俺よ、男前たれ

おもしろきこともなき世をおもしろく

裁判傍聴記2

裁判が始まった。

「被告人、前へ」

の声で立ち上がったのは、なんと先ほどの黒縁めがねの真面目でおとなしそうな女性だった。

僕も友達も「!!!!」だ。てっきり裁判所の人かと思った。

だって警備の人にはさまれるでもなく、一人でぽつんと座ってんだもん。

事件の内容を聞いてまたびっくり。

夫の浮気を疑い、包丁で刺したとのこと。

「え!あのまじめで大人しそうな人が!?」

説明によると
被告が小さい時に両親が離婚、被告は祖父母に育てられた。
被告の元彼は暴力を振ることがあったので、トラウマがあった。
被告は以前、感情がコントロールできなくなるとかで、精神科に通っていたこと。
今回、夫の浮気を異常に疑い、口論となり、カッとなって刺したとのことだった。

ただし、介護師の資格を持つ被告は夫を刺したあと、我に返って救急車が来るまで止血をしており、夫も「自分で刺した」と妻をかばったとのこと。

その後、夫は妻の罪を軽くするよう、温情判決を望み、
妻は精神科と相談の上、夫をこれ以上傷つけないために離婚を言い渡したとのことだった。


なんともまあ、こんなドラマのような展開が現実にもやっぱりあるのだ。
ドラマよりもリアル!当たり前だけど。

たまたま傍聴した裁判が”当たり”だったのかもしれないが、ものすごい人間模様に、僕も友達もショックを隠しきれなかった。

それ以外にも、この裁判にはおもしろい点がたくさんあった。

まずは検事君だ。
どうみても検事なりたての彼は、罪状を説明するときも漢字を読み間違えたり、文章もかみまくりで失笑を買っていた。にきび面で短髪、黒縁めがねと一昔前の苦学生のような検事君は、被告にはちょっと偉そうに、そしてちょっと慣れなれしい口調になるのが虚勢を張っているようでおもしろかった。

次に弁護士。これも見るからになりたての女性だった。でも映画『それボク』の瀬戸朝香みたいで、かっこよかった。ボクの友達も「かっこいい!」と口を揃えた。

そして裁判官。
さっきも言ったがいかにもベテランという感じの裁判官は、新米の検事・弁護士に裁判のやり方を教えながら進めているようでもある。

また、僕は裁判というと難しい言葉のオンパレードかと思っていた。
確かにいくつかわからない言葉もあったのだが、裁判官は裁判用語を被告人にもわかるようにやさしく言い換えて説明してくれたので、友達(韓国人・台湾人)にもありがたかったようだ。

さらに凶器の文化包丁を証拠として差し出す場面、被告の母親が証言に立つ場面、被告が涙ながらに夫への謝罪を述べる点など、この裁判は見所が満載だった。

そしてなんと裁判の途中で”あの男”が登場したのである。

そう、裁判傍聴歴8000回を誇る、大川興行所属のタレント「阿曽山大噴火」である。
例の長い金髪、髭面、そしてスカート姿で現れた阿曽山は、メモを取り出しながら傍聴。前半だけ聞いて退室した。

個人的にすごい得した気分だった。
そういえばこの日は「セレブ妻 香織被告」の裁判もある。それに来ていたのかもしれない。

こうして僕らの裁判傍聴は終わった。被告人も罪を認めていること、被害者も温情判決を望んでいることなどで、裁判は一回のみ。次回はもう判決だそうだ。


韓国人の友達も、台湾人の友達も「実におもしろかった」と言ってくれた。

そう言えば千原ジュニアさんなどもデートで裁判傍聴に行くようなことを行っていたな。

たしかに映画に見飽きたら、こんなデートもおもしろいかもしれない。

といっても、僕にはデートする相手はいないんだけどね。

とにかく裁判傍聴、おすすめです!!!