俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

無意識商品

マクドナルドのプレミアムローストコーヒーを飲んでいた思った。

「そういえば、昔のマクドナルドのコーヒーカップって、底のところに何か書いてなかったっけ?」


それは確か、10年ほど前。

当時から友だちの少なかった僕は、マクドナルドで一人、コーヒーを飲んでいた。

当時、マクドナルドのコーヒーは大して旨くもなんともなかったし、そもそもマックでコーヒーを注文する人すら稀だったように思う。

コーヒーだけなら他においしい店はたくさんあったし、そもそも脂っこいポテトにコーヒーは合わない。

しかしその日はなぜか無性にコーヒーが飲みたかったこと、おなかはすいてないが30分ほど時間をつぶしたかったことなどが幸いした。

僕は待ち合わせ場所近くのマクドナルドでちびりちびりと、ゆっくりコーヒーを飲んでいた。

そして無事30分をつぶすことができ、最後にコーヒーを飲み干して出て行こうと口をつけたそのとき、僕の目はカップの底にくぎ付けになった。

なんと紙カップの底に、マメ知識みたいなのが書いてあるようなのだ。

みなさんもよくイメージしてみてほしい。

コーヒーを飲み干そうとカップを傾ける。

すると徐々にコーヒーは減り、底の丸い部分が上から順に徐々に出てきて文章が少しずつあらわれてくる。

コーヒーの残っている部分はまだ見えない。

コーヒーをまた少しずつ飲んでいくと、文章が一行ずつ現われてくる。

文章を読みながら、ふむふむなるほどと思う。

文章読みたさに、コップを置くことなく更に飲みつづける。

コーヒーを飲み干すと全ての文章が読めるというわけだ。

くそー、やられたなあと思った。

マクドナルドのいたずらにまんまと引っかかった感じだ。

これは蓋とストローのついたジュース類ではできない。

ましてやスプライトでははじめからタネがばれてしまう。

当時、店内で飲むコーヒーには蓋をつけてくれったからこそ出来た作戦だ。


あのアイディア、抜群に好きだった。

なぜなくなってしまったんだろう?


マクドナルドで一人でたたずむサラリーマンはよく見かける。

彼らは楽しげな女子高生グループを羨みつつ、なんとなく一人じゃ気まずい感じがしている。

なんかケータイをいじるか書類をチェックするかしていないと、淋しい男と思われてしまう。

ケータイに特にメールの入っていない僕などは必死でトレーに敷いてある「ビッグマックはちゃんとお肉の味がする。その秘密は・・・」なんて記事を丹念に読んでいたりする。

つまり「一人で淋しくしているの図」をさらけ出さないように、何かをしていたいのだ。

また、そうゆう淋しい男がよくホットコーヒーを飲んでいる。

もしそんな手持ち無沙汰なところに、コーヒーのコップの底にマメ知識が書いてあったら、どんなに嬉しいだろう。

カップを口につけている間は「コーヒーを飲む」という仕事をしているのであって、一人で淋しそうにしているという枠からは外れる。

むしろ、ちょっと渋くて粋に見えたりする(かもしれない)。


だから僕はできれば今からでも、「コーヒーカップの底に豆知識を書くサービス」というのを復活させてほしいのだ。

カップごとに違う豆知識を書いておけば、次もまたコーヒーを飲みに来ようと思うだろう。

あれは今考えても、なかなか見事な作戦であった。

「人はコーヒーを飲むとき、自然とカップの底をみつめる」という、”人間の無意識”を利用したアイディアである。


話は変わって、アメリカのとある空港での話。

その空港は毎年かさむ出費をなんとか減らそうと頭を悩ませていた。

一番無駄な出費と思われていたのがトイレの清掃費。

空港は毎日何万人もの人が利用する施設。

当然トイレの利用者も多い。

しかしトイレの使用状況、特に男子トイレのマナーの悪さは異常で、便器の周り、上・下・右・左に小便のシミができ、その清掃費だけでも年間数億円の出費になるという。

「人はなぜ便器内に排泄しないのか。」

これは人類史上続く永遠のテーマで、子どもが使う所ならともかく、高校や大学の大便器でさえ、はみだしチャンピオンというのはいるものだ。

そこでアメリカの空港関係者が考え出したアイディアというのは、それまで誰も気付かなかった抜本的なもので、なおかつ、安上がり、そして効果は非常に絶大的なものだった。

「便器の中にハエの絵を描く」

女性にとっては「???それが何の解決になるの?」と思われるかもしれない。

しかし男というのはバカな生き物で、便器にハエがとまっていたら10人に9人はそのハエを狙うものなのだ。

ポコチンをうまくコントロールして小便をハエに当て、追っ払おうとするのだ。

そこで、全ての小便器にハエを描いたところ、便器の外に小便をはずす者は急激に減り、清掃費を大幅にカットすることに成功したという。

これまた人間の無意識を利用した、抜本的な改革であった。



無意識というのは怖いもので、相手の作戦を作戦だと気付かなければいつまでも同じ行動を繰り返し、騙され続けるのである。

逆にいえば人間の無意識を利用すれば、莫大な利益を生むことも可能である。それはある意味卑怯だが、全く合法的な方法でもある。


僕も何か人間の無意識を利用した商品・商売ができないものだろうか?

そう思って便器に腰掛けながら30分くらい考えてみたが、浮かんできたのは

「エレベーターの床に隠しカメラを設置しておけば、みんなドアの上を無意識にながめているので、気付かれることなくパンチラが撮れる。」というものだけだった。


無意識に下ネタに走るあたり、

とりあえず僕は最低だな・・・・・