俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

金子哲雄さんを偲ぶ

>フジテレビ系バラエティー「ホンマでっか!?TV」などで知られる流通ジャーナリスト、金子哲雄(かねこ・てつお)さんが2日午前1時18分、がんの一種である肺カルチノイドのため都内の自宅で死去した。41歳だった。


昨日、飛び込んで来たニュースである。

僕は取り立てて金子さんのファンというわけではないが、やはり若いのに病気で亡くなる人を見るとやるせなくなってしまう。

金子哲雄氏を初めてテレビで見たのは3年ぐらい前だろうか?

妙に舌足らずというか、むしろ舌が前に出過ぎた感じで下らない知識を披露している、という印象があった。

値切りの仕方を自慢げに披露していたが、当時は「普通の人はできねーよ」と一蹴していたし

「路チューができるポイントと時間ランキング」なるものを「ホンマでっか!?TV」で嬉しそうに報告している姿を見て「気っ持ち悪ぅ~~~」と素直に思ったものだった。

最初はポッチャリメガネのオタク野郎

(おそらく)元いじめられっ子で女性を寄せ付けないブサメン

それがテレビに出るようになってメガネと髪型をおしゃれにしちゃって調子に乗ってる素人

そんな印象だった。

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ただ、気になる存在ではあった。

この人のスタイルは、とにかく”現場主義”

それがリアルだったので、心のどこかで尊敬をしていたところはある。


世の中には「専門家」と呼ばれる人はいるが、自ら調査するのではなく論文や雑誌を参考に分析をし、予測を立てる人も結構いる。

ホンマでっか!?TV」に出ている人なんてほとんどそうだ。

自分でちゃんとデータも取っていないくせに、自分の経験や勘を根拠に、偉そうに話す学者だっている。

これがファッションになるとさらにひどい。

「来年の流行をファッション評論家が予測!」なんて言っておきながら、内実は自分たちで勝手に流行を作って発信して、無理やり流行にさせる行為が行われている。

僕はこれでも一応は大学院卒で、研究というものも少しはしたことがある。

で、大学院の先生に「他人のデータをそのまま引用してはいけない」「データは自分で取って、その根拠を示せ」と耳にタコができるくらい言われていたので、雑誌のアンケート結果などでもつい「調査時期」「調査場所」「調査対象」などが気になってしまい、

「渋谷で30人に調査?それで80%の人がカラーコンタクトに興味があるって?人数少ねーし、こんなのギャルっぽい人に声かけたらそういう数字になるわいな」

「インターネットで500人にアンケート?返信があった275人がデータ?そんで質問が『あなたはインターネットを1日何時間使いますか?』。そりゃ返信してくる人はネットにつなぐ時間は長いに決まってるだろがぁ!」

といちいちケチをつけるようになってしまった。

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が、金子氏は違う。

若い女の子の中で何が流行っているかを調べるとなると、例えば女子高生が集まりそうな時間帯にドン.キホーテに行って、女子高生が何を手に取り、何を買っているかを陰からじっくり観察。

例えばパンストを手に持っているのを発見すると、女子高生がそこを去ったあとに同じようにそのパンストを手に取り、メーカー、色、値段などをチェックする。

変態である。

また、ダイエットに興味がある女性がどんなグッズに興味を持っているかを調べたいときは、同じようにトーキューハンズやデパート、渋谷や原宿の雑貨屋に出没

健康器具を試している女性をまじまじと見つめ、頃合いを見ていきなり話しかける。

そして彼氏に殴られる。(←本当にあったらしい。テレビで言っていた)


やっていることはストーカーとか万引きGメンのようでやや変態的だが、

現場主義を貫くジャーナリストとしては見本となるべき姿勢である。

こういう体を張った調査を日ごろしているからこそ、テレビで偉そうに話せるのである。

そしてこういう変態性を隠さず披露しているからこそ、どこか親しみがある。

バカにしていいからこその安心感がある。


人々が友だちと遊んだり、恋人とデートをしたり、家でゲームやパソコンをしている間にも

あの変態くんは「どこで路チューができるか?」を調べるために一人で夜の街に繰り出し、

「あ、8時にちょうどイルミネーションが始まる。だからあの建物を背に、7時58分くらいにチューをすれば最高にロマンティックだ。」

「いや、待てよ。2分のチューは長すぎるな。俺だったら、唇に触れて…(時計を見ながら)6・7・・・8秒後に舌を入れて・・・だから、逆算すると、7時58分40秒くらいにキスを始めればいいかな?」

なんてことをやっていたのだ。

僕は金子氏の変態性をバカにしながらも、いつも心のどこかで

「ああ、ジャーナリストはこうありたいものだ。」

「政治や戦争といった難しいテーマじゃなく、こういう生活に根差したテーマをまじめに、一人で調べるところがいいな~。俺もやってみたいな~。ま、俺にはそんな度胸はないけど」

なんて思っていた。

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金子氏が言った言葉の中で、一番印象的だったのは、奥様に対するプロポーズ。

金子氏は「年収300万円で、年収500万円の生活をさせてあげる」と言って、プロポーズをしたそうだ。

セコイけど、かっこいいな~。


「俺はいつかビッグになって、お前を幸せにしてみせる!」

「俺は出世の見込みはないけど、愛する気持ちだけは変わらないよ!」

なんて言葉よりよっぽどリアルで確信がある言葉だ。

だって、金子氏は家電を安く買う方法も知っている。

スーパーのお得な買い物術も知っている。

今、何がお得で、いつが買い時かも知っている。

本当に年収300万円で、500万円クラスの豊かな生活を送る術を知っているのだ。


これは同じく年収300万円の僕にとって本当に心強く、励まされる言葉だった。

年収300万円でも、自信を持っていいんだ!と背中を押されたような気がしたな。

そう思うと、やっぱり僕にとって金子さんは気になる存在ではあったんだな。

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このニュースを見た後、嫁が僕に

「あんたは急に死なないでよ」「健康診断も受けてよ」

と言ってきた。


金子氏の奥様の気持ちを思うと、また少し切なくなるのであった・・・

ご冥福をお祈りいたします