俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

その女の人はにやにやしていた・・・

今日も、満員電車に揺られて家路につく。

つり革を両手でつかんで脱力・・・

電車の窓ガラスには、疲れた顔の俺がうつっている。

ああ、お父さんは今日も、疲れて家に帰る・・・

?お父さん?

俺、お父さんじゃなかった。

結婚もしてないし・・・。

でも枯れたおっさんだな・・・

窓ガラスにうつる顔を見て、少しわらけてきた・・・

すると窓ガラスのオイラの横で、体を震わせている女の人がいる。

チラッと横を見ると、その女性はなにやら音楽を聴きながら携帯の画面を見ていた。

背が高くて荒川静香似。

荒川静香はニヤニヤして笑いが止まらなくなった。

携帯画面から目を離した。にやにやした顔が窓ガラスにうつった。

もう一度携帯を見つけた。

またニヤニヤした。

思わず目を横にそむけた。

電車の中刷り広告を見て、にやにやを消そうと試みた。

だが、にやにやした顔が社内に広がるだけだった。

何がそんなにおもろいんだろう?

メールか?ブログか?ワンセグか?

俺だって思い出し笑いでニヤニヤすることはよくあるけど、

若い女性の、電車の中でのニヤニヤは、妙におもしろいぞ。

少し、ニヤニヤが収まったようだ。

意を決したように、また携帯を覗き込む。

頬が緩む。

また携帯から顔をそむけた時、オイラと目が合ってしまった。


しまった・・・

オイラもその女の人を見てニヤニヤしていたのだ。

ニヤニヤ同士で目が合ってしまった。


もうこの人と結婚するしかないな・・・