俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

考えられへん!

木村祐一著『キム兄の人間設計図 相手を不快にさせない正しい間違え方』(生活文化出版)を読んで

 

・・・・・・・・・・不快になりました。


この本は、「考えられへん!」「ありえへん!」の口癖とともに、痛快に一刀両断することで知られる木村祐一キム兄)が、初めて語ったマナー論である。

 

本の帯にも「吉本興業随一、作法の伝道師・木村祐一が始めて語る、究極のマナー読本!」とある。

 

まあ、多少、大げさなコピーをつけることはよくあることだが、

 

なんかいつのまにか木村祐一が「作法の伝道師」とか「マナーの語り部」みたいな扱いを受けることに

 

ちょっと疑問を感じる。

 

これって、一般的なコンセンサスなのか?

 

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確かに、納得できる話もある。

 

例えば、とある居酒屋でキム兄が「焼酎を一つ!」と注文したところ、店員に「え?幼虫ですか?」と聞き返されたという。

 

当然、キム兄はブチっと切れて

 

「あのな、どこの客が居酒屋に来て『幼虫』を頼むねん!100歩譲って幼虫と聞こえたとしても、お前は仕事柄『焼酎』ととれ!」

 

とお説教したという。

 

これはキム兄が絶対的に正しい。


また、新人の頃、ダウンタウンの松ちゃんと一緒に喫茶店に行くと、よく「マネージャーさん?」と間違えられたそうだ。

 

松っちゃんが「後輩です」とフォローしてくれたそうなのだが、新人とはいえ、やはりマネージャーに間違われるのは気分的には良くない。

 

だから、仮に松っちゃんの隣りにいる人がわからなくても、、同じ間違えるなら「タレントさん?」と聞いたほうが誰も傷つかない。これが正しい間違え方だという。

 

これも読んで、「なるほどな」と思った。

 

僕も割りと気が利かないほうなので、これはすごく参考になった。

 

が、一方で、「そんなのあんたの勝手やん!」という指摘も多い。

 

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1 相手を不安にさせる言い方

 

 ある日、テレビ局での仕事が終わって帰るとき、エレベーターで1階に下りたとたんトイレに行きたくなった。

 

マネージャーに「1階にトイレって、あったっけ?」と聞くと、マネージャーは「たぶん、ないんじゃないですか」と答え、キム兄は激怒

 

理由は、相手を安心させることば(「たぶん、あるでしょう」)を口にすればいいのに、なんで否定的な言い方になるのか、意味がわからないから。

 

僕がマネージャーだったらキョトンとするな・・・


2 無駄な会話をなくす

 

 キム兄は「電話をかけた相手に『今、大丈夫ですか?』と聞かないでおこう協会」の副会長(会長はダウンタウンの松っちゃん)。

 

なぜこの協会を作ったかというと、携帯にかけた相手が電話に出たらそれは大丈夫な証拠だから。そうじゃないとしたら電話に出るほうが悪い、というもの。

 

確かに一理あるように気がしなくもないが、とりあえず電話に出られるが、落ち着いては話せない時ってこともあるし、

 

電車や映画館で電話にでちゃうおっさんも多いからなぁ・・・。


3 連絡の正しいタイミング

 

「入り時間変更になりました」「待ち合わせ場所は新宿で」「先日渡した書類持ってきてください」という連絡を電話でしてくる人がいるが、キム兄曰く「メールでええやん」「今度会ったときでええやん」

 

何でも電話で伝えるのが一番だと考えるのは間違いだという。

 

電話をかけるということは相手の時間に割り込むことだからというのがその理由。

 

ま、キム兄は他の章で「お詫びをメールで済まそうとするのはダメ」とか「留守電に用件を入れて満足してはダメ」とか、内容によって連絡の方法とタイミングをちゃんと考えるべきだということを言っている。

 

が、「入り時間の変更」や「待ち合わせ場所の連絡」は直接話したほうがいいと思うけどね。

 

メールって連絡が伝わってるかどうか不安なときもあるしね。

 

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全体的にこの本は、マナー本としても、木村祐一本としても、何か物足りない。

 

見開き1ページに1つのエピソードが書いてあるのだが、やはり一つ一つの説明が短すぎて、納得できない部分も多いし、オチも弱い。

 

『すべらない話』などを見ても、キム兄はオチまでの説明をしっかりと、むしろ長すぎるくらいしてからオチに持っていくタイプなので、このテのスタイルはキム兄の魅力が生かせない。

 

おそらく、出版社が「木村さんにマナーの本を書いてほしい!」というのが先にあったんだと思う。

 

そして「実用的に、見開き1ページに1つのエピソードで」なんて企画が決められた後にキム兄に話を持って言ったんだと思う。


が、できあがったものの内容の薄っぺらさと言ったらない。

 

これで「作法の伝道師」とは、ちゃんちゃらおかしい。

 

(もっとも僕は、彼が自分の中のルールに厳しいことは認めるが、それが世間一般の人が考えるものと共通であるとは思ったことはない)

 

もちろん、キム兄にとっても不本意な本であろうと思う。

 

自分で企画をして作っていれば、こんな本にはならなかったはずだ。

 

ライフワークとして行なっている写述(自分で街中のおもしろ写真を撮って、突っ込みを入れるもの)をちょこちょこ挟んでいるのがまた中途半端だし、

 

自分が父や先輩から教わった想い出話もまた内容的に中途半端。


世は出版不況というが、若者の本離れだけが原因なのだろうか・・・

 

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