俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

臭いパパ

娘「ねえ、パパ」

 

父「ん?なんだい?真奈美」

 

娘「どうしてパパの枕は臭いの?」

 

父「え?臭い?」

 

娘「うん。ママの枕は臭くないのに、パパの枕はなんか臭いの」

 

父「・・・そうか・・・真奈美にもついにこのことを伝えるときが来たか・・・」

 

娘「?どうしたの?」

 

父「いや、なんでもない。よく聞いてね」

 

娘「うん」

 

父「例えば、寒さに弱いお父さん犬と、寒さに弱いお母さん犬がいるとするでしょう?」

 

娘「うん」

 

父「その子供はどんな犬になると思う?」

 

娘「寒さに弱い犬」

 

父「そうだね。つまり、自分と似ている性質のオスとメス、あの~男の子と女の子が結婚して子供を産むと、体の弱い子供が産まれちゃうんだ」

 

娘「じゃあ、寒さに強いお父さんとお母さんが結婚すればいいんじゃない?」

 

父「たしかに寒さに強い子供が産まれるね。でも寒いのが好きでも暑くなると弱くなるかもしれないよ。」

 

娘「そっか」

 

父「だから、暑さにも寒さにも強い子供を産むためには、自分と違う性質の人と結婚するのがいいんだよ」

 

娘「そうね。パパとママは全然違うものね」

 

父「そうでしょう?」

 

母「パパは弱くてママは強い」

 

父「ママ!」

 

娘「でもそれとパパの枕がクサいのと関係があるの?」

 

母「ほら、最後までちゃんと教えてあげて」

 

父「うん、でね、人間も自分と全然違う性質(DNA)を持っている人と結婚して子供を産んだ方が、元気な赤ちゃんが生まれるんだ」

 

娘「うん」

 

父「だからできるだけ自分と似ている人、自分の家族とか親戚とかと結婚しない方がいい」

 

娘「へ~」

 

父「例えばね、どこか知らないところに、真奈美の他にパパの子供いるとするでしょう?」

 

母「フィリピンとか?」

 

父「え!?なんでフィリピン?」

 

娘「ママが言ってた。パパは仕事でフィリピンに行ったって」

 

父「あ、そうなの?あの~、でもね、フィリピンには仕事で行っただけで・・・」

 

母「・・・・・・」

 

父「うん、子供はいないよ」

 

母「子供“は”?」

 

父「いや、もちろん、奥さんもいないよ。フィリピンって・・・いやだなぁ、もう」

 

娘「そんなことより、続きは?」

 

父「あ、そうそう。例えばね、どこかにパパの子供がいるとするでしょう?男の子。で、その子はパパの子供ってしらなくて、真奈美と会って結婚したら大変でしょう?」

 

娘「うん、あたしタガログ語しゃべれないし」

 

父「フィリピン人じゃねーよ!あ、ごめん。」

 

母「大きな声出さないで」

 

父「うん。あ!そうだ、千葉のおじさんの子供いるでしょう?あの~~流星君」

 

娘「うん」

 

父「その~~あれだ、流星君と真奈美が結婚して子供を産んでも、元気が赤ちゃんは生まれないんだ」

 

娘「赤ちゃんはどこから来るの?」

 

父「というか、できれば流星君とは結婚しない方がいい」

 

娘「赤ちゃんはどこから来るの?」

 

父「だからね、その~、あれだ。真奈美の家族や親せきの男の子と結婚したくなくなるようにね、」

 

娘「ねえ!赤ちゃんは?」

 

母「答えてあげて」

 

父「え~?あの~じゃ、フィリピンから来るということで」

 

母「・・・」

 

父「今、大事なのは、なんでパパの枕がクサいかということだからね、赤ちゃんの話はまたいつかね」

 

娘「ふ~ん・・・・(泳いでくるのかな?)」

 

父「で、あれだ。真奈美がパパと結婚したくならないように」

 

娘「したくないけど。はじめから」

 

父「パパの赤ちゃんを作らないように!」

 

娘「絶対ないけど」

 

父「パパの臭いがクサく感じるように、できてるんだよ」

 

娘「どういうこと?」

 

父「つまりね、子供を作る相手としてふさわしくないと感じるように、娘は父親の臭いをクサく感じるようにできているんだよ」

 

娘「へ~」

 

母「知らなかった」

 

父「いわゆる加齢臭というものがあるでしょう?」

 

娘「カレー?」

 

父「いや、あの、お父さんくらいになると、ちょっとおじさんの臭いが出てくるんだよ」

 

母「耳の後ろからね」

 

父「その匂いはね、真奈美にはクサく感じるようにできてるんだ」

 

娘「ふ~ん。ママは臭くないの?」

 

父「ママは血がつながってないからね、臭く感じないんだ」

 

母「いや、臭いけど。モーレツに」

 

父「ママは大丈夫なんだよ。だからママはパパが好きになって結婚して、それで真奈美が産まれたんだ」

 

娘「そうか~。だからパパの枕は臭いんだ」

 

父「そう!だからパパがクサく感じるのは、真奈美とパパが親子だっていう証拠なんだよ!」

 

娘「なるほどね」

 

父「悲しいけれど、パパがクサいっていうことは、パパにとっては嬉しいことなんだ!」

 

母「じゃあなんで泣いてるの?」

 

父「う、うれしいからに決まってるじゃないか!」

 

娘「じゃあ、パパの息がクサいのも・・・」

 

父「親子だからさ!」

 

母「歯を磨かないからでしょう?」

 

娘「パパがタバコくさいのも・・・」

 

父「真奈美が近づかないように、タバコのにおいをつけているのさ」

 

母「金の無駄だよ」

 

娘「パパがお酒臭いのも・・・」

 

父「気のせい、気のせい!パパと真奈美が親子だからクサく感じるだけで、実際は」

 

母「臭い」

 

娘「パパの靴下が生ゴミみたいな匂いがするのは?」

 

父「パパと真奈美が親子だからさ!他の子だったらファブリーズの臭いがするよ」

 

母「消臭剤?」

 

娘「パパのおならがクサいのは?」

 

父「真奈美が近づかないように、スカンクみたいにしてるのさ。でも実際は臭くないんだ」

 

母「音がデカいほどね」

 

娘「パパのトイレの後、ゲロが吐きたくなるくらい臭いのは?」

 

父「親子だからさ!」

 

母「あたしは吐いたけど」

 

娘「じゃあパパがクサいと思ってるのはあたしだけなの?」

 

父「そうそう!本当は臭くないんだよ。ママなんていつもパパの脱いだ服の臭いをかぐでしょう?」

 

母「いっしょに洗濯したくないからね」

 

娘「パパは臭くないの?」

 

父「そう!実はいい匂いなんだよ!フォローランスの香りなんだよ!」

 

娘「でも私には全部クサく感じるのね」

 

父「え?」

 

娘「だからこれからはパパには近づかないことにするわ」

 

母「あたしも寝室別にするわね」

 

父「嫌だよぉ~~~~!」