その昔、志田未来という女の子がいた。
いや、今でもいるんだろうけど
とにかく、”普通の女子中・高生”を演じさせたら日本でナンバー1の女優さんだった。
代表作「14才の母」では、日本中を涙で包み、アジアでも放送されて話題となった。
志田未来はいかにも「不幸」が似合う女優さんで
「小公女セイラ」では裕福な家庭で育ったお嬢様から一転して不幸のドン底に陥る少女を演じ、
視聴者としては、なんとも同情せずにはいられない
「守ってあげたい」「不幸な」「いたいけな少女」
志田未来は視聴者にそんなイメージを抱かせる天才だった。
志田未来の作り出す中・高生像は、本当にどこにでもいそうな雰囲気を醸し、なおかつ保護せずにはいられないような、寂しんぼうのうさぎのような弱々しさを漂わせていた。
もっとも、その後ネット上で「天狗」「生意気」「嫌い」などの悪評が立ったのだが・・・

そして2009年以降、
川島海荷は1994年生まれの16歳。
現在CM6本を抱えるほか、ドラマ、映画に引っ張りだこの超売れっ子である。
まさにいま、「純粋な」「純情な」女子高生を演じさせたらナンバー1の女優さんである。

http://www.youtube.com/watch?v=rYh2hq4bPEc
http://www.youtube.com/watch?v=WjGK_jmm8CI
http://www.youtube.com/watch?v=KDSkoHVz3PI
http://www.youtube.com/watch?v=WjGK_jmm8CI
http://www.youtube.com/watch?v=KDSkoHVz3PI
いつからだろうか?
我々視聴者が、CMやドラマにこうした女優さんを求め始めたのは。
川島海荷のポジションは誰にも代え難いものがある。
たとえばAKB48あたりに川島海荷と同じ歳の子がいたとする。
しかし、彼女らでは、視聴者が望む普通の中・高生を体現することはできない。
彼女らは美少女すぎる。
かわいすぎるがゆえに、生活感がなく、現実感がなく、親近感がない。
もちろん私生活では中・高生であり、家族もいる普通の女の子なのかもしれない。
が、テレビに映るアイドルは、やはり何をどうしてもアイドルなのだ。
だからなんとなく「芸能人的ないやらしさ」を感じる。
売れるため、媚びを売り、事務所のプッシュがあり、かわいい女の子を演じる。
彼女らを見ている男性は彼女らのかわいさ・美しさに、鼻の下を伸ばし、萌え、性的興奮すら覚える。
しかし、これでは”普通”を体現することはできない。

では川島海荷はどうであろう?
川島海荷に鼻の下を伸ばす男がいるだろうか?
川島海荷に性的興奮を覚える男がいるだろうか?
おそらく答えは”否”である。
が、それはもちろん、川島海荷が不細工だとか、魅力がないという意味ではない。
むしろ、川島海荷にはテレビ的な魅力に溢れている。
川島海荷には強烈なファンがいない代わりに敵もいない。
強烈なかわいさがない代わりに、何度見ても飽きない。
だからこそCMに使いやすい。
川島海荷にはいろいろな意味でいやらしさがない。
そしていろいろな意味でアクがない。
だからこそドラマに使いやすい。
普通の女子中・高生として、主役の役者さんに振り回される女の子の役が実に似合う。
そして振り回されるからこそ、守りたくなる。
だからこそ、無邪気な役も、不幸な役も演じ分けることができる。
いや、演じ分けるというより、見ているものがどちらにも染めることができる。

我々善良なる視聴者がもとめる”普通の小学生””普通の中学生””普通の高校生”なるもの
それは実はかなり特殊な「純粋」「純情」「無邪気」なものであり、現実ではごくごくまれにしか見られないものである。
が、我々は常にその理想を抱き、ブラウン管の中の女優さんにそれを求め、押しつける。
川島海荷だってうんこはするし、一人エッチだってするだろう。
しかし川島海荷はそんなことをおくびにも見せず、我々の期待に応え続けている。
そしてイメージを守るため、極力露出を控え、その役目を卒業するまで輝き続ける。
川島海荷は今、もっとも輝いているのは、もしかしたらろうそくの火が消える直前に燃え上がる炎の状態だからなのかもしれない。
ここ最近、志田未来が出てこないのは、成長して大人となり、少女を演じるのが難しくなったからというもの以外に、早くして売れてしまったために天狗となってしまい、監督の怒りを買ったと聞いたことがある。
川島海荷が20代、30代と女優を続けるかどうかはわからないが、できるだけ長く、今のイメージを保持し続けてほしいものである。
