすると、また元のゆっくりした時間が流れ始めるんです
だからみなさん・・・」
あ、これならわかるわ。
いい話だ。
いくつになっても新しいチャレンジをしなさいってことね。
久本さん、ちょっとフライング!
試食する前に「おいし~!」って言っちゃったようなもんですよ!!
ま、とにかく関東人の常識は、「紳助氏の話をうっとり聞く」なのである。
ところで、そろそろだれか紳助氏のマンネリを止め、新しいチャレンジを勧めてもらえないだろうか