俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

***の才能

そのCMソングを歌っている女性の名前を見て、僕は目を疑った。

それは10年以上も前に、僕の心をかき乱した女性の名前だった。


そのCMソングを初めて聞いたときは、これといって特別な気持ちはなかった。

ファンケルの『カロリミット』という健康食品。

元々、女性バージョンのCMはなかなか好きなCMの一つだった。

「いっぱい食べる君が好き~。ほっぺにケチャップ~。我慢しないでお代わりしなよ。いっぱい食べる君が好き~」

ってやつで、「そうそう!いっぱい食べる女の子っていいよね~。痩せてればだけど」なんて思っていた。


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で、第2弾は男性編で、今度は野郎が飯を食いながら「いっぱい食べる君が好き~」ってバージョンだ。

こっちのCMは全然かわいくない。

が、CMソングを歌っている女性の声と、独特の歌い方に聞き覚えがあった。


そして本当になんとなく「誰だ?歌ってるの?」という感じでテレビの画面に目を向けたのだ。

本当に懐かしい名前だった。

あれから彼女の名前を全く耳にしていなかったので、勝手に引退したものだと思っていた。

で、Wikipediaで調べてみると、名前を色々変えながら、まだほそぼそと活動していた。


僕が彼女を初めてみたのは14年前

フジテレビ系列『Hey!Hey!Hey!ミュージックチャンプ』の新人ゲストとして登場した彼女は、アコースティックギターをジャガジャガ鳴らしながら、激しいビートの曲を奏でた。


プロデューサーは『あの娘ぼくがロングシュートを決めたらどんな顔するだろう?』『ハレンチ』『セックス』などとタイトルだけでも笑えるCDを何枚も出してる奇才・岡村靖幸


確かに、それっぽい。

”売れ線”狙いでなく、岡村の独特の世界観をそのまま渡した感じ。

もともとギターの弾けなかった彼女は、岡村がギターをジャガジャガ引きながらイっちゃってる姿を見て、「ああ、この歌はああやって歌うものなんだ」と理解(元々、彼女にも天然の才能があったが)

ギターを習い初めて、奇声を上げながら名曲『愛の才能』を歌いあげた。


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『愛の才能』は、どこか頭の線が一本切れたようなテンションでギターをジャガジャガ奏でる姿が魅力的な名曲だ。

僕は彼女が『Hey!Hey!Hey!』で歌っている姿を見てすっかり魅了されてしまった。

彼女の才能は明らかだった。

新人ながら、決めるところはカメラ目線でしっかり決めてくる。

天性の感覚を持っていた。


デビュー第2弾『DNA』を『ミュージックステーション』で聴いた時もしびれたね。

映像がないのが残念だが、目がキラキラして、いかにも”ノってる”人だけが持つオーラがあったな。

最初に見たときはそれほど美人だと思わなかったが、この頃にはアイドル顔負けのルックスで、そのルックスのままシャウトしていたものだから、そのGAPたるやすごかった。

僕は2度目のダウンを奪われたものだ・・・。



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しかし、3曲目以降、彼女の才能は違う方向へと進んでいく。

師匠譲りなのか、売れ線から外れ、マイナーなほう、独特な世界観へと進んでいき、だれもついていけなくなった。

僕もファーストアルバムまで買ったのに、シングル曲以外の質の低さに絶句したものだ。

また、「売れる」ということにほとんど執着せず、なかなか曲を出さなかったのも痛かった。

そして彼女は消えた・・・




あの川本真琴が14年ぶりの復活である。

それは驚いたさ。

彼女がまた才能を発揮できるかどうかはわからない。

が、あの時の衝撃は本物であることは間違いない。

今、聞いても全然新しい!

女性ソロシンガーで、川本真琴と同じくらいのインパクトがある人は21世になってまだお目にかかっていない。

本当にすごい人なのだ。


おそらく、川本本人でさえ、当時の衝撃を再現することはできないだろう。

が、あのまままっすぐ沈むのではなく、21世紀にちょこっとだけ浮いてみせてくれただけでも

おじさん世代としては勇気のわくできごとなのである。

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