ある朝、いつものようにお出かけの準備をしていたら、いつも愛用している「Ag+」と「AXE」が空になっていることに気づいた。
確かに、先週辺りから「そろそろ切れそうだな。仕事帰りに買って帰るか」と思っていたのに、ずっと忘れていたのだ。
僕はあせった。
そういえば、僕は仕事へ行く朝は必ず何がしかの「匂い止め」をスプレーしている。
それを切らすなんて正直、はじめてかもしれない。
僕はしかたなく、ベビーパウダーでごまかしごまかし、
できるだけ汗をかかないように一日を過ごした。
「匂い消しがない」
それだけでなんだが普段で、嫌な一日だった。

その日、僕は家に帰って「男性のエチケット」や「加齢臭が出てきたら」といった気になるホームページを眺めていた。
どうやら男性の体から出るある臭い成分は、男性にはリラックス効果をもたらすが、それは女性が全く受け付けられない臭いであるらしい。
つまり、男性には全く気にならない匂いが、実は女性がもっとも嫌う臭いだったりするのだ。
僕は唖然とした。もしかしたら、今日一日、職場の女性、電車で隣りに立った女性に不快な思いをさせてしまったかもしれない・・・・。
以前、職場の女性が上司の加齢臭の話をしていたのを聞いて、他人事だと笑っていたが、実は僕だって知らない間に「臭いのきつい男」と噂されているかもしれない。
そしてとあるHPにたどり着き、「日本人男性に合う香水ベスト5」なるものを発見。それを手帳に書き写し、早速香水を買いに出かけた。
香水売り場は駅ビル1階の一角にあった。
香水売り場は駅ビル1階の一角にあった。
しかしなかなか近寄れない。
化粧品売り場なんて生まれてこのかた近づいたこともないし、中にいる若い女性客の目も気になる。
香水売り場の前を往復すること5分。
「そうだ。自分のためじゃなくて、あたかも女性へのプレゼントを買うようなふりしていれば言い訳できるんじゃねーべか。」と意を決した。
とりあえず一番外側(通路側)にある香水に恐る恐る近づく。香水の名前は「サムライブルー」。ワールドカップ日本代表をイメージして作られた新商品らしい。しかもどうやら男性用だ。なんだ、あるじゃない、男性用化粧品。

なんだかリトマス紙みたいなのが香水の前に何本か立てられている。
「これはなんだべか?」と手にとってみるとちょっといい匂いがする。
どうやらこの紙に香水をしみこませているらしい。
なになに、これは柑橘系?これはシトラス系?どれどれ?おーいい匂いじゃないの。
そんなこんなですっかり”スメリング”にはまっていると店員さんに声をかけられた。
「プレゼントですか?」
「え、いや、あの・・・・自分のです・・・」
「職場でつけるなら匂いがきつすぎないオードトワレがいいんですか。へえー」
「香水はつけてから30分から2時間ぐらいのミドルノートで選ぶといいんですか。へえー」
その中で僕が特に気に入ったのが「RISING WAVE」というもの。あのイルカの絵を描くクリスチャン・ラッセンがプロデュースしたらしい。実にさわやかで思わずうっとりしてしまう。結局これを購入。お姉さんに丁寧に包装してもらい、宝物のように抱えて家に帰った。

そして今朝、早速「RISING WAVE」を試してみた。
ウエストあたりに2吹き。最初、ちょっときつい匂いが立ち、しばらくするとうっとりするような香りが立つ。これがうれしい。ついでにハンカチにもシュッ、シュッ。これがまたトイレに行くたびにうれしくなる。ついついハンカチの匂いをかぎたくなる。
匂いの持続は2時間ぐらいだから、大体午前中だけだ。時々ふとしたときにウエストあたりから香りが立ち上ってきたりしてうれしい。今まで香水はおろか、おしゃれなんて優男がすることだと思っていたが、香水、なかなかいいじゃないの。
さあ、女性たちよ。僕に腰にしがみついてごらん。そして目を閉じて匂いを感じてごらん。クリスチャン・ラッセンが描く海とイルカの絵のように、RINSING WAVEのさわやかな香りにきっとうっとりするから。
香水万歳!!

