俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

赤いズボンはどこに?

僕は趣味で即興劇を習っているのだが、10回のレッスンの最後は発表会をすることになっている。

発表会は平日の昼間で、呼ぶ人も身内くらいなのでとりたてて張り切る必要はないのだが、それでも「舞台に立つ以上はちゃんとした衣装を用意するように」というのが即興劇の先生の考えなのだ。

今回の発表会はハロウィンの夜に行われるということで、衣装のテーマは「ハロウィン」になった。

そして11人の受講者で話し合った結果、上はドン.キホーテで売っているオレンジ色のハロウィンTシャツ、下はそれぞれカラーパンツを用意することになった。

カラーパンツねえ・・・(本当は”ズボン”と呼びたいところだが、一応パンツにしておく)

僕は基本、地味な色が好きなので普段着は青か茶のジーンズ、そしてこれまた茶色っぽい綿のパンツしか持っていない。

なので新たに買わなければならないのだが、結果的に僕はこの1週間というもの、カラーパンツ探しに奔走するハメになってしまったのだ。

たかだが身内の発表会、おそらく10人くらいの客の前で、何を張り切っているんだか・・・

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僕はまず、近所のユニクロに行くことにした。

服と言ったらユニクロ

もう、この10年ぐらい、僕はずっとユニクロなのだ。

ユニクロ=安い」というのが頭に染み込んでいて、本当はそんなに安くないということに気づいていながらも、どうしても服を買うときにはユニクロに行ってしまう。

また、ユニクロがそんなにセンスがよくなく、また人とよく被るということも知っている。

が、正直、ファッションにお金と時間をかけるのがもったいない。

僕は来年40のおっさんなんだから。

ということで、近所の小規模なユニクロに行く。

すると、ちょっとくすんだ色のカラーパンツがいくつかならんでいた。

赤、緑、紫、茶色・・・

ま、緑か紫ならギリギリセーフってところだが、いかんせん色がくすんでいる。

演劇のステージ衣装なので、できればもう少し鮮やかな色がいい。

そこで、最悪、他の店で見つからなかったらユニクロで買うことにして、もう少し他の店を見て見ることにした。


翌日、僕は駅前のドン.キホーテにいた。

このドンキはもともとデパートだったところを改装したもので、普通のドンキと違って広々として非常に見やすいのだ。

そこで服を買ったことはないのだが、確か趣味の悪い服がいくつかあったはずだ。

2階の家電、家具、寝具、健康器具、子供服、ハロウィングッズ・・・・そして一番端の端にあるのがメンズ・カジュアルコーナーだった。

おそらく、ここに服を買いに行く人なんてほとんどいないのであろう。近くに店員すらいない。

そこに無造作に置かれている服の中に、真っ白、真っ青、薄ピンクのカラーパンツを発見。

いかにも「売れ残り」「だれも買わないから置いてある!」という感じだったが、特にこの青いのなら色的には合格だ。

早速、狭い試着室で真っ青なズボンをはいてみようとしたのだが、これがサイズが小さくて入らない。

「ったく!最近のズボンは細すぎるんだよ!若作りしたいおっさんの気持ちを考えろっつーの!」

もっと大きなサイズはないかと思い店員さんを探したが、場末感がハンパないそのメンズコーナーに近づく店員はおらず、サイズをいろいろ取り揃えているほど人気のある商品でもないことは明らかだったので断念することにした。

次に近くのダイエー、SEIYUを回ったが、ここにも派手なカラーのパンツはなかったのだった。

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2日後、僕はたまたま市川市に行く用事があったので、仕事を終えた後、駅前のダイエーを覗いてみた。

たしかここにはg.u.があったはずだ。

そう期待してエスカレーターを登って行ったのだが、現在改装中で、g.u.は先月撤退とのこと。

こうなったらと、総武線に乗り込み、新宿三丁目にできたばかりのg.u.に乗り込んだのだが、ここにもカラーパンツはない。

ついでだと新宿のユニクロにも寄ってみたのだが、ここにも僕のイメージする派手目のパンツはない。

おかしい。

女性用のパンツは、けっこうカラーバリエーションが豊富なのに・・・

あらためて、原色のカラーパンツって、男には需要がないんだな・・・と感じたのであった。


そして発表会を翌日に控えた日。

僕は最後の望みとまた新宿へ繰り出した。

まずは百貨店をぐるりと見て回ったのだが、やはり新宿の百貨店で買い物をするような紳士には派手なカラーパンツの需要はないらしい。

唯一見つけたのはゴルフコーナーにあるカラーパンツで、まさに石川遼がはいているような鮮やかな赤なのだが、これが8000円もするのである。

「1回こっきりの発表会のために8000円なんて払えるか!」

「今月の小遣いなくなるわ!」

僕はここでもカラーパンツをゲットできないのであった。

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次に向かったのが、新宿東口。

まずはJEANS MATEをぐるりと回るが、ここの商品も割と渋い服が多く、カラーのパンツはなし。

「あ、そうだ!安く買うなら米兵だ!」

と、CMのようにわざとらしく手を叩き、米兵8階、メンズカジュアルコーナーに行くのだが、ここに置いてあるのはもともと金に糸目はつけないおしゃれ野郎の古着が多く、古着のくせに1万2千円とかふざけた値段をしているのである。


ここまで来るとお手上げである。もう1万円ぐらいを覚悟して、デパートのちゃんとしたのを買うか、くすんだ色を我慢してユニクロで買うかである。

本当にどうしようか、新宿三丁目の街をトボトボと歩いていると、目の前に「forever21」があった。

「ここは・・・安いってのは聞いたことあるけど、女性用だよな・・・」

しかし藁をもすがる思いで入って行った。そして申し訳程度においてあるメンズカジュアルを見てみたが、ここにも僕が求めているものはなかった。

ここまできたら行ってしまえと最後に入った「H&M

ここが正解だったのである。

H&Mも、今まで「女性用」と勝手に決めつけていたのだが、地下にあるメンズカジュアルには、それこそ僕が探していたキチガイのような色のパンツがいくつか並んでいるのである。

僕も普段なら「こんな色のパンツ、だれが履くんだよ!」と突っ込みたいところだが、今日はそれがありがたい!

鮮やかなグリーンのパンツはサイズがないので断念。

赤、青のパンツも・・・・僕の巨大な尻が入らない。

真っ黄色のパンツはさすがに恥ずかしいのでパスして、結局僕は朱色のパンツを購入することにした。

この朱色が、本当に習字の先生が使う墨のような色で、

「ああ、懐かしい。でもムカつく色やわ~~~なんとなく(笑)」

と苦笑いがこみあげてくるのであった。


僕は意気揚々と朱色のパンツを持って、発表会に登場した。

が結局、発表会では僕以外の全員が家のタンスに眠っていた”くすんだ色”のパンツで来たので、僕だけが「妙に張り切って浮いているおじさん」になってしまったのであった。


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ま、いいけどね。