俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

便所飯

え~、最近ネットで知ったんですが、「便所飯」という言葉があるそうです。

なんでも、若い人の中には一人で御飯を食べている姿を見られたくない。

だからトイレの中で御飯を食べる人がいるとかいないとか。


で、便所飯が行なわれるのは主に大学でございまして、学食で一人で御飯を食べていると「あの人は友だちがいないんだ」「嫌われ者か変わり者か?」などと思われてしまうそうなんですな。

それを偶然友だちに見られるのも恥ずかしいってんで、トイレの中で御飯を食べるんだそうです。

そんな彼らも、大学を離れたところ、例えば一人で牛丼屋さんで夜食を食べるのは平気だそうで、

ここらへんも最近の若い人の難しいところでございます。


で、この間、私は大学で講演会がありまして、とある大学に伺ったんですが、どうもその日はおなかの調子が悪い。

それで講演会までまだ時間があるってんで、大学のトイレを拝借することにしたんです。

それにしても最近の大学のトイレはあまりにきれいでびっくりしたんでございます。

ウォッシュレットですよ、ウォッシュレット。

しかも便座がぬくい!


で、私は感心しながら下着を下ろし、用を足していると、隣りの個室でごそごそ音がする。

お隣さんもフン闘中か?と思ったんですがどうも様子がおかしい。

ビニールの袋をカサカサさせる音や、お新香をポリポリかじる音が聞こえる。


「おお、これが噂に聞く”便所飯”か」と感心して、ちょいと聞き耳を立てていたらですな、隣りの個室の御仁の携帯電話がなったんです。


「もしもし?お~、みっちゃん。どうしたの?」

どうやら友だちのようでございます。

「あ~、今?飯食ってた」

うんうん、まあ、その通りなんだけど。

「今?大学。あの・・・・・図書館の近く」

まあ、トイレの中とは言えませんわな。

「おう!わかったわかった。今行く」

そういうと隣りの御仁は携帯をパカっと閉じて、ビニール袋をガサガサっとしまい、さっさと出て行ってしまったんですが

いやはや、驚きでしたな。

こんな人がたくさんいたら、えらいことになります。

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A「なんだよ、風邪引いたのにがんばって学校に来てみたら専門の授業出たのは俺だけか。御飯どうしようかな?しょうがない。今日はトイレで済ますか。生協でパンと缶コーヒーを買って、と」

(トイレのドアを開け、鍵を閉め、座る)

A「さて、食べるか。まずはパンの袋を開けて・・・。あれ?今、右隣りでプルタブを開ける音がしたよ。お隣さんも便所飯かな?しかもこの匂い。オレの好きなエメラルドマウンテンの匂いだよ。奇遇だね~。エメラルドマウンテンは香りが違うからね。コーヒーはやっぱり香りですよ。あ~、いい香りだ」

(缶コーヒーの香りにうっとり)

A「あれ?コーヒーの匂いの向こうに、カレーパンの匂いがするよ。これまた偶然だね。あたしゃカレーパンには目がなくてね。あの油で揚げたパンの香ばしさと、中の香辛料たっぷりのカレーってのを頬張った日にゃ、カレーパンを作った人に100回くらいお礼を言いたい気分になるね。カレーパンにはコーヒーですよ。いや、気が合うね。ちょっと、ちょっとお隣さん!」

(と、右の個室の壁をノックをするA)

しかし、実は便所飯をしていたのはこの男の左隣の人だった。

びっくりしたのは普通に用を足していた右隣の大学生

そうとは知らないA君は右隣の男に話しかけた。

A「トントン!お隣さ~ん!」

B「!は、はひ?」

A「お隣さん、あんた気が合うね~」

B「は?」

A「いやね、私もなんですよ」

B「わ、私も?」

A「今、あんたのほうからプ~ンって匂ってきたよ」

B「いや、そんなこと言われても・・・・すみません」

A「何を謝ってるんだい。気にしなくていいよ。俺もなんだから!お互い様だい!」

B「え、ええ・・・」

A「あんたもよくするの?」

B「え?え、ええ、まあ・・・」

A「そうかい、そうかい。俺もなんだよ。寂しくってさ~」

B「さ、寂しいからですか?」

A「おうよ。普段は友だちと一緒なんだけどね」

B「え!!友だちと一緒!」

A「・・・・何驚いてんだい、変わった人だね。おたくはよくするの?」

B「え、ええ、まあ・・・・・日に2回は」

A「一日2回!そりゃま~大変だ!あんたも苦労なすって・・・」

B「ええ、まあ、けっこう・・・・・・・・(お腹が)弱いもんで・・・・」

A「それはそうと、あんたそれ、好きかい?」

B「え!(便器の中を見つめ)いや、好きとか嫌いとか、あまり考えたことありませんな。」

A「俺はそれが大好物でね」

B「えぇ!大好物ですか!?」

A「あのツ~ンとした匂い!」

B「ツ~ンですか・・・・(便器の中に鼻を近づけ、顔をしかめる)」

A「色、ツヤ、ボリューム!」

B「色?ツヤ?ボリューム?」

A「そして刺激的な味!」

B「あ、味??????あ、あの、そういう・・・ご趣味を?」

A「ご趣味ぃ?いやま、毎日じゃないんだけどね。でも好きなんでね、汚れた手まで舐めちゃうくらい」

B「(手を見つめ)うわ~・・・そうですか・・・」


そこへ、2人を会話を聞いていた一番左の寂しい便所飯男が

C「あの~、すみません、実は私もなんです」

A「お!こっちにもいらっしゃったのかい?へ~あんたも?」

B「(小声で)ど、ど~なってんだいこの大学は?なんでこんな特殊な趣味の人ばかり!」

A「うれしいねぇ、お仲間がたくさんいて」

C「ええ、僕もうれしいです。」

B「(小声で)うれしくないよ!」

C「良かったら、今度、一緒にメシでもどうですか?」

A「お!いいねえ、どうでい?左の御仁!」

B「えぇ!?無理です無理です!」


そういって一番右の男はいそいでズボンを上げて逃げていってしまった。

それをトイレの個室の中で聞いていた二人は


A「あれ?行っちまいやがった。付き合い悪いねぇ。まぁ、しょうがねぇや。じゃ、お隣さん、明日にでもご一緒しましょうか」

C「そうですね」

A「どこにします?」

C「じゃ、また明日、同じ場所で」

A「じゃまたここで!」

お後がよろしいようで。

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                    *これは台湾や北京にある便所レストランのソフトクリーム