朝の満員電車に乗る。
ものすごい混雑だ。
もしかしたら乗れないかもしれない。
だからといってすぐに飛び込んではいけない。
人と人の間に立つと
それはもう息ができないくらいの圧迫感だ。
前から押され、後ろから押され、右から押され、左から押され
息も出来ない、動くこともできない。
暑苦しいおっさんとの密着感も不快だし、
女性との密着感も痴漢冤罪の恐怖に立たされ、快感にはならない。
体が斜めになったまま次の駅まで行くこともある
だから満員電車の一手段として、一番最後にお尻から体を押し込む。
最後の最後。
そしてドアを閉めてもらう。
これなら体の前面がドアになる。
もちろんドアに押し付けられるわけだが、体の四方を人で押し付けられるよりかは
幾分、気が楽だし、外の景色を見ながら行くのもたまにはいい。
ドアをついたてに、体を後ろに押し返しても、ドアには文句を言われない。
満員電車でないときも
私がよく利用する山手線、新宿・池袋駅付近ではある程度込んでいるので、
おれはドアを目前にして立つ。
なんだったら窓から流れる景色を眺めながら、人生の行く末を考える
ふと振り向くと、後ろにはだれもいない。ガラガラの車内。
ガラガラなのに、オレはドアにへばりついていた!
これに気づいたときの恥ずかしさ!
「なんか、あの背広の人、会社で嫌なことでもあったのかしら?」
「なんかあの人、壁に頭くっつけて反省してるわよ」
という車内の視線が熱い!
しかしこれはまだましなほう。
オレはいつものように、無意識にドアにへばりつく。
「はっ!またへばりついてしまった!また哀しいサラリーマンに見られるかもしれない!」
と我に返り、後ろを振り向くと
なんとオレの背中にへばりついて携帯に夢中になっている男アリ。
車内はガラガラなのに、二重にドアにへばりつくサラリーマンが二人
「おい、コラ!なにへばりついとんねん!車内ガラガラやろが!」と思ってすぐ後ろのサラリーマンを睨んで見ても
後ろのサラリーマンはケータイの画面を見ながらニヤニヤするばかり
周り見ろやコルァ!!新手の変態が貴様は!
こうしてオレは、知らないサラリーマンに後ろから犯された状態で次の駅に向かうのでした。
「次は○駅、○駅、お出口は右側です」
って、反対のドアやんけ!!こっちのドア開けろや!!