俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

おならの行方

男も30代になると、本当に容赦なく屁が出るようになる。

いやもう、びっくりするくらい、屁が出るようになる。

「ああ、俺も親父になったな~」と哀しくなったりした時期もあるが、これは白髪が増えたり、シワが増えたりするのと同様、年齢を重ねていくうちに起こる、自然な体の変化だという。

禿げや、加齢臭などは「汚い親父の象徴」みたいに言われているが、あれだって自然に年を重ねた男性の、ごく自然な現象だから、女性はむやみに「不潔!」「汚い!」と責めてはいけない。

おならは男が30代を越えたあたりから出やすくなるものなのである。

結婚して子どももでき、見栄を張らなくても良くなった男が、家族の前で豪快に屁をこくのは、デリカシーがないことであるが、屁が生成されやすくなること自体は成人男性の体の悩みみたいなものだから、生理に苦しむ女性は男性の屁を軽蔑してはいけない。

僕も例外に漏れず屁がよく出るのだが、もちろん大人であるから、ちゃんと場をわきまえて、「すかしっ屁」と「音の出る屁」を使い分けている。

昔は「握りっ屁」なども攻撃用によく使ったものだが、最近は臭いの検査用にしか使わない。

大人だからだ!

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ある日僕は、会社のロビーに立っていた。

ふと、屁を催して、「ブッ!」とかましたあと、その場から3メートルばかり横に移動した。

会社のロビーには少し人はいるものの、昼間は多少音の鳴る屁をしても気づかれないものだ。

僕は3メートル横を誰か気取った奴でも通らないかとほくそ笑んでいたのだが、ふと嫌な臭気に気づき、我に返った。

あれ?これ、俺の屁の臭いだ。おかしい・・・・風で流されたか?


これと似たような経験は過去にもあった。

僕は平行エスカレーターに乗ろうとしていた。

僕の考えでは、エスカレーターに乗る瞬間に屁をこけば、その後、僕は移動するのだから臭いはエスカレーターの手前に残る。

よって僕のところは臭くはないが、これからエスカレーターに乗る人は「臭っ!」と感じるという寸法だ。

僕はエスカレーターに踏み込む直前に放屁!

へへへ、今日の昼飯はゆで卵を食べたから、食後の放屁は硫黄臭いかも・・・


その後、ちょっとホコリを叩くふりをしながらお尻をパンパンとはたく

これでズボンとパンツの中にこもった臭いを追い出すのだ。

ああ、次にエスカレーター乗る人可哀想!!

そう思った瞬間、硫黄のような猛烈な異臭がしてむせてしまった。

「うおえ~~」

くっさ~~~。ナニこれ?


おかしい?なぜ臭いがついてくるのだ?

じゃあ何か?

僕は今まで街中で屁をこいたあと、ごまかすために一生懸命その場から逃げていたっていうのに、臭いは亡霊のように僕についてきていたっていうのかい?

そんなバカな?

僕の理論では、例えばエレベーターから降りた瞬間に屁をこけば、ドアが閉まった途端、においの詰まったエレベーターは各階に移動していくはずなのである。

そんでもって僕の元には臭いが残らないはずなのである。


しかし実際には、屁をこいた場所を離れても、屁はついてくるのである。

これは屁に対する僕のイメージを変えなくてはならなくなってきた。

僕は今まで、屁はたばこの煙のように、体から放出され、流れていくものだと思っていた。

が、もしかしたら、屁はエクトプラズムのように出てきて、肛門と一部がつながったままなのではないだろうか?

もしそうならば、僕がいくら移動しても、屁は正月の凧揚げのように僕と一緒についてくることになる。

これなら合点が行く。

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だから屁はひった後に、しっかり根元から切らなければならないのだ。

根元から切らないと、根元の部分が残り香となって漂ってきてしまう。

屁よ・・・Don’t follow me・・・

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