俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

目を出せ!

ある日、僕が駅までの道を歩いていると、向こうから自転車に乗ったおばさんがやってきた。

道幅は2M

ちゃんとよけないと当たってしまう狭い感じの道なのだが、10メートル先のおばさんは依然道の真ん中を走っている

こちらの存在に気づいていないのか?

それとも暴走おばさんで、僕に「お前がよけろ」と言いたいのか?

その真意が全く読めないのは、おばさんが”あの”サンバイザー”をかぶっていたからだ。

イメージ 1


なんでもあれ、「NEW UV サンバイザー」というらしいのだが、本当にやめてくれないかな?

向こうがこっちに気づいているかどうか、全くわからないのだ。

しょうがないから、僕はおばさんのサンバイザーの中を伺うように、目を凝らして見るしかないのだが

もしかしたらおばさんは「あら?あの人、なんであたしのことじっと見てるのかしら?あたしに気があるのかしら?」と思っているかもしれない。

結局僕はおばさんにずっとメンチを切ったまま通り過ぎることになったのだが、おばさんの表情は最後まで見ることはできなかった。


なんなんあれ?

紫外線を防ぎたいのはわかるけど、例えて見れば自動車のフロントガラスをスモークガラスにしているようなものだ。

サンバイザーをかぶっている本人は見えているから問題ないと思っているかもしれないが、公共の道路ってのは「自分が見えるから安心」というだけでは終わらない。

例えば信号機のない道路を渡ろうとしたとき、向こう側から車が近づいてきたとする。

歩行者は当然フロントガラス越しにドライバーを見て、ちゃんとドライバーが歩行者である自分に気づいていることをチェックしてから渡る。

ドライバーだって、歩行者が道路を渡ろうとしていることに気づいたら、「車をしっかり止める」「手で”どうぞ”と合図を送って歩行者に渡らせる」「ライトを点灯させる」「クラクションを鳴らす」などの合図を送るはずである。

最低でもちゃんと歩行者とアイコンタクトを取ろうとする。それがマナーというものだ。

しかし、あの自転車サインバイザーおばちゃんは、まったく意志が伝わってこない。

だから歩行者を不安にさせる。

あれ、止めてくれないかな?


ガッチャマンでさえ、ちゃんと透明のサンバイザー(?)で自分の目を晒しているのである。

自転車サンバイザーおばちゃんに猛省を促す。

イメージ 2


さて、今、僕は職場で商売相手の男性と向かい合っている。

相手は20代後半、やや小太り、メガネにサラサラヘアーの青年だ。

が、僕はさっきから彼の髪がうっとうしくてしょうがない。

彼の少し長めの髪が、メガネにかかっているのである。

しかし彼はそれを気にするでもなく、

眼鏡越しに、いや、さらに前髪越しに僕のほうを見ながら説明を続ける。

「こいつ・・・鬱陶しい・・・・」

僕は大きなはさみでそいつの前髪を真一文字にジョキジョキ切ってやりたい衝動に駆られた。


ちなみに僕はくせっ毛なので、髪の毛を伸ばしたことはほとんどない。

髪が耳にかかるのがいやだし、前髪も基本上げている。

髪を切った後のツンツンヘアーが大好きだし、1ヶ月ぐらい経って髪を切る直前のもわっとした感じが嫌だ。

アバターはきれいな6:4分けになっているが、実際はあんなにきれいに分かれないし、もうちょっと短い感じだ。

特に邪魔だなと思うのが、自分の前髪が垂れているときだ。

おでこにサワサワ触れているのも嫌だし、そこまで伸ばしたことはないけれど、目に髪がかかるなんて考えられない。

すごく邪魔だと思うし、目にも良くないだろう。

だから僕の前髪は基本上がっている。


で、この感覚は他人に対しても適用されるようで、

僕は前髪を目の前に垂らしている人が気持ち悪くてしょうがない。

なんか、他人の髪なのに、自分の目の前に髪の毛があるような錯覚さえ覚える。

あの、前髪越しに僕を見つめようとする奴(特に男)って、どういう神経しているんだろう?

結構”失礼”な感じにも受け取れるのは僕だけなのか?

時々、女性でも髪の束が目にかかっちゃってる人がいるが、そんな時は他人の髪でも払ってあげたい衝動に駆られる。

目の前に垂れるたびに、その髪を払ってあげたい。

なんなら後ろで縛ってあげたい。

本人が希望するなら後ろ手にして縛ってあげてもいい。

また、時々女性で、前髪をまつ毛の高さで真横に切りそろえている人もいる。

あれもダメ

なんかああゆうのを見ているだけで、自分の目がかゆくなる。

とにかく、前髪野郎はなんとかしてくれ。


そんなこと思っている間に、商売相手の説明は終わったようだ。

はいはい、ご苦労さん。

あんたとは仕事したくないよ。

イメージ 3

イメージ 4


さ、仕事は終わり終わり。

僕は電車に乗って帰途に着く。

あいにく席は埋まっていたが、僕はつり革につかまりながら、目の前に座っている人が途中の駅で降りてくれることを願った。

ぐっすり寝ている奴はおそらくこのまましばらく乗り続けるやつだから希望はもてない。

ゲームや文庫本に熱中しているやつも、経験上、希望薄だ。

「そろそろかな?」「もう着くかな?」と落ち着きなく外を見ているようなやつがいればベストだが、僕の目の前のやつは・・・

正直、まったくわからない。

男か女かさえもわからない。

だって、こいつ、ニット帽を深くかぶって、まったく目が見えないんだもの。

「なあ、お前なんなん?お前なんなん?」

僕は(心の中で)悪態をついた。

「何それ?アイマスクの代わり?果てしなく不気味なんですけど!」

どうやらそいつの隣りに座っているおじさんもそれを感じているらしく、

なんとなく不気味なものを見るような蔑んだ目でチラ見した。

指のカサカサ具合からして、アラフォーって感じだ。

女か?

起きてるのか?寝てるのか?どっちや?

僕はだんだんとイライラしてきた。

イメージ 5


これって、僕が理不尽なんだろうか?

他の人って、こういう目を出さない人に対して何も感じないのだろうか?

僕が必要以上に細かくて小さい男なんだろうか?


すると目の前のやつは不意にニット帽の先をちょっとつまみ、引っ張り上げた。

が、立っている僕からはまだこいつの目は見えない。

蒸れてしまったので空気を入れ替えているのか、はたまたニットの隙間から車内の様子を足元から伺おうとしているのか。

僕が心の中で「死ね死ね死ね死ね・・・」と念仏のように唱えていると、僕の思いが伝わったのか、そのニット野郎はニット帽をグイッと上げ、正体を現した。

それは細身の幸薄そうなおばさんだった。

おばさんは眠そうに手のひらで目をこすり、そしてゆっくり息を吐いてまたニット帽を目深にかぶって眠りについた。

僕は「永遠に寝てろ!」と捨て台詞を吐いて電車を降りた。


最近、連立政権がバラバラだとか、オバマ大統領のノーベル平和賞はおかしいとか、CO2の削減の話になると急に途上国の立場をとる中国はおかしいとか、

なにかと大きなニュースが話題になっているが、

僕はもっと「目を出さないやつの増殖」とか、「ドラクエで学校を休もうとする先生のCM」とか「川島海荷は男顔」とか

世の中にはもっと考えなければならないことがいっぱいあると思うのだが・・・

イメージ 6