警察「ではこれより、あなたの証言を元に犯人の似顔絵を描いていきたいと思います。思い出せる限り正確にあなたが見た犯人の特徴を教えてください」
A「はい。」
警察「えっと、まず、髪型なんですが」
A「えっと、胸ぐらいまであるストレート・・・」
警察「ストレート」
A「あ、先の方は軽いカールがかかってたかな?パーマだったかな?」
警察「ああ、なんとなく、わかります。」
A「あ、あと茶髪でした」
警察「茶髪。先の方がカール・・・・・・・前髪は?」
A「えっと・・・上がってたのかな?分けてたのかな?おでこがはっきり見えてましたけど」
警察「おでこが見える、ね。えっと、輪郭は?」
警察「あごはとがってる感じ?」
A「あ~~~、そうですね。割とスリムで、モデルさんみたいな・・・」
警察「なるほどね。シャープな感じね。眉毛は?」
A「眉毛?」
警察「そう、眉毛」
A「眉毛ね~・・・あんまり印象ないな~・・・」
警察「なかった?」
A「いや、ないわけじゃないんでしょうけど・・・細かったのかな?」
警察「細めね」
A「あ!そう、細くて、上がっていた・・」
警察「細くて上がってる・・・・・怒ったときのような?」
A「ああ、そこまで極端じゃなくて・・・」
警察「昔の安室奈美恵みたいな?」
A「あ~~安室っぽかったけど、あんなに弓を描いていなかったような・・・」
警察「ん~~。じゃあ、細めで、少し上げるくらいで、薄く描いておきますか。」
A「ああ、はい。」
警察「なるほど・・・・目は?」
A「目は大きいんですけど、垂れているような・・・」
警察「大きくて垂れてる?」
A「あ、ん?なんか、大きくて、への字だったかな?」
警察「大きくてへの字?それじゃ、”ぬけさく先生”みたいじゃないですか」
A「あ~、あそこまでひどくないけど・・・でもあれを垂れ目にしたような感じ・・・」
警察「黒目が小さくでパカっぽいの?」
A「あ、あの、黒目はまた別で・・・」
警察「ん~~こんな感じかな~・・・」
警察「・・・で、鼻は?」
A「鼻は・・・・ほっそり?小さかったかな?」
警察「ほっそり、と。あまり上を向いたりは・・・」
A「してなかったですね。きれいな鼻でしたね」
警察「え~~っと、最後は口なんですけど・・・」
A「口は特徴的でしたね」
警察「お、それはありがたい。口が大きかった?唇が厚かった?口が裂けてた?」
A「ん~~大きさは普通です。唇も普通だったかな?」
警察「ん?それじゃあ本当に普通ですね」
A「あ、でも、口角は上がってました」
警察「笑ってたの?」
A「笑ってはいないですけど・・・・あ、あと口先も上がってました」
警察「笑ってたの?」
A「笑ってないですよ。だって、歯は見せてなかったし」
警察「ニヤリ、って感じ?」
A「いや、そんないやらしい感じじゃないし・・・口角は両方上がってましたよ。」
警察「えびちゃんみたいな?」
A「あ~~でもえびちゃんは口、尖ってないですもんね・・・」
警察「こんな口、あるかな?なんか不自然だな・・・アヒルみたいな・・・」
A「一瞬、歯並びが悪そうな歯が見えたから、隠してるのかな?」
警察「かな?って聞かれてもね~・・・口角が上がって、口先が尖る、か・・・やっぱり笑っているような・・・」
A「あ、でも、楽しそうに笑っているわけではないんだよなぁ~~・・・」
警察「N~~~、とすると、鼻から上が困ってて、鼻から下が笑ってる?」
A「あ、困ってるというか・・・・上目づかいで媚を売ってるようにも・・・頬も盛り上がってたし」
警察「ずいぶん、個人的な感想がこもっているような・・・」
A「いや、難しいんですよ!説明が!」
警察「まあ、知り合いでもありませんし、たまたま見た人の顔を思い出してもらうわけですから・・・」
A「いや、そういうわけじゃなくて!そうじゃないんですよ!説明が難しい顔なの!」
警察「説明が難しい顔ってなんですか」
A「だから、何考えているかわからないんですよ。うれしいのか、困っているのか、甘えているのか」
警察「だから、甘えてるってどういうことですか」
A「いや、それは、あれですけど」
警察「だって、泥棒なんでしょう?」
A「そうですよ!おかしいですか?」
警察「おかしいってわけじゃ・・・その、目が大きくて”への字”で垂れてるってのもいびつだし、口の形もいびつだし、全体的に不自然じゃないですか」
A「だから、不自然だったんですよ。」
警察「不自然だったの?なんか人工的な感じ?」
A「あ!それ言っちゃダメですよ。それは言っちゃダメ。本人も気にしてるし。美人ですよ!かわいいですよ!おしゃれですよ!」
警察「何を言っているんだ君は!君が泥棒を捕まえてほしいって言ったんだろう?どっちの味方なんだ!」
A「もういいです!とりあえずその似顔絵ください!」
警察「ちょ、君!何をするんだ!というか、君は何を盗まれたんだ!」
A「・・・・・・・・・・・・・・・・ハート・・・」