それは僕が某大学の校舎でうんこをしていたときの話である。
僕は時々、職場近くの大学の学食にずかずかと入り込み、いかにも教授面をして飯を食べることがある。
この学食は学生には冷たいが、先生にはちょっとサービスが良くなる。
学生の場合は食べ終わったら自分で食器を軽く水ですすぎ、シンクに入れるのであるが、先生は学食のおばさんが「あ、いいですよ」と言ってトレイごと受け取って片付けてくれたりするのだ。
僕はいかにも”学会の権威”というようなフリをして「うむ、よろしく頼む」とトレイを差し出す。
A定食380円をいつも食べてる学会の権威もそういないと思うのだが。
さて、その日もA定食「とりのささみのシソ・チーズ包み揚げ」を平らげ、職場に帰ろうと思ったのだが、急に便意を催してしまった。
せっかく食べたA定食をすぐに出すのはもったいないが、事態は急を要する。
僕は急いで一番人気(ひとけ)のなさそうなトイレを探した。
僕は大をしているときに、他の人に入られるのが苦手なのだ。
落ち着かないし、自分の”音”を聞かれるのも嫌。
もし自分が大をしているときに小用の人が入ってきた時はじっと息を潜め、尻をすぼめ、小者共が出て行くのを待つ。
借りに隣りの個室に入られようものなら、最大限音が出ないように細心の注意を図るか、急いで尻を拭いて出て行く。
とにかく神経質なのだ。
僕はその大学の校舎でなるべく学生がうろうろしていなさそうなトイレを見つけ、ズボンを下ろしてしゃがんだ瞬間、不運にも3人の学生達が小用に入ってきてしまった。
まったくもってツイていない。
しかも大学生は声が大きくて下品だ。
あんな声の響くトイレで馬鹿みたいに大声で話すこともなかろうに。
A「ねえ、さっきの授業わかった?」
B「わかんね。あとでワッキーに聞くからいいよ」
C「まじワッキー使えんよ!ギャハハッハハ!!」
個室の中にまで響くきゃつらのバカ丸出しの高笑いに、僕は思わず耳を塞いだ。
一刻も早く地球から出て行け。
それが嫌ならとりあえずこのトイレから出て行け。
しかし先に小用を終えたバカ学生Aは鏡の前で(おそらく)髪を整えながら、ションベンの長い友人B,Cに話しかける。
A「ねえ、あれ覚えた?『River』」
B「お~、まだ。あれ難しくね?」
次に小用を終えたBがカチャカチャとベルトの音を鳴らしながら洗面台に近づいた。なんであんなにベルトをカチャカチャ鳴らす必要があるのだろう?ズボンを足首まで下ろさないとおしっこできない奴なのか?
個室の中で、とにかくこの3バカが早く出て行ってくれることを願う僕。
A「ガムシャラになって、投げ~てみろ~♪」
B「あ、それそれ!もう一回やって!」
A「ガムシャラになって、投げ~てみろ~♪」
B「それ、2回?2回振るの?」
A「オレ2回なんだけど、たぶんPV見たらもっとやってる」
なんとAとBは鏡の前でAKB48の『River』の振り付けを練習しながらCがションベンが終わるのを待ち始めたのだ。
バカバカ。そんなのよそでやれ。
大学辞めて今すぐ秋葉原に行って来い。
オレの安便をじゃまするんじゃねぇ。
B「こう?こんな感じ?」
A「そんな感じ。たぶん」
B「これ、チョー難しくね?」
A「チョーむずいよ。オレ2週間くらい練習したモン」
く、くだらね!そんなの練習する暇があったら勉強しろ!
C「あ!オレもそれできるよ」
なんとここで最後に小用を終えたCが参入。
なんとトイレの鏡の前で『River』の振り付けレッスンが始まったのだ。
A「き・み・の、目~の前~に、川~がな~がれ~る♪」
B「ちょっと待って、もう一回もう一回」
C「だから、き・み・の!」
B「き・み・の?」
A「め~、の前~に♪」
き、気持ち悪い!なんだこの大学は!
しゃべり方からすると茶髪でだらしないズボンを履いてるバカ学生だと思っていたが
実は黒髪めがねで、シャツをズボンの中に入れてるタイプなのか?
しかもその振り付け講座が一向に終わる気配を見せない。
ばか!早く授業に行け!授業がないならサークルに行け!サークルがないならバイトしろ!
それすらないなら早稲田のスーパーフリーでも入ってろ!
結局、トレイの前の振り付け講座は10分続いた。
10分なら大したことがないと思うかもしれないが、うんこを我慢するほうにとっては30分にも1時間にも感じられる10分であった。
そして青春時代の貴重な10分をトイレの前でアイドルの振り付け練習に費やす大学生に
僕は一抹の不安を覚えずにはいられなかった。
10分あったら部屋でオ○ニーぐらいできるのに。そっちのほうがよっぽどすっきりして健康的なのに。
お前らはだから箱根駅伝ぐらいでしか名前が売れないんだ。
ま、こんなところで親父狩りされるのも嫌なので、僕は何も言わないですけどね・・・。
ちなみに、何事にも研究熱心な僕はうちに帰ってAKB48『River』の振り付けをチェックしてみたのであるが、あれは素人が手を出すものじゃないと思うぞ。
AKBに入りたいのか?やつらは。