8月12日はうちの韓国人妻の誕生日
昨年は日本と韓国の、別々の場所にいたので一緒にお祝いができなかったのだが、今年は一緒に迎える初めての誕生日だ。
妻からはすでにいくつかのリクエストが来ていた。
それは
1 花束はいらない。花はもらった瞬間はうれしいがすぐゴミになる。しかも臭い
2 できれば現金で
3 服がほしい、カバンが買いたい、映画を観たい、『タニタの社員食堂 レシピ』がほしい、体脂肪が計れるヘルスメーターがほしい、などなど
なかでも「現金がほしい」というのは実に韓国人らしい。
韓国では誕生日のプレゼントなどでも「現金」を渡すことがあるという。
日本人にとっては現金を渡すなんて、俗っぽくていやらしく感じなくもないが、確かにこのほうがプレゼントを選ぶ手間が省けるし、
”もらってもあまり嬉しくないもの””あまり使えないもの””自分の趣味に合わないもの”というのは感謝はするものの、置く場所に困る。
それならばお金を渡して「これで好きなものを・・・」というスタイルの方が相手にとっても嬉しい。
まあ自分の奥さんになら、一緒に買い物に行って好きなものを選んでもらってこちらでお金を払う、というスタイルの方がスマートかもしれないが、
その場合、多少の予算オーバーも覚悟しなければならない。
よって今回は100円ショップでご祝儀袋を買い、その中に現金(3万円也)を入れることにした。
で、さすがにそれだけ渡すのもなんなので、手紙も添えることにした。
以前、テレビで見たのだが、韓国人カップルはメールの交換頻度も半端なく、100通近く
さらに大切な時には手書きの手紙を添えて、彼女の目の前で読み上げたりもするそうな。
そういえば、去年の誕生日に僕が拙い(つたない)韓国語で書いたバースデーカードを、妻は今も大事にしてくれているという。
僕はさっそくレターセットを買い、会社帰りにカフェに寄って手紙をしたためた。
僕は文章を書くのは嫌いじゃない。
中学生の時は海外文通もしていた。
が、ラブレターのようなものは書いたことがなかった。
いろいろと新婚生活が始まってからの4か月間のことを思い出してみたが、ン~~~何を書けばいいものやら。
韓国人男性なら、それはそれは歯の浮くようなセリフがバンバン浮かんできて、チャングンソクのようなとろけるような笑顔で読み上げたりできるのだろうが・・・
とりあえず、思いつく限りの「ありがとう」の場面と
「結婚して良かった」と感じる場面を書き起こしてみた。
カフェの隣の席で熱心に『ワンピース』を読んでいる少年が
「い、いまどきラブレター??さすがおっさん・・・」
みないな顔でこちらをチラ見した。
ま、そうだよな。いまどき、カフェで便箋にペンを走らせているなんて・・・、
昭和の青年じゃないんだから・・・
結局、あまりロマンティックなことは書けなかったが、とりあえず手紙とお金を封筒に入れて、カフェを出た。
妻の誕生日当日
妻の携帯電話には、国の家族やら友達から、お祝いのメールがたくさん来ていたという。
僕はお盆前で仕事が午前中ということもあったので、誕生パーティーの準備をすることにした。
まずはご存じ、コリアンタウン新大久保に行った。
ここ2か月間の間に2~3回テレビで紹介されていたソウル市場の「冷凍参鶏湯(サムゲタン)」を買うためである。
妻は大概の韓国料理は作れるし、食材も国から大量に持ってきているのだが、サムゲタンはさすがに自分では作れない。
だから今年の夏はサムゲタンをあきらめている様子だったので、ちょっくらサプライズで買って行ってあげようと思ったのだ。
いい夫だね、おいらも。
が、新大久保駅を降りて僕はびっくりした。
金曜日の3時
しかも気温34度、灼熱の太陽の元、ものすごい人だかりなのだ。
これがもう、シーズン中の行楽地、観光地といった感じで、歩道は人がごったがえしていた。
とにかく、新大久保は大盛況なのである。
韓国アイドルのグッズを売っているショップは店の前まで客があふれ、
人気の韓国料理店は入店待ちのお客があちこちに
もう、すごいのである。
これ、新宿区の観光地の一つと言ってもいいと思う。
東京に遊びに来た人が、渋谷や原宿へ行くのと同じ感覚で
横浜の中華街へ行くのと同じ感覚で
新大久保のコリアンタウンも観光名所になるわ・・・・・というか、なってるわ。。。
ネット上で「韓国ブームなんてマスコミが作ったねつ造!」なんて言ってるやつは、知らないんだろうな・・・・・・この、新大久保の現状を・・・
さて、お目当てのサムゲタンだが、道に迷った上に別の大きなスーパーと間違えてしまい、炎天下の中、1時間歩いてやっとお目当てのソウル市場(という名のスーパー)に到着
無事、サムゲタン(ハーフ)780円を4つ、ゲットした。
韓国料理の店で食べると1000円以上はするから、かなり安い。
ナムルやキムチは奥さんが作ったものが家にあるから、家でサムゲタン定食が楽しめる!
僕は冷凍参鶏湯が解けないように、急ぎ足で電車に乗った。
が、ここで妻からメール
「区役所で印鑑証明書をもらうのを忘れないで!」
あ、そうだった。朝、頼まれていたんだ。
駅に着くと、僕はまだまだ続く炎天下の下、区役所へと向かう。
冷凍参鶏湯を入れたビニールも汗だらけだが、僕の汗はさらにひどい。
が、サムゲタンの袋を抱えたままなんとか区役所で印鑑証明書をゲット
そして家路に着く途中にケーキ屋を発見
ケーキは駅ビルの1階で買おうと思ったのだが、こうした個人経営の小さな洋菓子屋のケーキが意外にうまかったりするんだよね。
僕は少し迷った末に、その小さな洋菓子店に入った。
どうやらこの店は、どのケーキも卵アレルギーの子供でも食べられるような材料で作ってあるようで、”材料には凝ってますよ!”というアピールが店のあちこちに見えた。
小さなショーケースにはおしゃれなケーキが並んでいる。
う~む、どうしようか・・・。
男なら迷わずショートケーキ!!少しひねってチーズケーキ!気取ってみてもモンブランかシュークリーム!といったところだが、女性の選ぶケーキとなると・・・・
妻は甘いものが好きなのである。
たしか、チョコレートケーキも好きだし、フルーツタルトのようなものも好きだった気がする。
ヨーグルトムースもおしゃれだし・・・あのフルーツゼリーが入ったカップも旨そうだ・・・
結局迷いに迷った末に、365円のケーキを4つ購入した。
結構痛い出費だったが、この4つの中に2つくらいは気に入ってくれるものもあるだろう。
僕は右手に溶けかかったサムゲタン
左手におしゃれな洋菓子屋のケーキを持って、34度の日差しの下を急ぐのであった。
*参考
6時
せっかくの誕生日なんだから、もうちょっといいものでもよかったのだが、妻は「ここでいい」という。
誕生日のディナーは、サイゼリアの100円グラスワインで乾杯!
なかなか気の利く妻である
映画は『カーズ2』を観たのだが、妻はここでも大量のポップコーン(カラメル味)と、アイスコーヒー500mlを平らげた。
そして映画の感想を求めると「日本はカーズの舞台にも選ばれてるし、レースには日本車が出走してるのに・・・・韓国はまだまだだな・・・」と述べた。
なかなかかわいい妻である。
家に帰ると、妻は待ってました!とばかりにケーキの箱を開けた。
すると目の前にはカラフルなケーキが4つも!
妻は歓喜し、携帯で写真を撮り、そして4つのケーキ全てに手を出した。
う~む・・・・僕と2つずつ選んで食べる予定だったのだが・・・
かなり食欲旺盛な妻である・・・
そしてメインイベントである。
僕は妻に、直筆の手紙を手渡した。
妻は「よ!待ってました!」という気持ちを、「うそ!信じられない!嬉しい!」という表情で隠しつつ、
ニコニコ顔で手紙を受け取った。
本当は僕が読んだ方が韓流っぽかったのだが、やっぱりそれは恥ずかしい。
僕は『ドヤ顔サミット』を見ながら妻が手紙を読み終えるのを待った。
やがて手紙を読み終えた妻は、手紙をそっとかばんに入れた。
「ん?感想は・・・なしかな?」
と思った瞬間、妻は猛烈な勢いで僕に抱きつき、そして感動で泣いてくれたのであった・・・・
「よし!」
初めての誕生日に妻を感動で泣かせるなんて、なかなか上出来な夫だ。
ナイスだ、俺・・・・
妻は僕にしがみつきながら「あなたと結婚して良かった」と何度も言ったのであった。
忘れるなよ、今日の感動を!
僕は少し恥ずかしくなって、洗面台へと立った。
歯をシャコシャコ磨きながら、「う~む、今夜の俺、最高にカッコいいな」と自画自賛
「今日の俺は100点だな」と過大評価していると
不意に妻が僕の後ろに立って、こういった。
そういえば、誕生日になんでサムゲタンなの?
僕は一瞬、何を言っているのかわからなかった。
すると妻は
今日の俺は90点だ・・・・