俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

普通自動車に乗ってきた

本当に久しぶりに”普通自動車”というものに乗った。

「お前はどこの田舎者だ?」と言われるかもしれない。

が、本当に久しぶりに乗ったのだ。


僕は大学1年の時に自動車の免許を取った。

が、以来18年間、一度も車を運転したことはない。

見事なまでのペーパードライバーで、今も見事なゴールド免許の保持者だ。

車の運転は怖い。

それはもう、夢に見るほどまでに怖い。

僕が自動車教習所に通っていた時代は、まだ教官がヤクザのような態度で教えるようなところだった。

なぜかパンチパーマ、サングラスの教官が多かった気がする。

態度もふてぶてしく、気性も荒らく、もともと気が弱かった温室育ちの僕は自動車教習所へ通うのが憂鬱でならなかった。

ちょっとしたミスで大きな声で怒られ、僕はプール授業のあとのチンポコのように縮み上がり、飼いたてのうさぎのようにぶるぶる震えていた。

そんな状態だったから、なんとか免許を取った後も車に乗りたいとは全く思わなかった。

大学の同期が次々と車を購入し(バブル期だったので大学生も羽振りが良かった)運転していたが、僕は50CCの原付バイクを常に愛用していた。


その後も車に乗らないで済む状況が続いた。

1 大学卒業後は発展途上国にいたので移動手段は自転車とバイク

2 帰国後も埼玉の職場近くにアパートを借りたため原付通勤

3 転職後は電車通勤

4 アパートを借りるときは家賃5万円前後しか予算がなかったため、駐車場なし。

5 そもそも車を買う、維持する、修理する金がない。

6 一人暮らしで、友達も彼女もいなかったので、車で遊びに行かなくてもいい。

7 そもそもインドア派なので外に出ようと思わない。

8 昔から、男の子が興味を持つ乗り物(ロケット、電車、バイク、ジェットコースター、車など)に興味を持たなかった


などなど。

とにかく車の必要性は感じずに済んだのだ。


もちろん、車といってもバスには時々乗るし、実家に帰れば父親が運転する軽自動車には乗る。

が、タクシーは高いので乗らないし、他人の車に乗ることもまずない(人との関わりが薄いので)。

つまり、普通自動車となると、とんと乗る機会がないのだ。

東京住まいとなった現在、「車なくても全然いけるじゃん」度はますます高くなっている。


両親は「子供ができたら車があったほうがいいと思うようになるよ」なんて言うけど

車がないとどうしてもダメなことなんて、東京ではそんなに多くない。

むしろ、車なしのほうが環境に優しいし、お財布に優しい。

維持費、車検、駐車場代、ガソリン代だけで育児代くらいまかなえるほどだ。

この不況の時代、車なんて乗りたいときにレンタルするぐらいのほうがお得だ、なんてことを言う経済学者もいる。

安月給で結婚生活を送るなら、車などないほうがいいのだ。

僕の「運転できないコンプレックス」はほぼ無くなったと言ってよかった。


しかし、先日、僕は何年ぶりかに普通乗用車に乗った。

そして「く、車って、すげ~~」と子供のように目をキラキラさせながら驚いてしまった。

その車はTOYOTA『PRIUS』

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それは友達のうちに初めて泊まり、「近くの駅まで車で送ってやるよ」と言われた朝のこと。

友達はまず駐車場に向かい、「そこで待ってろ!」と言うや否や、あっと言う間に車を出してきた。


僕はまずそのスタートの早さに驚いた。

だって、実家の軽自動車は、寒い冬の朝は5分くらいエンジンを暖めないと動かないのだ。

ま、本当は動くのかもしれないが、僕の父はいつもエンジンを暖めてから発信するというのに

PRIUS寒い朝でもウサインボルト並のスタートなのだ。

普段から普通自動車に乗りなれている人はフツーのことなのかもしれないが、5年ぶりくらいに車に乗った僕からしたら、驚くべき早さなのだ。

そして車の内装にまたびっくりした。

フロントガラスの下に、なにやらデジタル表示があり、それがまた猛烈にかっこいいのだ。

なんか、少年時代にテレビで見たヒーロー戦隊が乗っている車みたいなのだ。

なんか、画面がピコピコいって、今にも車からロケットエンジンが発射しそうなのだ。

はたまた、波動砲かなにかを発射しそうなのだ。


さらに、ギアの小ささにまた驚愕。

僕が知ってる車は、もうちょっと下の方に、ガチャガチャしながら入れるギアが付いている乗り物だったのに、

今は本当にゲームのコントローラーのようなギアなのだ。

本当におもちゃを動かす感覚なのだ。

おさるのパン君でも動かせそうなのだ。

イメージ 2


僕が友人の車を「すげーすげー」と言いながらじろじろ見ていると、ハンドルの左横に何やらスイッチがある。

これ・・・・なんだろう?

まさか・・・たばこに火をつけるやつじゃないよね?

昔、軽自動車についてたやつ・・・

そうじゃなければ・・・・エアコン?ワイパー?カーステレオ・・・はたまた脱出装置か波動砲・・・・


僕「ねえ、このボタン・・・・なに?」

友「は?エンジンをスタートさせるボタンだよ」

僕「・・・・・・・はぁ?何?まさか、これで車動かすの?」

友「そうだよ」

僕「だって・・・鍵は?」

友「ねぇよ」

僕「鍵ないでどうやって車動くんだよ」

友「ここを押すんだよ」

僕「ここ押すだけでエンジンかかるの?」

友「そうだよ」

僕「・・・・」

うそぉぉぉぉぉぉ!!!!


僕「え?え?本当に鍵、いらないの?」

友「何驚いてんだよ。最近、多いぞ。こういうの」

僕「だって、だって・・・・車の鍵って・・・」

友「なんだよ」

僕「なかったら困るじゃん!」

友「困らないんだよ。今は」

僕「だって、だって、プロ野球のオールスターでMVPを取って、商品の車をもらうとき、鍵の形の目録もらうとき、困るじゃんよ!」

友「細かいよ!!とにかく、今はドア開けるときだけだよ。鍵使うの。ま、それでも昔みたいに挿さないけどね」

僕「じゃあ、どうやってエンジン止めんだよ。」

友「またこのボタン押すんだよ」

僕「そんなの危ないじゃん」

友「・・・・・なんで?」

僕「子供が助手席に座ってだよ、運転中にそのスタートボタン押したら危ないじゃん」

友「子供に押させないようにすればいい」

僕「でも押すよ。子供は押すよ。子供って押すものだよ。ダメだって言われたものは押すものだよ。火災報知器のベルとか」

友「うるさいよ。チャイルドシートかなんかに縛りつけておけばいいだろ!」

僕「・・・・・・・・・試しに押していい?」

友「ふざけんな。押したら叩き下ろす」

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こうして僕は普通自動車の進化の凄さに度肝を抜かれたのだ。

僕が知らないうちに自動車ってこんなに進化してたんだな。

じゃあ、もしかして低燃費のエコカーも本当に存在するのかな?

あんなのマスコミの嘘だと思ってたけど。

空飛ぶ車とか、ロボットに変身する車ももうあるのかもしれないな。


まいったな・・・

自分の知らないうちに、いろいろなものがどんどん進化してしまうというのは、なんとも悔しく、なんとも情けなく、なんとももどかしいものである。

手に入れたい反面、維持でも手を出したくないこの気持ち・・・


世の中から車全部なくなっちゃえばいいのに・・・


とりあえず僕は今年、スマートフォンにチャレンジします