俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

歌い手さん

オスオ「何度もすみません、オスオです。例の件、どうなりましたか?」

Hierar「すみません、どちら様ですか?」

オスオ「あの、自分、”歌い手”やってます。オスオです。」

Heirar「はあ」

オスオ「あの、僕の動画見てくれましたか?」

Hierar「ああ、ちょっと忙しいんで」

オスオ「そうっすよね。あの、じゃ、今ちょっとだけ観てもらえませんか?」

Hierar「無理です。」

オスオ「いや、自分、本当に歌に自信があるんです。」

Hierar「まあ、そういう方はたくさんいらっしゃいますし」

オスオ「あ、でも、自分はかなり上のほうだと思います。」

Hierar「ん~、ちなみにどんな曲歌ってるの?」

オスオ「有里さんの『ドライフラワー』とか、DISH/の『猫』とか」

Hierar「・・・」

オスオ「あ、あと中島みゆきさんの『糸』とか。去年は『香水』とかも上げました」

Hierar「・・・ベタだね・・・。」

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Hierar「で、どのくらい再生されたの?」

オスオ「それぞれ・・・500回くらいですかね?いや、今はもうちょっと伸びてるかも…」

Hierar「ああ、そうですか。それで?何か御用ですか?」

オスオ「あの、単刀直入に言います!僕のために曲を書いてくれませんか?」

Hierar「はぁ?いや、僕はそのぉ~・・・なんていうかな?」

オスオ「あのAboさんに書いた曲とか、Zombaさんに書いた曲とか最高でした!もう大ファンなんです。ぜひ自分にも曲を書いてほしいんです!」

Hierar「ああ、でもあれは僕が彼女たちの声に惚れて、ぜひ歌ってもらいたいって、こっちからオファーしたんですよ」

オスオ「はい!だからぜひ僕にオファーしてください!」

Hierar「はぁ?」

オスオ「今なら大募集中です!」

Hierar「・・・いや、でも僕は正直、あんまり男性の曲って書かないんですよ」

オスオ「何でですか?」

Hierar「だって僕、もともとボカロPで”みくたそ”の曲とか書いてましたし。」

オスオ「なんで男性が歌う曲を書かないんですか?」

Hierar「なんでって言われても・・・単に創造意欲がわかないっていうか・・・女性が歌うイメージ方が湧きやすいというか・・・」

オスオ「そんなの差別じゃないですか!男性にも書きましょうよ!」

Hierar「あの、僕じゃなくて他の人にあたったらどうですか?」

オスオ「男性の歌い手に楽曲を提供してくれる人が見つからないんですよ!みんな自分で歌っちゃって」

Hierar「ああ、確かに自分で曲が作れる人って自分で歌う人多いですもんね。」

オスオ「どこかにいませんかね?曲は作れるんだけど自分で歌えないから歌ってくれる人を探している人・・・」

Hierar「まあ、僕らがそれに当たるんでしょうけど・・・男性に歌ってもらってもねぇ。ジャニーズとかアイドルならまだしも・・・」

オスオ「なんでですか?女好きなんですか?」

Hierar「なに?」

オスオ「あ、いや、あの・・・ずるいじゃないですか!人を見た目で判断しないでください!」

Hierar「いや、見た目で判断するも何も僕はオスオ君に会ったことないから…」

オスオ「だから、まずは僕の動画を観てください!」

Hierar「いやでも男性の歌って書いたことがないんですって!無理ですよ!」

オスオ「僕、ルックスもイケてるんですよ!自分で言うのもなんですけど。写真送りますね」

Hierar「いや、別に要らな・・・ああ、本当にイケメンですね。」

オスオ「はい!歌もルックスも自信はあるんです。ただ自分で曲が作れないんですよ。だから人の歌を歌って動画を上げたり、Live配信したり、路上で歌ったりしてるんですけど、いまいちバズらないんです」

Hierar「う~ん・・・じゃあ踊ってみたら?」

オスオ「あ、運動は全くダメで、ダンスも苦手なんです。」

Hierar「じゃあ、事務所にデモテープを送ってみるとか?」

オスオ「そんな、今、令和っすよ!ソッコーバズりたいんです!」

Hierar「でも歌がうまいだけの人って巷にはたくさん溢れてますからね」

オスオ「そうなんですよね・・・。だからあとは楽曲で勝負するしかないんですよ」

Hierar「そうですね、じゃあがんばって楽曲作ってください」

オスオ「それができないからお願いしてるんじゃないですか!曲作ってくださいよ!」

Hierar「僕は無理ですって。女性の曲しか書いたことないんですよ」

オスオ「そんなむっつりスケベ気取ってないで!チャレンジしましょうよ!」

Hierar「君、ちょくちょく失礼だね」

オスオ「すみません、正直だけが取り柄でして」

Hierar「とにかく僕はボカロPなの!」

オスオ「でも女性からのオファーが来たら引き受けますよね?」

Hierar「いや、まあ、僕の曲を歌ってくれた人の動画見て、その人に歌ってもらいたいと思ったらね」

オスオ「僕も歌いましたよ!UPしてあります。ね?いいでしょ?」

Hierar「え、僕が作った曲、全部”女声”ですよ」

オスオ「はい、がんばって歌いました!低評価ばっかりでしたけど」

Hierar「でしょうね。だから僕に頼むのはおかしいですって。」

オスオ「そんな美少女好きのヘンタイこじらせてないで、男声でも作ればいいじゃないですか!」

Hierar「だんだん腹立ってきました」

オスオ「・・・あの、一緒に天下獲りましょうよ!お互い補い合って!」

Hierar「補う?」

オスオ「だって僕は見た目が良くて歌もうまいけど曲が書けない。Hierarさんはブサイクで顔が出せないし歌も下手っぴだけど曲が作れる!僕らが組めば最強じゃないですか!win-winじゃないですか!」

Hierar「僕、ブサイクで歌が下手って自分で言いましたっけ?」

オスオ「いや、それはあの・・・推測で?」

Hierar「昔、別名義で自分で歌ってる動画出してるんでリンク送ります」

オスオ「へ?・・・・あ・・・・・Hierarさんって・・・すごいっすね」

Hierar「僕は別になんて言われてもいいけど、とにかく曲のイメージが女性ボーカルと合ってるから女性にオファーしてるだけ。もういいね?とにかく君には書かないから」

オスオ「ちょっと待ってくださいよ!じゃあ僕みたいに自分で曲が作れない歌い手はどうすればいいんですか!これじゃただのカラオケの上手いホストじゃないですか!これじゃただのカラオケ好きのナンパ野郎じゃないですか!」

Hierar「まあ、そうなんじゃない?」

オスオ「へ!?」