2月3日
僕は成田山にいた。
節分であるこの日、仲間とともに生まれて初めて豆まきを見に行こうという計画に乗ったのだ。
節分なんて、実家で小規模でやったのを覚えているぐらい。
商売をしていた我が家は、夜になって営業が終わると家の中はもちろん、店の中や倉庫にいたるまで豆を撒いた。
豆を撒くとき、鬼が逃げる道をわざと開けておかなければならないので窓やシャッターを開けるのだが、その時に外から入ってくる風が子供心に妙に寒かったのを覚えている。
僕が子どもの時は恵方巻なんて誰も知らなかった。
僕が始めて恵方巻の存在を知ったのは、多分15年くらい前。
「な、なんでそんなことを?それ、何がおもしろいの?」とパニックになったことを覚えている。
僕だっていまだに「一点を見つめながら無言で太巻き一気食いして何がおもしろいの?」という感じだもの・・・。
で、節分の時にお寺の境内から俳優や力士、プロレスラーなどが豆を撒いているのをテレビで見たことがあるが、実際に行ったことはなかった。
僕は人ごみが嫌いで、初詣とか花見とか、人がたくさん集まるところは苦手なのだ。
が、今回、成田さんへお客さんを連れて行くというのが仕事であるので行かざるを得なかったのだ。
僕は一緒に行く同僚に計画・案内の全てを託し、後ろからてくてくついていくだけにした。
僕らが行く成田山は毎年節分になると有名人が豆を撒くのだが、必ずニュースで取り上げられるくらいの名所らしい。
人出予想は4万5千~5万人という。
が、なんと直前になって、それまで毎年参加していた朝青龍が暴行事件で謹慎するため、参加しないことがわかり、
せっかく行くのにねぇ~・・・・。
で、僕は一日に3回あるうちの2回目(1時から)の豆まきを見たのだが、結局この二人の不参加が表明されたためか、集まったのは予想をはるかに下回る1万人程度。
ま、それでもかなりの人数だったので、境内に近づくことはできず、有名人が投げる豆も届かないくらい。
有名人もだれが来ているかはよく見えなかったが、やはり一番目立っていたのは関脇の把瑠都
いやはや、力士ってやっぱりデカい!
そして貫禄たっぷりなのである。
遠くからでもはっきり見えた力士の姿。
もし僕が少年の頃にこれを見ていたら力士を目指してたな。
が、バルトは撒くための豆をお茶目に食っちゃうし、山本山は自分で歩けないくらい太っていて、しかもやっぱり豆を食っちゃう。おそらく山本山は本当に腹が減ってたんだと思う。こいつはきっとバナナを置いた落とし穴でも簡単に引っかかると思う。
大人の目から見ると力士はかわいい。
この宮迫さんがめちゃめちゃカッコよかったのだ。
よくアホな女が芸能人を生で見て「テレビで見るより実物の方が全然カッコいい!!」なんて言っているが、あれってあながちうそじゃないかもしれない。
生の宮迫さんは本当にカッコよかった。
ま、宮迫さんの周りで豆を撒いていたのがジジイとババアばかりだったのもあったが、それでも一際目立っていたな。
あとで調べたら賠償美津子さんとかもいたらしいのだが、おそらくよっぽどテレビが好きな人じゃなきゃ、把瑠都、香川、宮迫以外の人は認識できないと思う。
当然、宮迫さんに声援が飛ぶのだが、宮迫さんは周りの人に使ってか、はたまた大河ドラマの出演者としてきたからなのか、あまり大きなアクションを見せない。
ちょっと手を振るだけだが、それでも「キャー!」という歓声が沸く。
が、成田山はものすごく警備が厳しく、ちょっとでも観衆の中で騒ぎが起こるとすぐに警笛が鳴り、「豆まきを中断します!」という放送が流れ、豆まきを止めてしまう。
とにかく豆を取るために観衆が押し合いになったり怪我をしたりすることに過敏になっており、結構興冷めなのだ。
おそらく宮迫さんら、ゲストにも「あまり煽るな」という注意があったのかもしれない。
そこで宮迫さんは、周りのゲストや警備員に気づかれないように、ごくごく控えめに「宮迫です!」を披露!
またしても「キャー!」という歓声。
スターなのだ・・・。
そんなこんなで、二度と行かないとは思うが、意外におもしろかった成田山の豆まき
しかし心残りは朝青龍が来なかったこと。
「ああ、実物を見てみたかったな」
と思った翌々日。朝青龍は引退を表明した。
会社から定時で帰り、夕方のニュースを見た瞬間だった。
思わず言葉を失った・・・・・・・。
これが僕の感想だった。
確かに横綱として、また暴行事件を起こした者として責任は取らなければならないだろう。
が、引退させることはないじゃないか!
僕はせいぜい出場停止か優勝取り消し、減俸ぐらいだと思っていた。
まさか朝青龍が辞めるなんて考えもしなかった。
なんか会社で失敗した部下を責めたあとで「じゃ、会社辞めます」なんて言われた上司の気分だ。
「ちょ、ちょ、ちょっと待ちたまえ!何も辞めることはないじゃないか。僕はね、君が憎くて怒っているわけじゃないんだよ。君に期待しているから厳しく言ってるだけなんだよ。早まっちゃいかんよ」
そんなことを言いたい気分だ。
「親方日本」に甘えていつまでも古い体質にしがみつき、それに反対するものは許さない。
旧態依然としてシステムを変えることができず、時代の流れに取り残された滑稽な組織。
そんなヤツラから見たら、朝青龍は目障りの極みであったに違いない。
また、朝青龍の引退に関して、街の声も意外なほど冷淡だ。
「しょうがないですね」
「好きな力士だったので残念ですね~」
「好きな力士だったので残念ですね~」
なあ、みんな、本当にそんなもんなのか?
朝青龍という本当に強くて、見ているものを興奮させるヒーローがいたから相撲人気は続いたのだ。
幕内優勝を飾ったばかりの横綱の引退って・・・・悔しすぎるだろう。
朝青龍は現在、29歳。
日本国籍を取得していないとかの理由で相撲会には残れないそうな。
よって日本でタレント、帰国してモンゴルの国会議員、モンゴル相撲の力士など、今後の道を模索していくことになるが・・・・・
今、手をこまねいて朝青龍を見ているのがプロレス団体、格闘団体である。
あの力、あの運動神経、あの気迫、そして横綱のブランド
朝青龍よ
「この道を行けばどうなるものか。あやぶむなかれ。歩まずば道は無し。踏み出せばそのひと足が道となり、そのひと足が道となる。迷わずいけよ、いけばわかるさ。」
アントニオ猪木が好きな一休和尚の言葉だ。
がんばれ!朝青龍。僕はあんたの戦う姿をまだ期待している
モンゴルの人の家族を思う気持ちは日本人の想像以上である。
モンゴルの人の心は温かい