それは金曜夜のこと。
満員電車に揺られ、帰途についていた僕は、ぼんやりと電車の中刷り広告を見ていた。
すると
「いつ何する?」
「みんなどうしてる?」
「これで安心!結婚準備ダンドリ」
「みんなどうしてる?」
「これで安心!結婚準備ダンドリ」
「損したくない人必見★」
「結婚式のお金、”かけて成功””削ってもOK"教えます」
「結婚式のお金、”かけて成功””削ってもOK"教えます」
の文字が目に留まった。
そう、僕が見ていたのは結婚情報誌『ゼクシィ』の広告だったのだ。
僕はこの、「結婚式のお金」「”削ってもOK”教えます」という文字にひどく惹かれた。
というのも、私事で恐縮だが、私の婚約者は外国人(現在は帰国中)
予定では彼女の国でと、日本でと、2回結婚式を行なうことになっている。
本人達は「結婚式なんていらないよね~」と言っているのだが、双方の親が許さない。
「お金がないのにどうやんだよ・・・」というのが、もっか悩みのタネであった。
これは『ゼクシィ』を買って勉強しない手はない。
本当はCMのように、彼女と二人で本屋で買うのが夢だったけど、この際仕方ない。
仕事疲れで死んだ魚のような目をした乗客でひしめき合う満員電車の中で、僕は目をキラキラさせながら
「あたし、『ゼクシィ』を買うわ!」
と心に誓うのであった。
駅に着くと、僕は早速本屋に向かった。
が、なんとなく嫌な予感がしていたのだが、案の定、『ゼクシィ』は女性誌のコーナーにあったのだ。
女性向け雑誌のコーナーはファッション誌を立ち読む女性客達で埋め尽くされていた。
その中に入っていって『ゼクシィ』を取り出すのはなかなか勇気がいる。
だってあれを買おうとする男ってだけで
「ふ~ん、あのおじさん、近々結婚するんだ~。へ~」という感じで見られるに違いない。
なにが哀しくてそんなプライバシーをさらけ出さなければならないのか!
(ま、ブログでは思いっきりさらけ出しているのだが)
(ま、ブログでは思いっきりさらけ出しているのだが)
しかもお目当ての『ゼクシィ』がこれまたとんでもない存在感を放っているのである。
厚さが約10センチ!!
他のどの雑誌よりも分厚く、電話帳2冊分はありそうなのである。
よく見ると、雑誌の間に何か挟まっている。
どうやら”おまけ”がついているようなのだ。
噂には聞いていたが、女性誌は販売促進策としてブランドのスカーフなど、付録をつけているものが増えてきたらしい。
(ちなみに韓国でも雑誌に洗剤やらお菓子やら、雑誌スポンサーの商品がついてくるらしい)
「あんなもの、オレいらないのにな・・・」と思いつつ、僕は女性客の切れ間をうかがっていた。
なるべく目立たないようにあの大物を確保し、レジまでもっていかなくてはならない。
僕は旅行誌『じゃらん』を立ち読みしながらじっとタイミングをうかがっていた。
そして背の低いOKらしき女性がさっと『Vivi』を戻して立ち去ろうとした瞬間、僕はつかつかと近寄り、『ゼクシィ』を取り上げたのである。
が、しかし!
右手にのしかかるものすごい重量感に、僕は思わず『ゼクシィ』を落としそうになった。
これは大げさに言っているのではない。
本当にものすごい重さなのだ。
僕は「嘘だろ?これ、広辞苑より重いぞ・・・」と思った。
女性誌はカラー写真が多いので総じて重いのだが、『ゼクシィ』は群を抜いていた。
僕はそれを両手で抱えながらレジまで持っていくと、店員さんはさっとレジを打ち
「重いので、袋を二重にしておきました」と気を使ってくれた。
紀伊国屋の藍色のナイロンの袋が僕の右手の指にザックリと食い込む。
「これって基本的に女性が買うものだろ?」
「これを普通に持てる女性って結婚相手見つかるのかよ」
とにかく、「近年こんな重い買い物袋持ったことない!」ってぐらい重かった。
うちに帰って体重計に載せてみたら
最初、「今度彼女の国に遊びに行くときにお土産に持っていこう」と思っていたのだがやめた。
確実に超過荷物になる。
お土産は彼女のリクエストどおり「おかめ納豆3pack入りを5セット」だけでいいや。
さて、肝心の中身なのだが、これがあまりの内容の薄さに思わず笑ってしまった。
いや、内容が薄いというのは失礼かもしれないが、その内容の9割が結婚式場の紹介や結婚指輪のカタログ、2次会会場や写真撮影業者の案内
つまり、これは結婚関連業者のカタログなのだ。
僕が知りたかった「結婚式の経費を切り詰める方法」みたいな特集記事はほんのおまけ程度
メインはとにかく企業広告なのだ。
まあ、結婚式場は最低5つは回って見積もりを出してもらったほうがいいとはいうが、
女性ってのはこういう雑誌を見てある程度の”当たり”をつけるのだろう。
にしても、僕は今回初めて知ったのであるが、『ゼクシィ』は月刊誌なのである。
こんなのを毎月買う人っているのだろうか?
こんなリピーターが望めない雑誌もないと思うのだが。
しかも重過ぎて読みにくいし。
最後までパラパラめくった僕は、ここでもう一つの過ちに気づいた。
載っている結婚式場が東京のものばかりなのでおかしいなと思っていたのだが、最後までめくってみて、やっとそれが「首都圏版」であることに気づいたのだ。
ちなみに僕は神奈川出身で、結婚式も地元を希望しているので、今回買った『ゼクシィ』は何の役にも立たないのであった。
だからせめてもとブログのネタにしたのであるが、これだけの重い買い物をして失敗したにも関わらず、それほど悔しい気持ちにならないのは
ではなく、値段がたったの500円だからだ。
これだけのボリュームで500円って!!
一瞬、「これで採算とれるのかよ!」
「いくら雑誌不況とはいえ、どんだけおまけをつけんだよ!」とも思ったが、
よくよく考えてみたらこの雑誌に載っているブライダル関連企業は自分んとこの紹介記事を書いてもらうためにしこたまスポンサー料を払っているはずである。
もともと悪どい商売をいっぱいやってお金をしこたま稼いでいるブライダル業界
そこからの大量のスポンサー料を集めているんだから、雑誌なんてただで配ってもいいくらいだ。
「どこの出版社だよ」
と思ったらこれがまたRECUIT(リクルート)
企業から広告収入を集めることにかけては誰にも負けない会社だ。
「神奈川はいいね。富士山の見えるところで結婚式をするなんてロマンティック!」という彼女
よし、『ゼクシィ』に載ってないような穴場を見つけてやるからな!
楽しみにしておれよ!
付録はちっちゃいフォトアルバムと別冊の雑誌4冊、そしてエコバック。全然エコじゃない!
*今月のゼクシィ、見事に立ちます!