暑い・・・・
最近、本当に暑い・・・
朝から気温30度を超えるような日が何日も続き、駅まで歩いていくだけで汗が滝のように流れる。
このまま会社なんて行かないで、涼しい喫茶店で日長一日過ごしたい。
そんなことを考えながら、駅まで続く坂道をてくてくと上っていく。
すると、駅前の公園に、小学生が集まっている。
「ああ、小学生はもう夏休みか。いいな~」と思ってみていると、どうやらそれは、近くの団地の子供たちで、夏休み恒例の「朝のラジオ体操」に参加する子供たちだった。
懐かしいな。
朝のラジオ体操!
あれに参加すると午前中眠くなって、昼飯後の午後も眠くなって、夜はテレビ見まくって、結局宿題ができなくなるという、なんとも悪質な代物だったな。
しかし時間は朝7時半。
僕の記憶では、もうちょっと早い時間にやっていたと思ったのだが、僕の記憶違いか?
子供たちは首からスタンプカードをぶら下げ、野球帽をかぶり、元気に集まっている。
昔も今も変わらぬ光景。
いいね。
電車の中で僕は少年時代のことを思い出していた。
少年時代。
僕は、それはそれは気の小さい、臆病な少年だった。
僕が怖かったもの。
それは「あなたの知らない世界」という怪談番組
夏休みになると毎年お昼に放送されていた名物番組だったが、今もやっているのだろうか?
あの時間帯に見るのは夏休みの児童・生徒ぐらいだと思うのだが、子供に見せるにしてはリアルで、ハンパなく怖かった。
あれは昼に放送していたからまだ正気が保てていたが、夜に見せられたらまず小便に行くことはできなかっただろう。
当時、どんな怖い話があったか、思いだそうとしたのだが、どうしても「最後にどうなったか」が思い出せない。
おそらく怖くて最後までは見られなかったのではないかと推測される。
それほど「あなたの知らない世界」はハンパなかった。
今、あんなのを昼間に放送したら「子供が怖がってトレイに行きたがらない!」なんて苦情が殺到し、あっという間に放送自粛となるだろう。
つまらない世の中だ。
僕が怖かったものその2
それはアニメ『トムソーヤの冒険』に出てきたインジャン・ジョー
こいつもハンパなく恐ろしかった。
風貌もごつかったし、いかにも「悪い子としてるぜ」って感じの、悪い大人の雰囲気がビンビンだった。
当時、トムソーヤと同じくらいの年齢だった僕は、とにかく目を合わせたくない、話しかけられたくない”怖い大人””危ない大人”
それがインジャン・ジョーだった。
お話の中で
ある日、トムソーヤと友人のハックが夜のお墓に冒険にいく。
そして偶然、インジャンジョーの殺害現場を目撃してしまう。
インジャンジョーは、自分の殺人の罪を犯行当時ベロベロに酔っぱらっていたマフポッター老人にかぶさて、自分は助かろうとするのだが、裁判の途中にトムソーヤに「殺したのはインジャンジョーだ!」と告げられてしまう。
するとインジャンはそのまま裁判所から逃亡し、行方不明になってしまう。
時はたって、トムソーヤとハックがまた冒険でもしようと、洞窟の中を探検していると、そこで偶然、逃亡中のインジャンジョーに遭遇してしまうのだ!
そりゃ~びびったさ!
だって、絶体絶命だもの!
ただでさえ怖いインジャンを、トムは告発してしまったんだから!
インジャンは「あのくそガキ~~!!」と絶対にトムを恨んでいるはず!
そのインジャンに洞窟の中でばったりあってしまったんだもの!
そりゃちびったさ。
いや、本当の話、ちびったさ!
「ジョロっ!」と出たよ。
後にも先にも、恐怖でちびったのなんてあの時だけだ。
心臓が止まりそうになったよ。
結局インジャンはトムを見逃してやるのだが
洞窟でばったり会ったときの恐怖は今でも僕の胸に焼き付いている。
今でも、暗い夜道を歩いていて、ばったりインジャンに出会ってしまったら・・・・
僕はちびるな・・・・
僕が怖いもの、その3
それは虎ハンター小林邦明である。
その昔、1980年代
プロレスがまだゴールデンタイム(金曜の夜8時)に放送していた頃
一人のスーパースターが誕生した。
その名は”タイガーマスク”
当時のタイガーマスクは、それはそれはすごかった。
本当にアニメのように、マンガのように、ぴょんぴょん飛ぶんだ。
全身がゴムのような、バネのような、
とにかく重力を無視したかのようにリングの内外を軽やかに飛んだのだ。
当時の少年達はタイガーマスクに夢中になった。
小学校の教室の後ろにあるロッカーからタイガーマスクの真似をして飛び降りて怪我をしたやつなんてのも別段、珍しい話ではなかった。
タイガーマスクは子供達のアイドルであり、
信じられないかもしれないが、今で言うイチローや本田圭祐のような、少年達の憧れの対象であった。
しかし、僕らのアイドル、タイガーマスクに対し
たびあるごとにそのマスクをはがそうとする男がいた。
それが「虎ハンター」小林邦明である。
小林邦明は、実力的にはタイガーに劣るものの、試合の終盤、やけになってタイガーのマスクを破ろうとするのである。
子供心に、あのハラハラ感と言ったらなかったな。
わが家では夕食時にそのプロレスを見ていたんだけど、
小林邦明がマスクに手をかけると、飯どころではなかった。
「あっ!あっ!」と甲高い声を上げて、本当にあせっていたもの。
当時、何も知らない聖らかな心の持ち主だった少年(僕のこと)は
ワールドカップ日本代表を応援する熱狂的なサポーターのように
本気でタイガーマスクのピンチに寿命を縮め、ピンチを回避すると胸を撫で下ろしたのである。
最終的には「タイガーマスク VS 小林邦明」の試合が組まれるだけで胃が痛くなり、
放送日までの一週間が憂鬱でならず、
小林邦明の顔を見るだけで嫌悪感が生まれ、鼓動が速まり、顔が熱くなった。
小林邦明がちょっとタイガーのマスクに触れるだけで「やめろ!」と叫び
マスクのヒモをほどいたり、マスクの目の部分から破ろうとしたりしようものなら
テレビ画面に台拭きを投げつけ、隣りで飯を食っていた父親を殴るようになったものだ。(母親にはこっぴどく怒られたが・・・)
今思えば、なんとも多感な少年であった。
そんなことを思っているうちに、電車は目的地に着いた。
冷房地獄のあとは、会社までの灼熱地獄
さあ、夏が始まる・・・