俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

いきものがかりがいたよ

『関ジャム完全燃SHOW』(テレビ朝日系列)2023年1月28日の放送は”いきものがかり”特集。これが実に良かった。

『関ジャム完全燃SHOW』は好きな番組の1つだが、実は最近はちょっと心が離れていた。その原因の1つは番組を通じてレギュラー陣の音楽の知識が上がりすぎていること。昔は視聴者と同じように「え~、そうなんや!」と新鮮なリアクションをしてくれたのに・・・。もう1つはやはり最近の若いアーティストやその楽曲に自分がついていけなくなったこと。前回の「プロが選ぶ2023年のマイベスト10曲」もキツかった・・・。自分が観たことも聞いたこともない人の楽曲が「神曲!」「天才!」「1年を代表する曲!」と絶賛されることの置いてけぼり感といったら・・・。

でも良かった。ぼくには”いきものがかり”がいたよ!

最近の『関ジャム完全燃SHOW』に思うこと - 俺よ、男前たれ (hatenablog.com)

 

 今年51歳になる僕は年々流行の楽曲についていけなくなっている。K-POPは全滅、Ado、Yoasobiも周回遅れ、「TikTokで大バズリ!」は全く情報が入ってこない。かろうじて”あいみょん”だけは認識していて曲も聴いている。石井竜也さんが「あいみょんの歌はエイジレス」と評したようにあいみょんの曲は世代を問わず受け入れられる魅力がある。昭和のおじさん、昭和に飽きる - 俺よ、男前たれ (hatenablog.com)

 で、今回『関ジャム~』でいきものがかりの特集を見て、「そういえばいきものがかりもエイジレスだよな」と改めて気づいた。おじさんでも知っている曲は結構ある。「SAKURA」「ありがとう」「帰りたくなったよ」「じょいふる」「風が吹いている」(ファンではないのでメジャーな曲しかないのはご勘弁)、日本語タイトルが多いのもおじさん世代には嬉しい!またタイアップ曲になりやすいのはスタンダードでストレート、誰にでも受け入れやすい親しみやすさが歌詞・メロディー、そして本人たちのルックスに溢れているからだろう。紅白歌合戦のトリを飾っても、甲子園の入場曲に決まっても納得。

で、これほどヒット曲もあり、知名度・実績もあるのに『関ジャム完全燃SHOW』では”すごいアーティスト”として名前を挙げられたことがほとんどない。「歌の上手い女性ボーカル」として名前が挙がることもなければ「平成の名曲」として挙げられたのも1~2曲程度。AdoやYoasobi、あいみょんや藤井風、King Gnuや髭男、米津玄師らが”天才”とべた褒めされることはあっても、いきものがかりを絶賛する人はほとんどいなかった。が、実はそれがいきものがかりの戦略だったのだというからさらに驚いた。

いきものがかりについて、メンバーの水野氏は

・二人が変にカリスマにならなかったというのが良かったと思います。

・『聖恵ちゃんが何を言うか聴きたい』みたいになってしまうとそれはポップスじゃなくなってしまうので

・僕らは「普通というファンタジー」をやっている。「いきものがかりってずっと同じ感じだね」と言われると「よし、うまくいっているな」と思う。意外に違うことやっているのにみんな気づいてないから。

と述べている。

確かにいきものがかりは17年にわたりヒット曲を出し続けているのにカリスマっぽさがない。ボーカルの吉岡さんは番組中、他のアーティストから絶賛されると「うそぉ!」という風に目を開いて驚いた表情をする。本当に謙虚で純粋なイメージそのまま。全然天狗にならないってすごい。僕だったら「おう渋谷!お前も少しは音楽のことわかってきたみたいだな」なんて踏ん反り返るのに。いきものがかりは変に音楽を語らず、飾らず、「いつもの感じの普通の曲ですよ」みたいな顔をして人々が気づかないうちに耳・記憶に音楽を差し込んでくる。

 ちなみに僕もいきものがかりの凄さにずっと気づいていなかった。この番組を観るまで吉岡さんのことを「元気よく大きな声で歌う娘」ぐらいにしか思っていなかった。ボーカルの細かいテクニック、声の魅力、表現の工夫、歌詞をしっかり聞かせる歌い方など本人の努力と工夫が楽曲の中に随所に散りばめられていたようだが、全く気が付かなかった。が「すごいと思わせない」のもいきものがかりの戦略だったのかもしれない(もしくは天然)。

 実は水野さんはボーカルの吉岡さんにも言っていなかったことがあるそうだ。名曲『かえりたくなったよ』ではわざとメロディの中に不協和音(不安を煽るようなコード)を混ぜて、曲の雰囲気(郷愁感)を作っていた。吉岡さんは「初めて聞いた!」「高校時代から歌ってるから自然と・・・」と驚いていた。味方にもあえて説明をしないところ、それを理屈でなく自然にこなす吉岡さんもすごい。

 水野さんは番組の中で「”ふつう”が最強」と、自分たちの楽曲を”普通”と称していたが、僕は”普通”と”スタンダード”は違うと思う。いきものがかりは”スタンダード”だ。奇をてらったところがない。SNSでバズリを狙うことも、若者に飽きさせないように転調を繰り返し詰め込みすぎることもない。スタンダード。だから「ふ~ん、いい曲だね」とか「サビが覚えやすい」とは言われても「すごい楽曲!」と絶賛されることはない。が、きっと10年20年と歌い継がれる。それがスタンダード。知らない間に中学校あたりの合唱曲になってたりする。それがスタンダード。

 吉岡さんは「私も真剣にやる。真剣にライブの準備をして、レコーディングで納得する表現をしたい。そんな風に高校生の時に出会った地元の仲間と働いていることが面白い」と語り、水野さんは「スタンスを分かり合えるのがこのグループの強み」と語っている。この二人がいる限り、おじさんももう少し音楽が楽しめるかもしれない。

 あと下世話だけど、これだけ信頼し合っている二人が付き合わないのもすごい。

https://ikimonogakari.com/

いきものがかりはファンも素朴でいい人たちのような気がするのは偏見か?