俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

高尾山に行ってきた①

先日、高尾山に行ってきた。

まだ紅葉には早かったが、嫁と母親が「ぜひ行きたい!」というので僕と父が渋々ついていったのだ。


そもそも、僕はインドアな人間な上に人ごみが苦手なので、あまり外に出たがらない。

父親は最近足が悪く、階段を登るのが辛くなっている。

ま、それを抜きにしても男と言うのは休日は家でゴロゴロしたい生き物なのである。


が、女性は違う。

嫁はテレビの高尾山特集を見るたびに「行きた~い!」と体をよじり、

母は母で「行ってみたぁ~い!行こうよお父さん!」とそっぽを向く親父の首をねじるのである。


結局「シーズン前のすいている時期なら」ということで話が決まった。

10月上旬の日曜日。

嫁は朝5時に起きてお弁当を作り始めた。

僕もしかたなくお稲荷さんにご飯を詰めるのを手伝ったのだが、不思議なものでちょっとウキウキしている自分に気づく。

なんか、子供のころの遠足を思い出す。

かばんにお弁当、水筒、割り箸、お手拭、レジャーシートを詰め込むのだがこれがまたウキウキ。

山の上は寒いかもしれないからと、ユニクロヒートテックを今年初めて出し、さらに薄手のジャンパーを着込むとこれまた軽くドキドキ

なんか楽しくなってきた。

高尾山までは乗り換えなしで1時間半弱。

行こうと思えばいつでも行けるのだが、やはり面倒なのが嫌いな僕は嫁の誘いをずっとはぐらかしてきた。

ま、親と山に登るなんてのもこれが最後になるかもしれないからね。

親孝行だと思えばいい。

僕はそんなことを思いながら、気づくと電車の中で寝ていた。

1時間後、目を覚ますと車内の様子が一変していた。

高尾まであと数駅となると、車内はもう明らかに「高尾山を目指す人」でいっぱいなのだ。

年配の登山グループや老夫婦、そして家族連れやカップルらが

「今から登山しますよ!」という格好で電車に乗っているのだ。

僕はこの時点でうろたえてしまった。

だって、僕は普通のスニーカー、ジーンズ、ユニクロのシャツに、薄手のジャンパーなのである。

確か数年前に行ったときは、これで十分だった。

富士山じゃあるまいし、そんな遭難するような山でもない。

軽いハイキング程度で登れる山のはずだ。

それがなんでみんなこんな重装備なんだ?

もしかして、俺は場違いなのか?


なかでも張り切っていたのが、いわゆる「山ガール」と呼ばれる女性たちだ。

これがもう、雑誌の「山ガール特集」をそのまま切り抜いた感じの、あからさまな山ガールなのだ。

なんかもう、ユニフォームみたいな感じ。

キュートな登山靴、厚手のタイツにショートパンツ、チェックのシャツにダウンベスト、そしてリュックに帽子

「ちょっと気合入りすぎじゃない?」

「杖はいらんだろ?高尾山だよ?」

「個性がないんか?」

とも思うのだが、なんかもうそっち系のファッションの人のほうが多いので、僕のほうが分が悪い。


高尾山口に先に着いていた両親によると「あたしらも場違いなんじゃないかってずっと不安だった」ということだった。

だよね?

イメージ 1


高尾山はまだ紅葉の季節ではないというのに、駅前はこれまたすごい混雑だった。

もちろん、11月にはもっとすごいことになるんだろうけど、それでも予想以上の人だった。

高尾山をこんなにしてしまったのはミシュランとマスコミである。

ミシュランがこの気軽に登れる程度の山を過大評価してしまい、それに伴ってマスコミが高尾山特集をくんでしまった。

さらに「山ガール」ブームなども重なって、高尾山はなんか80年代のスキー場みたいな感じになってしまった。


時刻は朝9時。

僕らは駅前からまずはリフト乗り場へと進む。

ここまではもう他の人もゾロゾロ歩いているので、群衆にまみれて進む感じ。

中にはクマよけの鈴をリュックに付けてチリンチリン鳴らしながら歩いているバカもいて、迷惑がられていた。


まずはリフトで中腹まで上る。

ま、僕ら夫婦だけだったら嫁は「下から歩いて登ろう!」と言ったはずだが、今日は両親がいるのでリフトに乗れた。ラッキー!

高尾山のリフトは安全バーがないので、嫁と母はかなりビビっていた。

が、久々のリフトは楽しい!

高尾山の山肌ギリギリ、もう足がつきそうなくらいの高さを上る。

風も気持ちいいし、景色も最高!

これは初めて来た人にはおすすめ。

イメージ 2


リフトを下りるといよいよ登山スタート。

ルートはいくつかあるが、僕らは両親がいるので、一番基本的な、舗装されたルートを歩いた。

父親のペースに合わせてゆっくりゆっくり歩く。

するといろいろな人に抜かれていくのだが、これがもう、本当に高尾山の雑多な感じが出ていて面白い。


先ほどの山ガール

おひとり様は黙々と、山のマイナスイオンなどを感じつつ、「これで日ごろのストレスを取って、またリフレッシュして仕事をするのよ」なんて強がりをいいながら寂しさを紛らわし登っていく。

複数できている山ガールは喜々として、写真なんぞを撮りつつ、キャッキャキャッキャと騒ぎながら登っていく。

若い子供連れの夫婦も結構いるのだが、中には幼子を背負いながら登る若妻もいる。

「なんでわざわざそんな荷物を・・・」と思ったりもするのだが、この「子供を背負って登る若妻」は結構いる。

んで、5歳くらいの子供はペースを考えず軽やかに走っていく。それを寡黙なお父さんが

「帰りは俺が背負っていくんだろうな・・・」と忌々しそうに眺めている。

犬を連れて生きた人、なんてのもいる。

本当に公園に散歩に来る感覚で、犬にリードをつけて登っていく。

そしてウチの両親と同年代の老夫婦。こちらはなぜか3~5メートル離れて歩くいている人が多い。

大概、ジイさんのほうが先にすたすたと進み、そのあとをバアさんがふうふう言いながらついていく。

ジイさんは時折ばあさんに声をかけるのだが、たいてい1回では聞き取れない。

バアさんも時折じいさんに声をかけるのだが、たいてい聞こえていない。

が、登りがきつくなったりすると、ジイさんはちゃんとバアさんの手をひいてやるのである。

いかにも日本人らしい光景である。


そして今回一番おもしろかったのが、ある中国のおばさんである。

その人は、白いワンピースに、ハイヒールで頂上を目指していた。

おそらく、旅行で日本に来て、ガイドブックかなんかに「新宿から1時間半で行ける」「ミシュランで星を獲得した東京観光の名所」なんてのを見て突発的に来てしまったのだろう。

そのおばさんは何もしゃべらず、少し不機嫌に山を登っていた。

それを少しにやけながら、中国語で励ます仲間たち。

それを大いにバカにしながら追い越す日本人たち。

高尾山は意外にこういった人間模様が楽しかったりする。

イメージ 3