今回、彼女と『恋したらダンス』というミュージカルを見に行った。
韓国でも話題のミュージカルの一つで、ストーリーは一応あるのだが、とにかく若い男女が踊りまくる舞台らしい。
ちなみに彼女は映画が大好きで、ジャンルを問わず月に2回は見に行くのだが、舞台は割高なのであまり見ないという。
が、「どうせ(舞台を)見るならいい席じゃなきゃ意味がない」というポリシーを合わせ持つらしい。
今回、彼女と夜の公演を見に行ったのだが、自分たちのシートを見てびっくりした。
なんと最前列の真ん中。
最前列の真ん中!
みなさんはこの席をどう思いますか?
僕は即座に「うわ~・・・・最悪・・・」と思ってしまった。
僕は基本、感情の起伏を見せない男である。
テレビ、映画はもちろん、
ジェットコースターでもキャーキャー騒ぐことはないし、お化け屋敷なども「怖い」と思うと黙るタイプ。
ライブなどでも大声で叫ぶことはない。というか、ライブに行かない。
大声で騒いだり、踊ったり、飛び跳ねたりなんてしない性質(タチ)だ。
カラオケにも行かないしね。
どうしてもそういう場にいなければならない状況になったら、最後尾か、一番端で盛り上がっているフリをしてごまかすタイプなのだ。
その僕が最前列って!
最前列は役者の表情などがよく見えるということはあるが、基本、舞台全体が見にくい。
それに、この「恋したらダンス」という舞台は、汗だくで踊りまくるミュージカルらしいのである。
男の汗とかも飛んできそうなのである。
さらに、噂によると、ラストは皆、立ち上がってステージ上の役者と観客が一緒に踊って盛り上がって終わるらしいのだ。
う~む・・・・・屈辱・・・・
そして、なにが嫌かって、最前列は役者に絡まれる可能性がものすごく高いのである。
僕はソウルで、世界的に評価されている舞台をいくつか見たが、すべての舞台が例外なく「観客をステージに上げるミニコーナー」があるのだ。
これは恥ずかしい・・・
ステージにあがれば、基本、道化を演じなくてはならなくなる。
素人なのに、大勢の観客の前で笑われたり、拍手を送られたりしなければならないのだ。
また、ステージに上げられなくても、役者が急に睨んで目を合わせてきたり、舞台から水鉄砲の水をかけられたり、バケツに入った水をかけられる(かと思ったらバケツは空だった)というドッキリにひっかかったりもしなければならない。
例え、バケツが空だとわかっても、一応、大げさに怖がったり、びっくりするリアクションをとらなければ、他のお客さんが興ざめしてしまう。
最悪、個人的に絡まれなくても、役者が拍手を要求したらしなければならないし、
「イェ~イ!」なんて煽ろうものなら、拳の一つも上げながら「Oh!Yeah!」と返すのも礼儀。
「Say Ho~Oh!」「Ho~Oh!」
「Ho!Ho!Ho!」「Ho!Ho!Ho!」
「HeyHeyHo~」「HeyHeyho~」
なんてやりとりも社交儀礼としては必要だろう。
最前列はかくも面倒なのだ。
かくして始まった舞台、
主人公は幼なじみの少年2人と少女1人。
少年たちは少女に恋をし、お互い気を引こうと必死。
やがて3人は成長し、少年Aは不良グループのリーダーに
少年B(仮名:のび太君)は彼女に認めれたいと思ってはいるが、なにをやってもダメなまま。
そして静香ちゃん(仮名)は、怪しく激しいダンスミュージックの流れるクラブで、男たちの視線を集めながら、美しく成長していった。
で、この静香ちゃんがまた顔はKARAのメンバーにも入れそうな超美形なのだが、ヘソ出しの衣装からこぼれるおなかが、けっこう白くてポヨポヨ、なんとも締まりがない感じなのだ。
「あれ~?おかしいぞ~」と思っていると、隣にいた彼女が
「鼻がすごいよ。気持ち悪い」と耳打ちしてきた。
たしかに、プラスチックでつくったような、なんとも美しく、均整のとれた完璧な鼻なのだ。
正直、ダンスで言えば後ろで踊っていた女性ダンサーのほうが、パワフルでキレもよく、体も柔軟でダンスのバリエーションも豊富、
腹筋も割れていて無駄な脂肪がなく、いかにもプロのダンサーっぽかったのだが、
世の中は不条理だ。
主役にふさわしいのは、整形静香ちゃんのほうだったりするのだ。
*ちなみに主役の3人は日替わり。この写真の人は腹筋はきれいに割れているが、顔が・・・・
さて、心配した役者との絡みだが、僕の隣にいた彼女が水鉄砲をかけられそうになった(が、実際、水は油断していた後方の客へ)のと、ケーキの火を噴き消す(僕の時は素直に消え、2つ隣の女性の時は、何度吹いても消えないというドッキリ)もの、
あとは立ってダンスするのを躊躇したら役者に真ん前で睨まれたくらいだった。
隣にいた彼女は割とノリがいいので、「イェ~イ!」「キャ~!」と大声を出してくれ、僕は何とかごまかせた。
が、ここで緊急事態発生。
さっきから、僕のおなかがゴロゴロなり、肛門近くでマグマが活動を始めたのだ。
この舞台、あと何分で終わるんだろう?
おそらくあと10分なら気力でねじ伏せることはできると思うが、それ以上だと厳しい。
お話はもうラストに近いはずだが・・・・
最悪、トイレに行くにしても、最前列で立ち上がってトイレに行くのはなんとも恥ずかしい。
しかも、一番クライマックスで立ち上がるって、僕が他の客だったら信じられない。
一度出たらちょっと戻りづらいし、
しかも席と席の間の通路、さっきからけっこう役者が舞台から降りてウロウロするので、邪魔になるかもしれない。
ああ、でも大人として漏らすのだけは避けたいし・・・・というか、デート中にうんこ漏らしたら・・・・ブログに書かなきゃいけないし・・・・(?)
あ~ちょっと集中できなくなってきた・・・
え?立つの?ラスト?ラストだよね?
音楽が盛り上がってきた。
隣の彼女もノリノリだ。
僕も仕方なく、肛門を引き締めて、見よう見まねで手振りをしてみる。
もう、なんか耳が遠くなっている。
意識が肛門に集中しはじめた。
終わり?終わり?
隣の彼女が「ヒューヒュー!」叫び始めた。
そして暗転。
「はあ、終わった。なんとか・・・乗り切った・・・」
が、なんか俺の目の前に誰かいる気がする。
けっこう1メートルくらい前でだれかに見られてる気がする。
真っ暗なステージ上で、俺の真っ正面に誰かが・・・
「アンコール!アンコール!」
隣にいる彼女がいきなり叫びだした。
バ、バカ!そんなものいらねー!早く終わらせろ!
するとステージに明かりがつき、また激しいビートと共にダンスが始まった。
うぉ~~ダンス再会!
ダンサーが楽しそうに「立って!立って!」と客を煽るが、僕はおじいちゃんのようなスピードでよっこらせと立ち上がることしかできない。
何度同じ動きを繰り返しただろう。
ステージ上のダンサーと、観客が一体となったダンスは永遠と続くような長さで踊り狂った。
なぜか僕にはそれがスローモーションに流れ、映画のラストシーンを見るようだった。
そして・・・・長い長いダンスが終わった・・・・
「会場の皆様にお知らせです。これから、ロビーにて今日の出演者との記念撮影ができます。」
「え~!すごい!ねぇ!行こうよ」
「ごめん。ボク、ウンコ・・・・」
ものすごい人並みをかきわけ、僕はトイレへ向かい、そして溜まり溜まったマグマを放出した。
ちょっと赤いものが入っていたが・・・・・おそらく昼に食べ過ぎたキムチだ・・・・。
長い長いうんこを終え、ロビーに出ると、記念写真をしていたはずのダンサー達の姿はなく、客も大方帰り終え、
人もまばらなロビーで彼女だけがポツンと待っていた。
なんか・・・・・・・・・この後、ベッドで激しく踊れそうな気がした・・・・
めでたし、めでたし・・・