俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

男の望みを女は聞かない

時間は夜10時
JR中央線、立川行きの中央特快の社内
オイラはドアの近くのつり革につかまっていた。
オイラの目の前にはいちゃつくカップル。
オイラの嫉妬指数はレベル7

「くそ、いちゃつくんじゃねーよ。むかつく・・・」

しかし、よくよく見ると、ちょっかい出しているのは男の方で、女の方は意外にクールな反応
男の方は痩せ型、爬虫類顔、背が高く髪はやや長めだが、そんなチャラチャラした風でもない。
ま、東京の私立大学に通い、はじめて彼女も出来て学生生活をエンジョイしている感じ。でも電車でデートなのに花束をあげちゃうあたり、少しずれているのかもしれない。

女のほうは顔は見えなかったが、おそらくクールビューティー
黒髪が胸の辺りまで伸びてきれい
「でも最近、なんとなくおもしろいことがないんだよね~」っていう感じ

男の方は、女の方を向いて、ちょっとキザな感じで笑いかける
そして腰に手を回す
ちょっと女の耳に顔を近づける
軽いハグをする
どうも、人前でイチャイチャしたいタイプらしい

女のほうは嫌がるわけでもなく、かといって過剰に反応するでもなく、男のなすがままになっている。
そして電車は吉祥寺駅に着いた。
男はここで降りるらしい。
「今日は楽しかったよ」
男はどこまでもキザである。
「あたしも楽しかった・・・」
男の顔ではなく、花束をみつめながら答える女
電車のドアがプシューっと開いた。
男は女の頭をぐっと抱き寄せ、これ見よがしに「チュッ」と音を立てて女の頭にキスをした。
普通、頭のてっぺんにキスをしても音は鳴らない。
だから男は無理やり舌で口蓋を弾いて「チュッ」と鳴らしたらしい。
なぜに?だれに向けてのアピール?
女は別れが寂しいからか、顔を上げない
男はもう一度頭にキス
今度も周りにはっきり聞こえるような音を立ててのキス
一瞬周囲のジロッした視線が男に集まる。

女は顔を上げない。
男は不審に思ったのか、今度は耳、頬に順にキス
そして最後に口にキスをしようとしたところで女は顔をそむけ「NO」のサインを出す
男はこれ以上やっては電車に降りそびれると思い「じゃあね」と言って電車を降りた。
女は「うん、じゃあね」と言って軽く手を振った。
電車のドアが閉まると、女は何事もなかったかのようにバッグの中から文庫本を取り出し、読み始める。

おそらく男は駅のホームで
「なんでチューさせてくれなかったんだろうな?」とちょっといぶかしがりながら家路につく。
わかる、わかるぞ、お前の気持ち
電車の中でイチャイチャしたくなるのも
女の腰を引き寄せたくなる気持ちもみなわかる
人前だろうがなんだろうが、尻は触りたい。
乳も揉みたい
なんだったら服の中に手を入れて直接触りたい
例え人ごみの中でも
唇にフォーカスがあったらとりあえずチューしたい。
チューをするならベロを絡ませたい
男はそういう生き物なのだ。

フレンチキスやハグじゃダメなのだ。
しかし逆に女性はそっちのほうを求めるものだから辛い

女性だってきっとイチャイチャしたい願望はある。
しかし女のそれは「手をつなぐ、見つめ合う、ハグをする、軽いキス」である。
それ以上は二人っきりになってからね!なのである。

男は手をつなぐより、肩や腰を抱いて「俺の女だ」とアピールしたがる。
見詰め合うのはディープのサインだと思ってしまう。
女にハグされると反射的に腰や背中を強く引き寄せ、尻をさすり、股間に指を這わせ
耳たぶをかじり、最後にはディープに持ち込もうとする

しかし大抵の女は男の手が尻に降りた時点で男の手を「ピシャリ」と叩き
「もうバカ!いい雰囲気だったのに何やってんのよ!」となる
なぜに男と女はこうも違う?

推測するに、前述の電車男は夜になり、二人っきりになっても服を着たままのセッ○スを好む
しかし前述の女はHが始まると全部脱いで横たわり、男を失望させる
なぜに男と女はこうも違う?

電車が立川に着くと、女は実に事務的な素早い動作で文庫本をしまい、電車を降りていった。
このまま女の家についていってその答えを聞いてみたい夜である・・・