柔道世界選手権2010東京
大会3日目は金メダルラッシュだった。
いや~、興奮した。
日本柔道はたいへんいい方向に向かっているな~と実感した。
「100個目のメダル」とマスコミは大騒ぎしているけど、選手にとって興味があるのは自分が勝ち取るべき1個の金メダルだし、別にそれが世界記録になるわけでもないんだから、大騒ぎするのはやめてほしいね。
今日は100個目の金メダルを”単なる通過点”にしてくれてよかった。
明日からはもう大騒ぎしなくなるだろう。
さて、僕の注目は女子63キロ級の上野順恵
昨年、この大会で優勝した現世界女王
昨年の大会での戦いはまさに圧巻だった・・・。
得意の大外刈りがおもしろいように決まり、全ての試合で一本勝ちを収めた。
本当に「強さ」を感じさせた。
あれからテレビであまり柔道が放送されなかったので、1年間姿を見ることがなかったが
いよいよ1年ぶりに”あの”上野の柔道が見られる。
それはそれは楽しみにしてたのだが・・・
上野はまるで別人だった・・・。
もちろん、現世界女王として徹底的にマークされていたというのはある。
にしても・・・・
大外刈りを警戒された上野は、本当に不器用な感じ
かろうじて優勝はしたものの、準決勝・決勝も延長戦でもポイントがとれず、旗判定。
それも結構微妙な判定だった・・・。
もちろんそれでも勝つのはさすがなのだろうけど、少なくも昨年のように「もっと彼女の試合が見たい!」というふうにはならなかった。
オリンピックは苦労しそうだぞい・・・
一方、僕が心奪われたのは女子57キロ級の松本薫
この娘、プロフィールからおもしろい。
柔道は6歳のときに始めたが、小学生の松本薫に対し、父は「虫みたいな柔道をするな・・・」と言い放った。
それにカチンと来た松本は以後、攻撃柔道に徹する。
そのあまりに非常な攻めから「殺し屋」と呼ばれたり、
相手を狙う凶暴な目つきから「オオカミ」と呼ばれたりしたが・・・・・なんとも言いえて妙なのである・・・
女性でこれだけ闘争本能をむき出しにする人も珍しい。
松本薫の表情からは、なんとも「野生」を感じさせる。
狩りの本能とも言おうか?
が、品位なんてものをいつまでもガタガタ言っていた古株に対し、
やる気があるんだかないんだかわからない日本人力士に比べたら
朝青龍の闘争心は実に魅力的だったのである。
「相手が立っている限りは攻撃する。相手を伏せるまでは決して気を許していけない。」
朝青龍は本能でそう感じていたからこそ、何度注意されてもダメを押してしまったのである。
そして松本薫もまた
朝青龍と同じ、闘争本能の匂いがプンプンするのである。
なんとも危険な色気
「こいつ・・・やばいな・・・クレイジーだ・・・」
そう思わせるギラギラしたものを感じさせる。
それが松本薫である。
昨年は2度対戦して1勝1敗
今年も2度対戦して2勝している相手である。
お互い手の内は知っている。
モンテイロ選手もなかなか強い。
長身から繰り出す足払い、一瞬の背負い投げや、投げを防がれて足を取る技もある。
また、日本人相手だとちゃんと組んでくれない外国人選手が多い中、
モンテイロ選手は割とちゃんと組んでくれる。
正々堂々、なのだ。
が、この日の松本はマジヤバかった。
とにかく闘争心むき出しなのである。
モンテイロの投げが場外付近で不発に終わり、一瞬気を抜いた瞬間、襲い掛かろうとする松本!
モンテイロは一瞬びびってすぐに構えたのだが、内心「な、なんだよ・・・こいつ・・・」と思ったろう。
今回の大会を見ても、審判の「待て!」がかかる前に気を抜いている選手は結構いる。
・・・甘い!!
戦う本能を持っているやつには暗黙のルールなんてものは通じないのである。
立ち技では両者はほぼ互角の戦いを見せるモンテイロであるが、松本は寝技でも強い。
押さえ込みももちろんだが、腕ひしぎ逆十字で極めようとする。
”クラッシャー”なのだ。
モンテイロとしては寝技では勝ち目がないので、立ち技で勝負したい。
よって、審判が「待て!」と言ってくれるまで丸まっているか、場外に逃げるかしないといけない。
が、当然松本はそれを許さない。
なんとか寝技に引きずりこもうとするが、モンテイロはこれまたはいつくばるように場外へ逃げる。
また倒れたモンテイロを逃すまいと場内に引きずり込む松本
こんな攻防が繰り返される。
海外の試合ならモンテイロに間違いなくブーイングが出ただろうが、日本人は優しいのである。
いや、むしろサディスティックなのかもしれない。
本来なら露骨に逃げるモンテイロに指導の一つや二つやってもいいところだが、
日本人はむしろ松本がモンテイロを仕留めるところを見たいのである。
「逃げんじゃねぇコルァ!!こっちこいやぁ!!」
とばかりにモンテイロに襲い掛かる松本の気合の入った表情
久しぶりに柔道を見てゾクゾクしたな。
もちろん、心・技・体が揃った、品位のある格闘家もかっこういいが、
最近、少なくなった”闘志を前面に出す格闘家”もまたカッコイイのである。
ああ・・・全盛期の北斗晶とかと戦わせたかったな・・・・
北斗晶との刺殺戦なんておもしろそう・・・。
あの松本薫のちょっと離れた釣り目
低くて長い鼻筋
その横顔は・・・・・どこかの戦闘民族を思い出させた