父「なあ、娘よ」
娘「なあに?お父さん」
父「お前は将来何になりたい?」
娘「私はね、宇宙飛行士になりたい!」
父「おっ!流行りものだね。どうして宇宙飛行士になりたいんだい?」
娘「だって、宇宙飛行士はおもしろそうなんだもん」
父「うん。そうだね。ふわふわ浮いていてね」
娘「そうそう。この前の、日本人初のママさん宇宙飛行士さん。いろんな意味で浮いてたわ」
父「これこれ、そんなこと言うもんじゃない。あの人は超エリートなんだから」
娘「そうなの?」
父「東大の大学院を出てるんだぞ」
娘「うわ~さすがね。」
父「そうだろ。しかも年収は1600万程度と言われてるんだよ」
娘「そういう肩書きに弱いところがさすがパパよね」
父「そこかい!それよりも、宇宙飛行士って大変な仕事なんだよ。できるかな?」
娘「うそ。そんな風には見えなかったわよ。」
父「?」
娘「だって、手巻き寿司作ったり、下手な琴を演奏したり・・・」
父「あれは仕事じゃないよ。」
娘「じゃ、何?」
父「あれは・・・パフォーマンスだよ」
娘「パフォーマンスにしてはクオリティが・・・。あの琴だったら弾かないほうが・・・」
父「そういうことを言わないの!宇宙だからいいの!」
娘「あれだったら私の”猫ふんじゃった”のほうが・・・」
父「宇宙だから演奏が難しいの。たぶんだけど。」
娘「よくあれを披露する気になったなーって。あたしだったら恥ずかしくてとてもじゃないけど・・・」
父「もう許してあげて!あれは余興だからさ」
娘「あの着物を着て手巻き寿司ってのもどうかと・・・」
父「なんでよ。いいじゃない。」
娘「なんで着物かな?と。宇宙服の上に着物を羽織ってどやねん、と。」
父「日本人らしくていいじゃない!」
娘「宇宙で日本人・・・NASAで訓練して、着物で日本をアピール・・・ふ~ん」
父「あまり深く考えるなよ。サービスだよ」
娘「つまり・・・GEISHAみたなもんか」
父「・・・ちがうと思うけど、もうそれでいいよ」
父「お前はそれだけで宇宙飛行士になろうと思ったのか?」
娘「いや、他にもシャボン玉を作ったり、変な俳句を作ったり、さかさまで記者会見したりと、楽しそうじゃない?」
父「・・・・いや、シャボン玉は作ったけど・・・」
娘「娘が幼稚園で放った『色つきのシャボン玉はできないのか』という疑問に答える母!美しいね~」
父「なんかおまえ、かわいくないな・・・」
娘「あの俳句も良かったね。『瑠璃色の 地球も花も 宇宙の子』。あれをニュース23で披露した時のスタジオの微妙な空気が良かったわ」
父「いいじゃないか。素人なんだからあれぐらいでも」
娘「でもわざわざ自分から披露してきたわよ。なんか、バラエティ番組で『あたしモノマネできます!』って切り込んでくる優木まおみの度胸と通じるものを感じたわ」
父「まあ、ね。周りの温かい目でかろうじて場が保てる、みたいな。」
娘「なんか自分の好きなことやりたい放題やって、毎日テレビにうつるんだったら私も宇宙飛行士になりたいわ」
父「いやあのね、大変なんだよ。あの人だって10年以上も訓練をして、やっとなれたんだから。」
娘「10年もあるなら寿司を握る修行とか琴を習う時間とかもありそうなものなのに・・・」
父「ねえよ!あ、ごめん。宇宙飛行士の訓練って本当に大変なんだから。それを乗り越えたんだからちょっとぐらい浮かれていても許してあげなよ」
娘「確かに、あの人、宇宙にいる間ずっと有頂天だったわよね。この2週間というもの、毎晩毎晩、あの人の浮かれてる顔を見ていたような気がするわ」
父「・・・そうね。あの人、絵になるからね」
娘「そうよ!それなのよ!向井さんの時はこんなに取り上げられなかったわ!日本で最初の女性宇宙飛行士だったのに」
父「でも、向井さんの旦那さんは話題になったぞ。インパクトが強くて」
娘「Y崎直子さんはなんだかんだ言って見た目が良かったのよね。だからマスコミが騒いだのよね」
父「倉田真由美みたいなもんだね」
娘「見た目が良くて、娘を持つ母親で、それでいて宇宙飛行士。」
父「・・・憧れの女性像ですな」
娘「夫は妻の夢を支えるために仕事を辞め専業主婦に!」
父「・・・女性大喝采」
娘「・・・妙なナルシスト感を漂わせる夫にネット上も大フィーバー!」
父「・・・・・・・」
娘「ただね、あたしが宇宙飛行士になる頃にはY崎さん以上のパフォーマンスが求められると思うの」
父「・・・・お前はまだ本質が見えていないのか・・・」
父「・・・・・・」
娘「あとプルシェンコばりの4回転も決めてみたいし、ちょっとコントみたいなこともしたいわね。野口さんに宇宙人の着ぐるみ着てもらって、宇宙船の外から覗いてもらうの。そんで『志村!うしろ~!』を演出したりね」
父「・・・野口さん、その頃もういねーぞ」
娘「あ~夢が膨らむわ!お父さん!あたし絶対宇宙飛行士になる!」
父「あ~あ~、頑張れ。っつーか、おめーもそろそろ結婚して家を出てけよ」
娘「なによ!宇宙飛行士になるためには家族の支えが必要なのよ!」
父「おめーY崎さんと同じ39歳だろが!現実見ろや!」
娘「わかったわ。じゃ、大人しく・・・・・国際宇宙ステーションの建設に従事するわ」
父「そっちかい!いい加減にしろ!」