俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

食中毒にはご用心

それは1週間前のこと

僕はそれは久しぶりに近所の河原で運動していた。

夏こそ嫁と一緒にカーヴィーダンスなどをやっていた僕であるが、この3か月くらいは本当に運動をしていなくて、さすがに「やばいな・・・・」と思っていた。

だらしなくたるんだ下腹を握りしめ、僕は固い決意で河原に立った。

日曜日の朝、河原はジョギングにいそしむ中高年の皆様や、犬の散歩を楽しむ小学生らでにぎわっていた。

黒いジャージと黒い帽子、黒い手袋に白いマスクと

不審者以外の何物でもないファッションに身を包んだ僕は、まずは無難にラジオ体操。

そしてストレッチをするのだが、もうこれだけで体が悲鳴を上げる。

わずが10分で息が切れ、すでに座りたい衝動に駆られていた。

が、ここで休んでしまっては意味がない。

昔取った杵柄で、少林寺拳法の型などを思い出してやってみる。

足がほとんど上がらないのが悔しいが、それでも続けてやってみると、おもしろいくらい奇妙な目で見られる。

アチョー!アチョー!と拳法のまねごとみたいなのを15分くらいやったが、まだ運動を初めて30分も経っていない。

僕はもう十分に疲れているのだが、ここで終えては脂肪はまったく燃焼しない。

しかたなく、僕は河原をてくてく歩くことにした。

で、次第に体が温まって、気づくと小走りになっていた。

「あの橋のところまで!」と思って走っていくが、思ったより軽く行けたので思わずもう一区間!と足を延ばした。

「しまった!この道をまた戻らなければならなかった!」と気づいたころにはもう遅く、

最後は息は切れ切れ、足はボロボロ、顔が青白くなりながらなんとか帰宅。

3か月ぶりに張り切って1時間以上も運動してしまったのだった。

ま、これからも少しずつ運動していきたいものだと、このときは余裕があったのだが・・・

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その日の昼、妻が「今日はローストビーフが安かった!」と、値引きされたローストビーフの切れ端を買ってきた。

僕は昼、夜とそれをサワーで流し込み、だいぶ上機嫌で『行列ができる法律相談所』などを見ていたのだが、なぜか次第に頭が痛くなり、そして気分が悪くなってきた。

嫁はテレビを見ながらケタケタ笑っていたのだが、僕はなんだが胸がムカムカし、調子が悪かったので、10時には布団に入ることにした。

しかし、普段夜更かしばかりしているので、なかなか眠りにつけない。

深夜0時、嫁が寝室に入ってきたときも、まだ眠りにつけないでいた。

深夜2時、気持ち悪さが頂点に達し、トイレへ。

吐こうと思ったが何も出ず。しかし、うんこのほうは大量に出た。腹を壊したようだ。

ま、「うんこは出れば出るほどよい」というのが僕の信念なので、そのまま寝ることにした。

深夜4時

浅い眠りの中、また胃のムカムカを覚えてトイレに立つ。

今度は何年かぶりの嘔吐!

口からものを吐いたのなんて、何年振りだろう・・・。10年ぶりくらいか?

吐きながら寒気のようなものを覚えた。

これはなんかインフルエンザみたいなものか、食中毒かもしれない・・・

吐いた後、便座に座りなおすと、今度はまた大量の下痢!!

「やべ~な・・・」

あと2時間後に治っててくれないかな・・・

朝6時 起床

が、この気分の悪さと、下半身の不安定さ、肩から背中にかけての強烈な痛み・・・

僕はこの日の欠勤を決意した。

葬式以外で仕事を休むのもはじめてだったが、さすがにこの日は仕事になるまい。

途中で倒れて周りに迷惑をかけるのも嫌だし。

そして予想通り、僕の長いバトルが続くのであった。

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朝7時半、嫁がパートに行ってしまうので、もう一眠りしようと思ったが、おなかの調子が悪い。

トイレに行くと、もう水のようなものがジャー!と流れて止まった。

昔の電気ポットみたいだった。

一回押すと、ジャーッ!と出てピタリと止まるやつ。

僕はこの「ジャー式の排便」をこの日、何度も繰り返すことになるのである。


で、眠りたいんだけど肩から背中にかけての痛みがハンパない。

右へ寝返りを打っても、左へ寝返りを打っても肩が痛い。

それからモモの全面の痛み・・・・あ、これは筋肉痛か?

というか、昨日の急な運動で全身筋肉痛になっているのかも。

それが体調の悪さと重なって、全身がけだるい・・・・。

しかもおならをしようとしても、「これ完全に中身が入ってる・・・。放屁とともにビチャ~って出るタイプだ・・・」という感じで気が抜けない。


朝10時、僕は意を決して病院へ行くことにした。

僕は車を持っていない。自転車も妻が持って行ってしまった。

この体を引きずって、歩いて行かなければならない。

平日の朝に、仕事もせず、ひげもそらず、生気の抜けた顔でフラフラ歩いている男を、世間はどう見るだろうか?

しかも僕は内科の病院を知らないまま外に出てしまった。

僕はかすかな記憶を頼りに東に進路を進める。

15分ほど歩いて、どうもなさそうだと思い、今度は西に20分ほど歩いた。

で、老舗の団子やのおばちゃんに「内科の病院、ありませんか?」と聞くと、「今来た道を戻っていくとあるよ」と言われ、しかたなくまた東へ20分歩いた。

しかしそれらしき病院が見つからず、ウロウロしていると、電柱に内科の病院の名前があった。

「この先の交差点を右折」と書いてあるので、信じてトボトボ歩いていたのだが、その交差点までに10分かかり、右折して病院まで5分かかった。

僕は病人なのに、結局1時間以上も歩いてしまった。

病院なのに、朝からウォーキングをしてしまった。

やっとたどり着いた病院でフラフラになりながら、お尻に綿棒を入れられ、「アォ!」というマイケルのような奇声を上げた。

「軽い大腸炎ですね。なんか生っぽいお肉でも食べたんでしょう。」

「あとはお仕事なんかで体が疲れている状態だとなりやすいので注意ですね」

と言われた。

「3か月ぶりに老体にムチ打って運動したので・・・」とは言えなかった。

病院でまた水のようなうんこをして帰った。

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その後、薬とおかゆで見事に復活したのだが、今度は屁が止まらなくなった。

寝ながらテレビを見ていて、右に寝返りを打てば屁がしたくなり、左に向けば屁がしたくなる。

「どっこいしょ!」と立ち上がれば屁がしたくなり、座ればまたしたくなる。

一応は新婚なので最初は居間から出て屁をしていたが、嫁が

「おならが出るのは腸が正常に戻った証拠。あたしは別に気にしないからわざわざ外に出なくてよい」と許可をくれたので、そのまますることにした。

が、これがもう、体を動かすたびに出る。息を吸う分、出る感じ。

最初はおもしろがっていたが、そのうち、「屁が止まらなくなるんじゃないか」と怖くなった。

僕はこうやってどこでも屁をする親父となり、子供たちに「お父さん、臭~い!」と嫌われる父親になるのだろうか?

それと、嫁がこっそり匂いのある屁をして黙ってテレビを見てるんだけど・・・・・

俺の屁を許したのは自分のためなんじゃ・・・

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