平林都という人がいる。
エレガントマナースクールの代表取締役社長であり、マナー講師、接遇家である。
僕はTBS「金曜のスマたちへ」でこの人の特集を見たのであるが、なかなかのスパルタ教師であった。
和服の上品そうないでたちで研修生の前に立ち、見本を見せるのであるが、ちょっとでも出来ていない社員がいると
「声が小さい!」
「歯を見せぇい!」
「やる気がないなら帰れ!」
と関西弁で怒鳴り、何事もなかったかのように笑顔に戻って「では今一度」
なかなか個性的な人である。
が、平林氏に研修を依頼した銀行、病院、企業は確実に業績を伸ばしており、年間300社ほど研修の依頼が来るそうだ。
僕が平林氏のエピソードでおもしろいなと思ったのは、高校時代アパレル関係のアルバイトをしていた際のエピソードだ。
買おうかどうか迷っている客に対し、他の店員が「よろしかったら試着してみてください」と声をかけると、大抵の客は「いえ、結構です」とその場を離れてしまうのだそうだ。
が、平林氏が「よろしかったら、ご希望のサイズをお持ちしましょうか?」と声をかけると、不思議なことに客は「そうねぇ・・・・じゃあお願い」と応じてくれるのだそうだ。
そこで平林氏は、「~てください」と客に命令するのではなく、「~ましょうか?」「~でしょうか?」と疑問形で聞き、相手に選択権を与えたほうが相手にストレスを与えないことを知ったという。
なるほど・・・・・確かにそうかもしれない。

話は変わって
最近、僕は引越しをした。
引越しというのはなかなか面倒なもので、さまざまな手続きが必要である。
例えば、当時住んでいたアパートの不動産屋に退去の知らせをしなければいけないし
新しいアパートの不動産屋とのやりとりもある。
それ以外に
インターネットプロバイダーにも転居を知らせて、転居先でも使えるようにしてもらわないといけないし、
僕の場合、アリさんマークの引越し社を利用したので、そこにも電話をかけたし、
さらに古い原付を処分するためにバイク王に電話したり、粗大ゴミ回収業者に電話したりもした。
結局、業者に粗大ゴミの回収を頼むと高くつくことがわかったので、区役所に連絡して粗大ゴミシールを買い、ゴミを出すことにもなった。
まあ、引越し前の1~2週間は本当に目が回るような忙しさだった。
被災者の方々には申し訳ないが、地震がなかったらとてもじゃないが引越しの準備は間に合わなかった。
自宅待機が幸いしたのだ・・・
その全てが、平林都ばりの接遇表現を使ってくるのである。
「ではまず、ご住所をいただいてもよろしいでしょうか?」
「ありがとうございます。では次に、お名前をいただいてもよろしいでしょうか?」
「はい、ありがとうございます。では次に日中連絡が取れるご連絡先、携帯電話番号などをいただいてもよろしいでしょうか?」
「ありがとうございます。ちなみにお客様のお手元にお客様番号が記載された伝票等がございますでしょうか?」
「はい、ありがとうございます。では、右上に記載されている11桁のお客様番号を教えていただけますでしょうか?」
「はい、ありがとうございます。それでは引越しのご予定日を教えていただいてもよろしいでしょうか?」
・・・・・・・・・・・・・
「では最後に、確認をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
よろしいよろしい
さすがに1週間に何回もこの表現を聞くと辟易してしまう。
マニュアルに従った丁寧な表現なんだろうけど
1回の電話だけでも10回はこんな表現を使われるし、
それが何軒もとなるともう嫌がらせにしか聞えない。
もちろん、僕は引越しという特殊な事情なので、たまたまいっぺんににこれを聞くことになっただけなのだが・・・
さすがにこれだけ同じ対応をされると、
逆に国分寺区役所のぞんざいな扱いが嬉しかったりする
「では住所と名前を言ってください」
「今回は何を出されます?」
「トースターは200円、ビデオデッキは400円、ベットの枠は1200円です」
「粗大ゴミのシールを売っている場所は知っていますか?」
「ゴミは朝8時半までに所定の場所に出してください。時間までに出さないとされない場合がありますので」
・・・・・・・・・・消費者はいつだってわがままだ・・・・・・・・
