俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

デルヘリ嬢は凛として・・・

今日は小雨交じりの午後でした。

今日も仕事をもらえなかった僕は、駅からの坂道をとぼとぼと歩きながら家路につきました。


僕は傘を持っていなかったので、長く緩やかな坂道を少し早足で歩きます。

僕の後ろをヒールを履いた女性が、同じく急ぎ足でコツコツと歩いてきます。


前方には傘を差したおじいちゃん。

僕は少しペースを速め、おじいちゃんを追い越すと、ヒールの女性もやはり早足におじいちゃんを追い越します。

さらに前方には同じく、腰の曲がったおばあさん。

おばあさんは後方から迫ってくる僕に気づかないのか、道の真ん中を悠々と歩いています。

僕はまた少し早足になって、おばあさんを追い越しました。

すると、ヒールがコツコツと地面を叩く音がまた早くなり、おばあさんを追い越したようです。


僕は後をつけられているようで、少し気味が悪くなりました。

緩やかな坂道の途中で左に折れると人通りの少ない急な坂道があります。


僕がその道に入ると、ヒールの女性もついてきます。

う~ん。なんか妖しいな。

僕が少しスピードを下げると、ヒールの音が「カカッ」と鳴り、ブレーキをかけたようにペースが落ちました。

どうやら僕の後をつけているのは間違いないようです。

時間はもうすぐ午後3時半。

美人局にしてはちょっと時間が早い気もしますが、

この急な坂道を下って左に曲がると、実に都合よくラブホテルがあるのです。


困ったな・・・

ホテルに誘われたら、断る自信がない・・・

でも財布には1万円しか入っていない

あ、でもカードが入っているな・・・

あとで怖いお兄さんが来て、ATMに連れて行かれるのかな

それとも闇金融かな?

怖いな

でももしかしたら暇を持て余した体の火照った有閑マダムが誘っているのかもしれないし・・・


確率で言えば9対1で美人局

しかし、残り10%の逆ナンに賭けてみるのが男ってもんじゃないか!?


僕は坂道を下りきったところで思い切って振り返りました。

すると・・・

茶髪のワンレングス

大胆な白いミニスカートと黒いロングブーツ

ちょっと派手めな・・・・・おばさんでした・・・


顔はアラフォーだが

ファッションセンスはバブルへGO!

そのアンバランスさに僕は唖然としましたが、その女性は僕のほうを見ることなく

一人で颯爽とラブホテルに入っていくのでした。

後姿は美人でした・・・。


きっとあれがデリバリーヘルスってやつでしょう

はじめて見ました・・・

ホテルには先に男が入っていて、女が3時半に入るって寸法です


中にいる男は、ドアを開けた瞬間、妙にド派手なおばさんを見て、どう思うでしょう・・・

オバマ大統領並みに「CHANGE!」を唱えるでしょうか・・・


いえ、話によるとチェンジなんてできるものではないと聞きます

女は有無を言わさず仕事にとりかかり、また次の客の下へと向かっていくはずです


仕事なく家路に着くこの僕が

現役バリバリで働くデルヘリおばさんをどうして笑えましょう?

背中を丸めて歩いている僕が

胸を張って歩く彼女にどうして勝てましょう?


男に生まれた時点で、僕はすでに女性に完敗なのです・・・・

性欲を餌に出された時点で

男は虚しく女性に従うのです・・・